今日のおたけび または つぶやき

2006年06月01日(木)  『メタルマクベス』


昨日、青山劇場で劇団☆新感線の『メタルマクベス』を観てきました。


いつもながら凄かったよー、新感線。

内野聖陽氏のマクベス(役名はランダムスター)と松たか子嬢のマクベス夫人、

マクベスに殺される王が上條恒彦氏で、その王の息子が森山未來くん。

この他に、もちろんおなじみの新感線メンバーが濃く激しく脇を固める。



普通に『マクベス』を演じたとしても、素晴らしい配役でしょ。

上條恒彦氏なんてやっぱりものすごく声でかいしガタイもいいから王様っぽいし。


内野氏もほどよく色っぽくて「鋼鉄(はがね)の将軍」と言われるにふさわしい雰囲気。

松たか子嬢の強気だったり可愛らしかったりする奥方っぷりがまた素晴らしいし、

森山未來くんの若々しい王子っぷりも素敵。



そして何が凄いって、これが全部ヘヴィメタな世界の中でお話が展開していく。

ただの「マクベス」ではないのです。



新感線は基本的に劇中の歌や音楽がヘヴィメタなのだけど、

今回はもう歌だけでなく、「世界」そのものが徹底的にヘヴィメタ。


だって、一応お話は「マクベス」だが、、

舞台は西暦2206年、ESP王国のレスポール王(上條)を

鋼の将軍ランダムスター(内野)が殺し、

ランダムスターの親友がエクスプローラー(橋本じゅん氏)で・・・と、

ぜーんぶギターの名前になってるし、当然、城とか衣装も激しくヘヴィメタ。



その話と同時進行で描かれるのが、

1980年代に活躍したヘヴィメタバンド「メタルマクベス」の人間関係。

ヴォーカル・マクベス(内野)、ギター・バンクォー(橋本)、

所属事務所の社長(上條)、バンドの敏腕マネージャー・ローズ(松)で、

彼らの葛藤とバンドの崩壊が、未来の彼らの運命とリンクしていくのです。



1980年代と2206年が、同じ役者で、でももちろん違う役で、

だけどどんどん融合しながら、でも完全に演じ分けつつお話が進んでゆくの。



もう、凄すぎて言葉が出ないくらいですよ。



ステージ奥にしっかり生バンドが常駐していて、その生演奏に乗って、

内野氏やお松嬢はじめ、全員が首もげんじゃね?ってくらい

ヘッドバンギングしながらシャウトしまくる。



内野氏とお松嬢のランダムスター夫妻がものすっごく濃くてね。

ふたりっきりの時の突き抜けたラブラブなおバカップルぶりが本当に滑稽で、

実はとても深い夫婦愛を感じさせる。


王暗殺をたきつけた悪妻というより、

ただ単に夫がもっと大きくなってくれることを願っただけのちょっと過激な妻と

妻を愛するあまりその期待に応えてしまった夫。



ふたりとも自分たちが「とても小さい人間」だということには気づいていて、

そんな小さい人間が、はずみで王暗殺なんていう「大きなこと」をやってしまったがために

あとは破滅に向かっていくしかないというのはわかっている。



で、お互いに、相手を追い込んでしまったのは自分だ、と申し訳なく思いながら、

とことんまで一緒に堕ちて行く・・・という、

実はものすごーく深い夫婦愛のお話なのではないか、という印象を受けましたよ。



お松嬢が本当に素晴らしくてね。



この人のセリフも歌も、聞こえづらい言葉がひとつたりとも無いの。

せわしなく動きながら早口で叫んだり、

大音響のバンドをバックに歌ったりのときはもちろん、

ささやいているようなセリフですら、本当に一言一句すべてがちゃんと伝わってくる。


「いいんですか?この大女優にこんなことやらせて」みたいなコミカルな動きもいっぱい。

物凄い役者さんだったのですね、松たか子嬢。


兄上の市川染五郎氏も、新感線で初めてナマで見て、

なんて凄い人だー、と思ったのでしたわ。恐るべし高麗屋。



あとね、出番はさほど多くはないのだが、

おいしいトコをがっつり持って行くのが森山未來くん。

実は一番楽しみにしておりましたのよ、ナマ森山未來くんを。



レスポール王の息子だから、当然王子なのです。

王子にふさわしい素敵なブロンドの髪に、すばらしくしなやかな細身の身体。

なんたってダンサーだから、ダンスと殺陣が美しいのはもちろん、

身のこなしもいちいち美しい。


父であるレスポール王の復讐に燃える戦闘モードの王子は、

それはそれはカッコよかったのです。



しかし一方、

1980年代の彼は、「メタルマクベス」が所属する事務所の社長の息子でして、

「元 きよし」という名前の演歌歌手。

なんかもう、どっかの水槽の人が着てたみたいなキラキラな衣装着ちゃってさ、

ほんと演歌ってこういうイメージだ〜 と、涙出るほど笑える素晴らしさ。


父である社長のきまぐれにより、「メタルマクベス」とコラボさせられ、

「メタル演歌」なるジャンルで華々しくデビューさせられることとなるのです。



すげーよ。

ヘヴィメタバンドをバックに演歌を歌う未來くんですよ。歌もお上手。

途中、お得意のタップまで披露するし。

メタルと演歌の融合を実現させた第一人者として、彼の名は後世に残ることでしょう。

っつーか、ヘヴィメタってまんま演歌なんだな、と。



森山未來くんは、今後もがっつり注目させていただきます。

これからもどんどん素敵なお芝居してくれそうな役者さんですね。



本当に面白かったー。

パンフがこれまた昔懐かしいレコードのLP版サイズで、

通常のパンフの内容の他に、ギターの種類から有名なバンドの解説から、

「ヘヴィメタの歴史」みたいな資料満載だわ、

実際に舞台上で演奏していた「メタルマクベスバンド」のDVDはついているわで、

読み応え見ごたえありすぎでまだ全然読み終わってません。



なんで今更ここまでヘヴィメタの教育されなくちゃいけないんだ、と思いつつも、

こんな舞台を作り上げたそのエネルギーに、ただただ敬服するのでした。


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