Emiの日記
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哂う伊右衛門→→→2004年02月11日(水)
十四日からアメリカ旅行なので、今のうちにみとけ、とばかりに
みてきました。

京極さん、すみません。原作読んでないんです。
だから原作との比較はまったくできないんですが、
なんともいい難いけれども、不気味な話であるはずなのに、
後味の悪さはなく、なんだか
夢見心地のような気分で、スタッフロールへと
流れていったような感じです。

半分顔が崩れているとはいえ、美しく強いお岩(小雪)。
お岩が強いから、ひとは彼女を怖がる。だから哂う。
そのとおりだろう。群衆の中をりんとして歩いてゆく
彼女には、ひとの同情をさそうような雰囲気は微塵もない。
けれども、お岩も、ひとりの女性。
「伊右衛門どの、恨めしや」はのろいの言葉ではなく、
伊右衛門への愛の言葉になっているおかげで、
純粋に狂おしいほど伊右衛門を愛しているのが伝わってくる。
しかも、お岩を演じている小雪が美しい。半狂乱になって
走り出てゆくシーンでは髪をふりみだしているのに、美しい。
お岩の内面からにじみでる。ひととしての美しさ、だろうか。

登場シーンから最後のほうまでずっと哂わない伊右衛門(唐沢寿明)。
従来の「四谷怪談」と違って、そこまでしなくてもいんじゃないか
というくらいに内省的な感じ。
伊藤(椎名吉平)にだまされて、お梅(岩の血のつながらない妹。松尾玲奈)と結婚したあとの、伊藤とお梅の間の赤ん坊を自分の子だとして
愛しむ(といっても、これまたにこりともしないのだけれど)ところが
なんともいえない。
坊が死んだときの、悲しみに赤くなった目は、痛い。
そしてなんといっても、ずっと無表情の中に微妙な
表情をみせつつも哂わなかった彼が、
「岩をもろうた」といって哂う、不気味さ。
一瞬ぞっとするのだけれども、嫌悪感はわかない。
不思議な男だなあ。


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