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『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』
ベストセラーになっていることは知っていた。会計学にはとんと興味はないが、それでも題名にひかれて、まあ、ちょっと読んでみようか、と。
さおだけ屋、ベッドタウンの高級フランス料理店、在庫いっぱいの自然食品屋、完売したのに怒られる社員、安い手であがる雀荘の兄ちゃん、割り勘の支払い引き受けさん、など、割合身近で「ああ、そういうことってあるなあ」と思うような話題を会計学にひっぱっていって、会計的な見地から、各事例の妥当性を説く仕立てである。
さおだけ屋は以前から噂に聞いていた通りの話で、ああ、やっぱりね、だった。この手のものの常として、後に行くほど多少強引になる気味は否めないが、ベッドタウンの高級店の話は、ふ〜ん、そういうものなのか、とそれなりに意外だったけれど、連結決算の事例はもっと普通のものでありそうな気がした。この著者のうまいところは、普通の店の例でひかず、珍しいものでひいてくることだ。
数字にはとんと弱い私だが、おかげさまで、会計学が単なる帳簿つけではなく、金儲けをうまくするための分析手法の一つなんだ、ということが理解できた。だが、概念として理解できることと、家計のキャッシュ・フローなんぞを把握することとは大違いで、相変わらず小遣い帳すらおぼつなかいまんまである。
余計なお世話ではあるが、著者はまだ公認会計士としてのキャリアはかなり浅いはず。だからこそ書けたんだろうな、という印象も得た。ほら、よく、外国で1、2年暮らした人がすぐ体験記を書きたくなる、というあの感じである。どこをとっても安直な参考書のキャッチみたいで、どこの世界にもいる器用な人がチャッチャッとまとめましたぜ、の一冊だと見た。そういうタイプの人に重厚な一冊の期待はしないが、キャリアを少し積んだら、粉飾決算の実態なんかも安直にまとめてもらいたい。
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