Mako Hakkinenn's Voice
by Mako Hakkinenn



 藤山直美 〜49才のヒロイン〜
2006年10月12日(木)

 毎週月曜〜金曜の朝8時15分〜8時30分に放送している「NHK連続テレビ小説」(通称“朝ドラ”)は、1961年の第一作「娘と私」からスタートし、先月末に最終回を迎えた「純情きらり」まで実に74作の連続ドラマを放送しているシリーズである。このシリーズはそのほとんどが女性を主人公としており、「逆境に負けずに逞しく生きていく女性」を描くドラマが主流だ。新人女優の登竜門としても知られ、ヒロインを演じるのは無名の女優が多い。大半の女優は多かれ少なかれ、子役や劇団、映画やドラマなどを通じて演技の経験を持っており、全くの演技初心者としてオーディションを勝ち抜いたのは数少ないが、過去に主演した女優の多くは、程度の差はあれ知名度が上がり活躍の場を広げている。

 ところが、今月2日から始まったNHK連続テレビ小説の新番組「芋たこなんきん」は、何とベテラン女優の藤山直美(49)がヒロインを務めるという異色の作品である。この作品は大阪・天満の商店街を舞台とした、作家田辺聖子の自伝的ドラマであるが、その田辺聖子をモデルとした主人公花岡町子役を、藤山直美が演じているのだ。史上最年長の朝ドラヒロインである。
 藤山直美は松竹新喜劇で活躍した喜劇俳優・藤山寛美の娘で、舞台を中心に活躍する女優であるが、1992年に放送された連続テレビ小説「おんなは度胸」での名脇役ぶりで全国区になり、ドラマ新銀河で放送された「この指止まれ!!」シリーズでも主演。また2000年公開の映画「顔」では主人公を演じ、その演技が評価され毎日映画コンクールをはじめとする映画賞を数多く受賞した。

 前述のように歴代NHK連続テレビ小説のほとんどのヒロインはこれまで若手新人女優が演じ、その若々しい演技が魅力の1つであったが、やはり大ベテラン藤山直美の演技はさすがに上手い!何が上手いかと言えば、何と言ってもその演技とは思えない、非常に自然で日常生活で普通に目にすることのできるような、細かな仕草や言い回しである。それはとても活き活きとしており、テレビドラマではなく、現実の光景を映しているかのように、非常にリアルなのだ。このような演技ができるのも、何万回と舞台やドラマ、映画などで場数を踏んできた賜だろう。これまでの若手新人女優では絶対にできないものだ。いや、若手女優でなくても、そこそこキャリアを重ねている人気女優はおろか、ベテランの域に達している女優でも、なかなか藤山直美ほどの演技はできるものではないだろう。それほど藤山直美の演技は秀逸であり、見るものを惹きつける魅力がある。藤山直美には実に44年という女優としてのキャリアもあるが、彼女自身が持つ天性の才能が、あの素晴らしい演技を生み出しているに違いない。

 藤山直美が演じる素朴で大らかな大阪のおばちゃん役、必見である。



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