図書館のカウンターの司書さんは私が学生の頃からいる人である。 その頃は若かったんだと思う。 赤鬼のような人だった。 スモック風の事務服と腕カバーが垢抜けなかった。 それでいて愛想がよく、かえって気持ち悪く思えた。 赤鬼さん、いかつさこそ若いときのままだけれど、 50代になって渋みがそれを希釈して男ぶりが上がった。 事務服はいつの間にかおしゃれなジャケットになった。 袖のところが10センチ以上も折り返せるような仕掛けになっている。 図書館業務ってずうっとカウンター一筋なんだろうか? 駒を進めると人目につかない裏に回るというわけではないのかしら? 今日はいろいろ厄介なものを出してもらって、何度も手間をかけた。 若いときだと「もたついてるわね!」と怒りそうな場面でも、 年とともに丸くなった(心身ともに)といわれる私は、 ひたすら低姿勢に「恐れ入ります」「お手数かけます」の大安売り。 一日何度も書庫との間の往復は大変だろうと思う。 私は書庫に入る資格はもらっているけれど、 ほこりっぽいし面倒だから取ってきてもらうほうがいい。 横着ものだ。 せめて「○○さん、お世話になります」くらいはいいたいのに、 赤鬼さんの名前は知らない。 今更尋ねるわけにもいかず、ちょっとさみしい。 顔だけ知っている20数年来の知己(?) 今は図書館の本の検索もOPACなどで家にいながら簡単に出来る。 私には驚くべき進歩。 PCの画面を見ながら、請求番号のメモをとっていたら、 息子が来て「ハンドヘルドの簡便な印刷機があるといいのにな」という。 人の欲望には限りがない。 科学技術なんて欲望の申し子だ。
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