日常のかけら
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◇いい加減にしやがれ◇

「すっげぇ!風が音たててるって」
「はしゃぐな!」

ばちんと、新聞で殴られて、一瞬、ふくれっ面を見せても、気持ちはすぐに荒れ狂う窓の外へ向かっていく。
季節はずれの大嵐に、今日で一体何日足止めをくらっていると思ってやがる。

いつも通りの妖怪退治に、戦力として連れてきたこの山岳地帯。

この季節、こんなに人の出入りの少ない場所には来たくなかった。
アイツらがこの時とばかりに悟空にちょっかいをかけてくるからだ。
その上、人の仕事の邪魔しやがる。

「うわ、あの木、撓りすぎ。さんぞ、あれ、折れないかな?」

言われて窓の外を見やれば、若木が強風に押さえつけられるようにくの字に撓っているのが見えた。

「折れねぇよ」
「マジで?」
「ああ」

頷いてやれば、安心したように笑うから、頭を撫でてやった。

「――なあ…明日には止むかな?」
「あ?」
「だって…帰れないし、いくら折れないからって、あのままじゃ木が可哀想じゃん」

俺の法衣の袂を掴んで、眉根を寄せて今にも折れそうになって風に耐える若木を見つめている。

おい、お前らの大事な御子様が心配しているぞ。
いい加減に、しねぇと、御子様が泣くぞ。

そう口には出さずにアイツらに言ってやった。

ふん、ざまぁみろ。

(三蔵)

2014年10月13日(月)