| 2012年06月13日(水) |
リーガル・ハイ 第9話 |
サッカーの審判も終わり方もあんまりだったので、
次にこの審判員見かけたら呪いの念とか送ってしまいそうです。
とにかく負けなくてヨカッタ。
日本のゴールが脅かされる時でないと川島の姿が見られないので、
「もっとえいじくんが見たいです!」とは簡単には願えませんが、
昨夜はわりといっぱい見れて嬉しかったですし。
さてさて、そんなモヤモヤを一気に吹き飛ばしてくれたコミー。
最後の凄まじい演説は、言葉の力、脚本の力、役者の力をひしひしと感じると共に、
なんとも耳に痛かったです。
おそらく自分も、ああいう立場にいたらあんなふうに「金じゃない」とか「誠意を示してくれれば」
とか甘ったるいイイ子(御しやすい棄民の老人)になってしまうだろうと思うと。
「もう年だから」「具合が悪いから」とか言って戦闘放棄するに違いないだろうと思うと。
「和解でいい。絆を再確認できたから」と言う老人たちに、
コ「黛くんよく覚えておきたまえ。これがこの国の『馴れ合い』という文化の根深さだ。
人間は長い年月飼いならされると、かくもダニのような生き物になるのだよ。
コケにされているのも気づかずに墓に入れるなんて、幸せな人生だ。」
コ「最初に申し上げたとおり、わたしは皆さんのような惨めな老人が大っきらいなもので。」
老「目上の人を敬うという気持ちはないの? あんたの倍は生きてんだ。」
コ「倍も生きていらっしゃるのにご自分のこともわかっていらっしゃらないようなので、
教えてさしあげているんです。皆さんは国に見捨てられた民、『棄民』なんです。
国の発展のためには年金をむさぼるだけの老人は無価値ですから、チリトリで端っこに集めて
羊羹を食わせて黙らせているんです。大企業に寄生する心優しいダニ、それが皆さんだ。」
コ「そして今、土を汚され、水を汚され、病に侵され、この土地にはもはや住めない可能性もあるけれど、
商品券ももらった、誠意も絆も感じられた、ありがたいことだ、本当にヨカッタヨカッタ。
これで土も水も蘇るんでしょう、病気も治るんでしょう、工場は汚染物質を垂れ流し続けるけど、
きっともう問題は起こらないでしょう。だって絆があるから!」
老「どうしてそんな酷いことが言える? 俺たちだって悔しくて仕方がないけど必死で気持ちを
押し殺して納得しようとしてるんじゃないか。」
コ「なぜ? なぜゴミクズ扱いされてるのがわかっているのに、納得しようとしてるんです?」
老「俺たちはもう年寄りなんだよ。」
コ「年寄りだから何なんですか」
老「具合が悪いのにみんな頑張ってきたんだ!」
コ「だからなんだってんだー!(絶叫)
だからいたわってほしいんですか? だからなぐさめてほしいんですか?
だから優しくされたらすぐに嬉しくなってしまうんですか? 先人たちに申し訳ないとは、
子々孫々に恥ずかしいとは思わないんですか?
誰にも責任を取らせず、見たくないものを見ず、みんな仲良しで暮らしてゆけば楽でしょう。
しかしもし、誇りある生き方を取り戻したいなら、見たくない現実を見なくてはならない。
深い傷を負う覚悟で前に進まなくてはならない。戦うということはそういうことだ。
グチなら墓場で言えばいい!
金がすべてではない? 金なんですよ。あなた方が相手に一矢報い、意気地を見せつける方法は。
奪われたものと、踏みにじられた尊厳にふさわしい対価を勝ち取ることだけなんだ。
それ以外にないんだ!」
コ「敗戦のどん底から この国の再繁栄を築き上げたあなた方なら、その魂をきっとどこかに残してる!
・・・はずだと期待した私が愚かでした。
いいですか、二度と老後の暇つぶしに私を巻き込まないでいただきたい。
心優しいダニ同士、お互い傷を舐めあいながら穏やかに健やかにどーぞくたばっていってください。
それではみなさん、さようなら。」
老「先生よぉ、あんたなら幾ら取れるというんだ?」
コ「それを決めるのはあなた方だ。好きな金額を言えばいい。わたしが取ってごらんにいれよう。」
老「負けたらあんた責任取れるのか?」
コ「責任取るわけないでしょう!」(キッパリ)
とても全部は書き起こせないので、たぶんこれでも半分にもならないかも。
真実を的確に語る言葉には、揚げ足取りなんてまったく通用しませんな。
その真実をきっちり見据えることがあまりに大事すぎて、その真実があまりに重すぎて、
「ダニとかくたばれとか、そんな言い方は失礼じゃありませんか」なんて抗議は薄っぺら過ぎる。
しかしこれだけ叱咤激励、鼓舞、扇動、やるだけやっておいて、
「責任とるわけないでしょう!」が、さすがコミー。
この濃くて長い演説を一分の隙もなく完成させた堺雅人氏は本当に素晴らしかったが、
脚本の古沢良太氏はもっと凄い。でも、コミーの口を借りずにここまで言わせられただろうか、
これほどの説得力が生まれただろうか、と思うと、この両者の組み合わせの妙としか。
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