A君がネクタイを選んでいるところに割り込んできた50過ぎのおじさんはよくみるとこのお店のネクタイをしていました。 グレーのスーツにピンクのネクタイです。
お店の人はすかさずA君が手にもっていたのと似たようなネクタイを下から出してきました。 それも素敵なネクタイでした。
A君がお店の人はさすがだなあと思ったのは別にピンク系のネクタイを2本下の引き出しからだしてきたところでした。 おじさんは3つのネクタイを前にして悩んでいます。 お店の人はにこやかに「お似合いですよ。」とおじさんが一番気に入ってそうなネクタイを褒めていました。
A君は取り替えるために住所と名前を書かされてそのあとかなり待たされました。 落ち着かないので早く店から逃げ出したいと思っているA君にとってはとても長い時間でした。
やっと現れたお店の人はちょっと申し訳なさそうに「こういうスタンプを押させてもらいました。」といいながらA君に一枚の紙を渡しました。 その紙の下の方に「もう今後お取替えは御容赦願います。」と大きく赤字でスタンプが押されていました。 それを見た時A君はその場で自分の顔が赤くなるのがわかりました。 お店の出口までネクタイを運んできてくれた店員さんと(A君は受け取ろうとしたのですがお運びしますと言って荷物を渡してくれないのです)別れてドアから出た時A君ははじめて自分がとても緊張していたことに気付きました。
取り替えてもらったネクタイは今までのA君のネクタイと違ってしわになりにくく締めた感じもどっしりとしています。 ただ普通のネクタイの何倍ものお金を払ってまで買う価値があるのかと聞かれるとA君の答えはノーです。
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