ことばとこたまてばこ
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2005年11月15日(火) 一周年を祝して 『天 -1-』

あそこの石像は幾万年前にいちどだけ、
空につらをむけたことがありました。


めめしくゆらぎながら、
おおしくそびえる椰子の下、
あの大海原にしづんでいる、
つめたい血しおをうつしだす、
きいろい鏡がひとつ、
石像のまなこのなかにうかんだとき、
つらつらりやつらつらりと、
くさつた供物に朽ち葉がふりそそぎました。


たくさんのしろとくろのはなびらが、
はつきりとくつきりとあざやかにあらわれた、
季節のゆきつく果てへとうずをまきながら。


またぞやの幾星霜をへた日のゆうぐれ、
石像のとうめいな呼吸をききつけた、
いつぴきのねこ、
毛皮はくろく四足のさきはしろかつた、
みぎ足のこゆびにはえる爪だけあかかつた、
ねこのぜんしんの血がそこにつどったよう。


カルカルカルカル、
石像のほおをひつかくねこ、
カルカルカルカル、
石像のくちびるをひつかくねこ、
カルカルカルカル、
ひつかきながらねこはないていた。


だれがわたしの髪をめでてくれるのでしよう、
とかんがえながらねこはかなしかつた、
わたしにくちづけをしてくれるのでしよう、
とかんがえながらねこはないていた。


石像はねこのしろい腹をみていた、
幾万年前にいちどだけみた雲とおなじだつた、
ああ見よ、
見ろ、
なんと、
まつしろで、
なやましい。


石像はいのつた、
もういちどだけからだのじゆうを、と。


刻のながれは石像のからだを、
無情にやさしく、
けずつてくだいて、
石ころへとかえた、
ねこもまたとうに
つちくれへとかえつた。


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