日常のかけら
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◇ジャック・オ・ランタン◇

がりがり、ごりごり、ばきっ…朝からそんな音が寝所の居間から聞こえてきます。
一抱えもある程の西洋カボチャが、いくつか昨日、八戒さん達から届けられました。
それを悟空は三蔵様に隠すように厨にしまって、今朝から一生懸命底をくりぬき、カボチャの中身を一心に掘り出して。
表の皮に目や鼻、口をマジックで書いて、そこを刳り抜こうとそれは危なっかしい手つきで悪戦苦闘しています。
でも、力加減が上手く行かなくて、ぱっくり半分に割れたり、目と鼻が繋がったり、口が顎ごと外れたり。
カボチャの残骸が増えて行きます。

えぐり出した中身は、カボチャのスープやお菓子に使って、壊れたカボチャは夕餉の食材に厨房へ持っていって、皆さまのお腹に納めて貰うとして…。
でもね、いくら西洋の収穫祭だと言っても、食べ物をこんなに粗末にしては、収穫の神様もお怒りになると思います。

あ、ほら、また…。

「泣きそうな顔で大きく穴のあいてしまったカボチャを眺めても修復はできませんよ?その諦め悪さも、チャレンジ精神も尊敬しますが、悟空、いい加減にしてくださいね。」

そう言って注意したら、ようやく最後のカボチャでジャック・オ・ランタンが出来たと笑顔を向けられてしまいました。
誇らしげな輝くような悟空の笑顔はとてもステキで、大好きですが、食べ物を玩具にしてはいけないんです。

「では、後片付けと、この山のようなカボチャの残骸、ちゃんとお腹に納めて下さいね」

そう言ったら、悟空がイタズラを見つかった時のような顔をしました。

「当分、おかずもおやつもカボチャ…ですね」

片づけを手伝いながら、そう呟けば、悟空は一瞬、びっくりしてその後、うんざりした顔をしました。
後始末まできちんとして、初めて完了って言うんです。
覚えておいてくださいね。

(笙 玄)

2006年10月20日(金)