原因不明の痛みがあって考えられる最悪のシナリオは余命何年というものだった。 病院に向かうタクシーの中でその話になった。
「もうだめならだめでいいのよ。人間には潮時というものがあるのよ。」と言われた時俺は何も言えなかった。 とても悲しくなって何も言えなかった。 と同時に違う感情もあった。
その人がもういつ死んでもいいと思っているという言葉はとても悲しかった。 そんなふうに思わないで毎日を生き生きと過ごしてほしいと。 これは俺の勝手な希望。 生きている方が辛い場合もあるからね。
その人に比べれば俺は潮時というほどは生きてはいないような気がする。 それでももう12分に生きた気がする。 だからそういう意味ではその人の言葉にうなずいてしまった。 こんなふうに思っているのは俺だけじゃないんだなぁって。
でも同時に思った。 もし本当に余命何年とか言われたらきっととてもショックを受けるだろうなあと。 そしてやっぱり「生きたい」と思うんじゃないかなと。 それは人間として当たり前の感情なんだよね? 俺も「もしかしたら死ぬかも。」と思った時「いつ死んでもいい。」と常に思っているはずの俺が電車に飛び込もうとした俺が「生きたい。明日もこの窓から空がみたい。明日も明後日も見たい。」と願った。 その時は「何これ?俺ってうそつきじゃん。」ってそういう自分をあさましいとか恥ずかしいと思って自分で自分を笑ってやりたくなったけどそれはたぶん違うんだと今は思うんだ。
人生には終わりがあるのはどうしようもない真実。 普段は目をそむけているけどこういうことがあるといやがおうにも考えさせられてしまう。 月並みだけど後悔しないよう毎日をできる範囲で大切に積み重ねていくしかないよね。
最悪のシナリオは脱したみたい。 もう少し詳しい検査をしないとわからないんだけどね。 当分病院への付き添いは続きそう。 頑張らなくちゃ・・・
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