Mako Hakkinenn's Voice
by Mako Hakkinenn



 シューマッハ引退でF1はどう変わる?
2006年09月13日(水)

 アイルトン・セナの亡き後のF1を牽引し続け、ほとんどの歴代記録を塗り替えて名実ともに史上最強となったミハエル・シューマッハの引退は、今後のF1に大きな影響を及ぼすと言われている。では実際、シューマッハが引退した後のF1は、どう変わっていくのだろうか。

 まずシューマッハの母国であるドイツ国内においては、ドイツグランプリの興行収入や視聴率が大幅に減少することが予想される。ミハエル・シューマッハ以外にも弟のラルフ・シューマッハ(トヨタ)やニック・ハイドフェルド(BMWザウバー)、それに期待の新人ニコ・ロズベルグ(ウィリアムズ・コスワース)といったドイツ人ドライバーはいるが、彼らはまだチャンピオン経験がなく、さらに今後彼らが優勝する可能性は高いとは言えず、ドイツ国民のF1離れは避けられないだろう。さらにF1は今後“1国1グランプリ開催”が原則となるため、これまでドイツ国内で行われてきたニュルブルクリンクとホッケンハイムでの2グランプリも交互開催となり、ドイツにもたらされる興行収入は激減するだろう。ニコ・ロズベルグの成長に期待したいところだ。

 ドイツ以外でも、これまで熱狂的にミハエル・シューマッハを追い続けてきたいわゆる“シューマッハ至上主義者”たちがF1から離れていくのは間違いない。これは1994年のシーズン序盤に思いがけず英雄アイルトン・セナを失った多くのF1ファンがF1から離れていったのと同じだ。未だに「セナのいた頃は観ていた」という“元F1ファン”の言葉をよく耳にする。

 これに関連して、熱狂的なフェラーリファン、いわゆるティフォシの中でもF1から離れていく者が多くいるだろう。ティフォシの中には「昔からフェラーリが好き」という人もいれば、「シューマッハがいるからフェラーリを応援する」というファンも少なくなく、シューマッハとフェラーリのタッグにより、全世界のF1ファンの半数以上がフェラーリファンなのである。
 その全世界で過半数以上を占めるフェラーリファンの多くがF1から離れていくとなると、F1全体の興行収入が激変することは間違いない。現時点ではまだフェラーリは最高水準の戦闘力を維持しており、シューマッハが引退した後もしばらくはチャンピオンシップをリードできるだろうが、まだチャンピオン経験のないキミ・ライコネンとフェリペ・マッサではミハエル・シューマッハほどのカリスマ性はないため、おそらく来シーズン以降のF1全体の興行収入は90年代前半までの水準に戻るだろう。

 しかし、ドイツ国内における興行収入やF1全体の興行収入などはあくまでも主催者側の問題であり、我々純粋にモータースポーツとチャンピオンシップを楽しむF1ファンにとっては、主催者が儲かろうが儲かるまいがどうでもいいことなのである。

 では、F1ファンから見たシューマッハ引退後のF1は、どう変わるのだろうか。

 シューマッハファンやフェラーリファンにとってはあまりにも寂しいシーズンになるだろうし、シューマッハファンでなくとも、来シーズンの序盤は、グリッド上にミハエル・シューマッハの姿がないことに違和感を感じるだろう。しかし、シューマッハがシーズン序盤に負傷してチャンピオンシップから長期離脱していた99年シーズンがそうであったように、ミハエル・シューマッハがいないという違和感はシーズンが進むに連れて次第に薄れ、F1ファンは目の前で起こっているタイトル争いに釘付けになるものだ。従ってシューマッハファン以外のファンにとっては、シューマッハが引退しても大した影響はないのだ。

 では、タイトル争いはどうだろうか。

 これは至って簡単である。これまでミハエル・シューマッハはその圧倒的なカリスマ性によって、フェラーリチームやF1主催者であるFIAから恩恵を受け、チャンピオンシップは不当に操作され、さらにシューマッハ自身のアンフェアなプレイだけが容認され続けてきたが、シューマッハの引退によって、F1チャンピオンシップは、少しは公正でまともなものになるだろう。
 また、それらよってミハエル・シューマッハだけが特化した存在となりパワーバランスが偏っていたが、シューマッハが引退することで再びパワーバランスは均等化され、来シーズンは誰がチャンピオンになるか分からない混沌としたタイトル争いになるだろう。

 昨年シューマッハに打ち勝ち史上最年少チャンピオンとなったフェルナンド・アロンソ(ルノー)がシューマッハに引導を渡し、いよいよ世代交代が完了した来シーズンは、まったく予想も付かないシーズンが待ち受けているのである。毎戦のグランプリも、これまではどこもシューマッハが大本命だったが、来シーズンからは誰が勝つのか最後まで分からないグランプリが毎回楽しめるのだ。

 F1ファンとして、これほど楽しみなシーズンはない。



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