せらび
c'est la vie
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みぃ


2005年08月19日(金) 獅子座の土星が早くも安定志向をもたらしている模様

先日の日記で、水星順行に伴って飛行機が落ちたりなど様々な事故が多発するという話を一寸書いたが、どうやら飛ぶ物に関してはキプロスの一件に留まらず、沢山落ち続けていた模様である。

べネスエラでもほぼ全滅と思われる旅客機事故が起きたし、アフガニスタンではスペイン軍のヘリコプターが二機も落ちたそうである。そしてグアム辺りで前のめりに着陸したノースウェスト機だが、もうこれで水星関連としては出尽くしたろうと思いたい。

日本の旅客機事故に関しては、余りに頻発しているので、今更もう数にも含めないが。



そういう訳で、世界の彼方此方で皆さんが大小様々な事件や事故に見舞われているというのに本当に恐縮なのだが、ワタシはまるでここ数年来の「悪霊」を取り払ったかのように、極めてすっきりと晴れ晴れしい日々を送っている。

ワタシの日記をご覧の皆さんには既にお馴染みの、例の「悪霊」については、どうやら今年四十になったお兄さんの初の結婚式絡みで暫く実家へ帰省していたらしく、戻ってからその式の次第やら新しい親族の様子やらについてを詳細に記した、長いメールを送って来た。

彼も自分の言った言葉の通り、努力してワタシの良い友人になろうと、彼なりに頻繁にコミュニケーションを取ろうとしている様子である。

しかしその頃には、既にワタシは別の男と宜しくしていたりするのだが。

それに四十まで片付かないでも済んでいた兄貴なんかが居たら、弟はそれを見本にして未だいけると思ってしまうから、こいつの元々の性格に加えて尚更厄介な事である。



そうそう、その先日初デートだった相手だが、実はこの間目出度く誕生日を迎えた一寸年下のオトコノコである。

別れ際に名刺をくれたのだが、いきなりオフィスへ電話を入れるのも気が引けたのでメールを送っておいたら、それからやり取りが一寸続いて、メールじゃ難だから電話でという話になって、そのうち食事でもという風に順調に展開したのである。

彼はそういう訳でかなり年下だが、しかし経営学や経済学などで知られた近所の某大学を出た後、銀行さんで数年勤めている所為もあってか、随分落ち着いていて、責任感もある、しっかりしたオトコノコであった。

そのうち経営学の修士号を取りに学生に戻りたいと言っていたが、彼の仕事の話を色々聞いているうち、それは正に妥当な進路であろうという事が理解出来た。



上町のあるラテンなレストランで食事をした後、付近を一寸お散歩して、それから彼のアパートに行った。


話の展開が一寸早いが、その辺りはまあ皆大人だからねという事で。


実は彼はワタシの住む区域の隣の区域に、アパートを所有している。ワタシのように「借りている」のでは無くて、「持っている」のである。ローンを支払いながらそこに住んでいるのである。

実家を出て以来これまで「借家」住まいばかりのワタシは、おおそうか、そういえば真っ当な職に就いていると不動産購入も出来るのだ、と半ば当たり前の事象をやってのけているこの若いビジネスマンに、妙に感心したりした。

もっと「普通」の人々と交流しなければ、と改めて思う。


住み始めてまだ半年程のその部屋は、彼が仕事の合間に友人の助けを借りながら一壁一壁ペンキを塗り込めたそうである。一先ず最低限を誂えたと見られる調度品も、新しい物が多いばかりでなく、まだ包装を取っていない物もあったりして、明らかにこの住人は余り家に居ないという事が伺えた。

彼は、週に六十時間を超える事は無い、と言っていたが、それでも朝から晩まで仕事に追われているのには違いない。


下世話な話だが、不動産以外に他に投資はやっているのかと聞いてみたところ、特に自社商品には手を出さず、顧客に勧めるのみとの事であった。獅子座の癖に、意外と堅実。

それより寧ろ、給料の中から月に少しずつ、三人居る甥っ子たちの大学進学の足しになるように積み立てをしている、という話が印象に残った。

それに引き換え、ワタシと来たら。

一人っ子なのを良い事に、甥だの姪だのの心配が要らないどころか、自分ひとりの世話だって覚束ないような暮らしをしているというのに、この若者はアパートを購入しそのローンを支払いつつ、甥っ子たちの将来まで考えているのである。



嗚呼そうか、このラテンな人々には、「家族」が全てなのであった。

彼の両親は元々南米のある国の出身だが、そこへ帰ればいとこのいとこの更にいとこ、というような、ワタシには殆ど「ねずみ講」かと思われるような仕組みでもって、親戚付き合いが行われているそうである。

だから、帰郷の折にはそれぞれの「親戚」の挨拶回りを兼ねたホームパーティーに参加するだけで、一月も掛かるだろうという事である。

尤も彼自身はこの国で生まれ育っているので、例えばワタシが家族とは余り親しく無い、ここ何年かは電話もしていない、と言うのにもそれなりに理解を示す。

ただ、どうやらそろそろ「結婚」や「家庭を持つ」という事を考えているお年頃のようで、例えば日本ではカップルは不仲になったら「離婚」を直ぐにするのか、それともそのまま留まる努力をするのか、というような質問をして来たので、若い世代に関してはまるでこの国の様子に随分近くなっているけれども、通常は「離婚」といったら社会的なスティグマを与えられているので、好ましくないと思う人も多いし、世間体を気にする人も多いだろうし、また特に子供がいれば尚更控えたいと思う人も沢山いるだろう、と一応答えておいた。



きっと彼は、良いお父さんになるのだろう、とワタシは勝手に想像する。

ワタシからするとまるで子供のようだけれど、しかし彼は少なくとも年齢相応には安定している。

これまで余りにも年齢不相応に不安定な「悪霊」と一緒に居た所為で、ワタシはこの「安定」というものに、新鮮な魅力を感じているようである。



そして彼は、昼食時か仕事を終えた夕刻に、毎日電話をくれる。

何しろ長い間そういう事をしない男に縛られていたお陰で、普通の男は好きな女に毎日電話するとか、時間を空けて一寸でも会おうとするとか、そういう極当たり前の仕業に一々関心するワタシがいる。

そうか、こいつはワタシの事が好きなのね?

そしてそれをワタシにちゃんと分からせる為にも、そうやってる訳だ。



思えば世の中というものは、実は相当シンプルに出来ている。

難しくしようとする人間が居るから、拗れるのである。

それはワタシ自身だったかも知れないし、または相手の方だったかも知れないが。


ビバ・シンプルライフ。


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