『性と文化の源氏物語』 河添房江 「源氏物語」の研究書?にあれこれいうなど、神をも恐れぬ不遜な行為だと自分でも思うけれども、まあ、神といっても、リングのヴォータンみたいなのもいるから勘弁してもらうことにする。 著者はそろそろ中堅を卒業し、大家への道を歩み始めた源氏学者である。ポスト・フェミニズムとしてのジェンダー批評を初めとする最新の批評理論を用いて『源氏物語』を捌いていく。そのような包丁で切りとった形は美しくもあり、珍しくもある。 でも、切り紙細工ってお土産にもらっても使い場がないんだよね。栞にするか、額に入れるか、はて・・・。 『蜻蛉日記』から『源氏物語』へと進んでいく部分の分析がもっとも面白うござんした(第1章「王朝女性作家誕生の起源」)。でも、著者が読ませたかったのはそこではなくて、第2章「性・歴史・文化」、第3章「身体へのまなざし」なのだろう。面白いことは面白いが、それと同時に、公式をうまく変形して応用問題を解く小器用さを感じないではいられない。 そういう切り方の必要性、あるいは、それによってのみ明らかにされるものの提示という点で不満が残る。ただし、著者が本書をゴールとするはずもなかろうから、この先に期待をつなぎたい。 ★ (筑摩書房)
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