Mako Hakkinenn's Voice
by Mako Hakkinenn



 スーパーアグリを阻むコンコルド協定
2005年12月11日(日)

 今月初めに発表されたFIAの来シーズンのF1エントリーリストに、「スーパーアグリ・フォーミュラ1」の名前は記載されていませんでした。これはスーパーアグリ側のエントリー申請に手違いがあったためで、期日以内に4800万アメリカドル(約57億円)のエントリーフィーの支払いができなかったからでした。しかしスーパーアグリ側はその理由について、「マネー・ロンダリングの誤解により、資金振り込みに遅延が生じてしまった」と説明しているため、すでに約57億円のエントリーフィーは支払われているということになります。

 ところが、現在のFIAの規定では、エントリー締切日以内にエントリーフィーが支払われなかった場合、その後再申請することは認められているものの、F1の全チームの同意が得られなければエントリーできないことになっています。
 単純に考えれば、スーパーアグリ・フォーミュラ1は、すでにエントリーフィーを支払っているため、あとは全チームが同意してくれれば、晴れて来シーズンの開幕戦でグリッドに並ぶことができるわけですが、この「全チームの同意」というのが、実は単純なものではないようです。

 そして、スーパーアグリが無事エントリーするために必要な「全チームの同意」を阻んでいるのが、「コンコルド協定」と呼ばれるものです。コンコルド協定とは、F1に参加する全てのチームとFIAがかわした、F1運営に関する協定書です。その内容は未公表のためさだかではありませんが、全チームの合意を必要とする反面、署名したチームはその内容に従わなくてはなりません。現在のコンコルド協定の有効期限は2007年末までとなっています。コンコルド協定の名前は、第一回の署名作業がFIA本部のあるパリのコンコルド広場で行われたことに由来しています。

 で、このコンコルド協定の中には、上位10チームだけがF1専用機での輸送やテレビ放映権料の分配などで優遇されるという項目があり、スーパーアグリが参戦すればチーム数が11チームになるため、スーパーアグリに食われて上位10チームから漏れてしまう恐れがある下位チームが、スーパーアグリの参戦を阻んでいると言われています。そしてその同意を拒否しているのは、ジョーダンを買収したミッドランドであると言われており、商業上の理由から11番目のチームを実現させたいバーニー・エクレストン氏がミッドランドへの説得を続けているといいますが、功を奏していないようです。

 コンコルド協定は、全チームの合意によってかわされた協定であるとはいえ、矛盾が多いですね。今シーズンは参戦チームが10チームしかいなかったので、最下位に終わったミナルディも上位10チームに入り、放送権料の分配などで優遇され、F1専用機での輸送ができました。しかし、現在のコンコルド協定がかわされた1997年時点でチーム数は12チーム。つまり下位2チームが上位10チームから漏れることになり、その2チームは放送権料の支給も上位10チームより少なく、また自前で輸送機をチャーターしてF1マシンを各サーキットに輸送しなくてはならないため、それだけで莫大な経費を必要とします。

 現在のF1では、より多くの資金を持つチームが良いエンジンと良いドライバーと契約することができ、マシンの開発にもお金をかけることができます。従って多くの資金を持つチームとそうでないチームとの実力差が著しく開いてしまっているのが現状です。
 しかし、コンコルド協定では、その多くの資金を持つチームに多くのお金が行き、資金がなくて上位に上がることができないチームはまったく優遇されていない仕組みになっています。このコンコルド協定が、F1へのプライベーターチームの新規参入を阻んでいるわけで、上位チームと下位チームの差は開く一方なのです。

 現在のコンコルド協定では、最低でも10チーム以上の参加が原則とされていますが、仮にスーパーアグリの来シーズンのエントリーが認められなかったとしたら、F1は来シーズンも今シーズン同様、最低ラインの10チーム20台での争いと言うことになります。一方、現在F1では12チーム24台までの枠が認められているわけですから、2チーム4台分の枠が空いていることになります。
 もったいない話ですが、現在のコンコルド協定がある以上、枠が12チーム24台すべて埋まるのは、まだだいぶ先の話になりそうですね。

 まずはスーパーアグリの参戦が認められ、来シーズンは久しぶりに12台による争いが見られることを期待しましょう。



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