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■ 佐藤琢磨はどこへ
2005年09月26日(月)
9月21日付のVoiceでもお伝えしましたが、F1では来季ジェンソン・バトンがBAR・ホンダに残留することが決まり、すでにフェラーリからルーベンス・バリチェロがBAR・ホンダに移籍することが決まっているため、現BARドライバーの佐藤琢磨は、事実上来季のBARでのレギュラーシートを失うことになりました。 琢磨はこれを受け、彼のマネージャーであるアンドリュー・ギルバート・スコットとともに、来季のレギュラーシート獲得に向けて動き出したようです。今回はそれらをまとめてみました。
■ニック・フライ(BAR・ホンダ/チーム代表) 「佐藤琢磨は、チームにとって非常に貴重な存在であり、そして皆に好かれているチームのメンバーなんだ。これまでの4年間、テストドライバーとして、3rdドライバーとして、そしてレギュラードライバーとしてBAR・ホンダには非常に貢献してくれた。佐藤琢磨との契約は今期末で終了してしまうが、BARは彼のマネージメントと将来の可能性について議論をしている最中なんだ。」
■佐藤琢磨 「明らかに失望をしているよ。ホンダと一緒に仕事が出来なくなるのだからね。だけども、いずれの日にかはきっと再び一緒に仕事が出来る時がくると思っている。現状には非常に満足しているし、チームの一員であることに誇りを持っている。ただ、テストドライバーは過去にもしただけに、するつもりはないよ。レース・ドライバーであることを望んでいるんだ。今はF1に残りたいと思っているし、シート獲得のチャンスがあれば、それを目指したいと思っている。他にも選択肢はたくさんあるけど、レースをしたいんだ。現状、F1ではそれほど多くのシートが残されている訳じゃないけど、まだ残っていることは確かなんだ。」
ところが、その後ブラジルグランプリの会場に現れた琢磨は、今回のBARの処遇に対し不満を表明しました。それによればシート喪失を知ったのは自分のマネージャーからであり、チームから通知があったのは正式発表された後という屈辱的なものだったそうです。
「僕が今回のことを告げられたのは、チームの正式発表後だった。それまではラッキー・ストライクのプロモーションでアルゼンチンにいた。もちろん、マネージャーからは進行状況についての報告はあったが、僕のところにチームから話があったのは発表後なんだ。僕はBARに残留するつもりはない。ここにテストドライバー、3rdドライバーとして残留するつもりはない。どこか他に行くよ。」
■アンドリュー・ギルバート・スコット(佐藤琢磨のマネージャー) 「残留によるメリットがわからないんだ。二人の長期契約を保有するレーシングドライバーがいるチームに残留して、どのようなメリットがあるのだろうか?将来が開けている訳じゃないよ。何か前進できるものを見いだしたいと思っている。来季のレースシートを見つけることが最優先事項であり、そのことには楽観視している。アメリカや別カテゴリーへ行くことは考えていないよ。F1で何かを得られると楽観視している。」
これらのコメントを見ると、BAR・ホンダとしては、ホンダエンジンを熟知している琢磨にテストドライバーとしてチームに残留して欲しいと希望しているようですが、琢磨本人と彼のマネージャーは、すでにテストドライバーは過去に経験しているので、あくまでレギュラードライバーとしての道を探るため、チームを出る意向のようです。つまり琢磨は、ホンダとの決別宣言をしたことになります。ホンダではチーム離脱後も佐藤をサポートする姿勢をみせていますが、本人にはその意志はもうないようです。
一方、そんな琢磨に、ミッドランド(現ジョーダン)が興味を持っているようです。
■コリン・コレス(ジョーダン・トヨタ/チーム代表) 「アルバース側とは協議している。話し合い以上のものになっているが、契約はまだだよ。誰とも契約締結はしていないよ。そして我々は琢磨に興味を非常に持っている。この件について、トヨタ側とは話をしており、彼らもこの件について関心を示しているんだ。彼はF1に残りたがっているし、我々も彼にシートを用意することが出来る。したがって、解決策はあるよ。彼がどの程度の資金を持参出来るかといったことは問題にはならない。」
コリン・コレスははっきりと「琢磨にシートを用意できる」としており、さらに「特に持参金がなくても問題はない」と、かなり好条件で琢磨を迎え入れる準備があるとしています。 また、ジョーダンにエンジンを供給しているトヨタは、琢磨がこれまで同じ日本のライバルであるホンダと長く関係があったために、琢磨を起用する可能性は低いのではないかと言われていましたが、トヨタ側は次のように語っています。
■ジョン・ハウエット(トヨタ・スポーティングディレクター) 「ジョーダンのシートは、彼らにより決められる。純粋に、彼らの判断になるんだ。琢磨は彼らの選択肢の一つだろうが、トヨタがそれに影響を与えることは出来ないよ。」
■冨田務(トヨタ・モータースポーツTMG代表) 「ジョーダン・チームに対してはエンジンを供給するというだけのもので、われわれがチーム内部の問題について口を挟むことはない。日本人ドライバーがいるというのはF1にとっても大切なことだと考えている」
ところが、ここへきて今日、琢磨の来季の去就に関する新たな情報が入りました。琢磨に今度はレッドブルに買収されたミナルディへの移籍の噂が出始めたのです。 この噂のシナリオは、琢磨のBAR残留が出来なくなったことに対して、日本のメディアやファンがホンダ批判をしていることをホンダ側は心地よく思っていないこと、そしてホンダのライバルであるトヨタのエンジンを搭載するジョーダンと噂があがっていることについても、ホンダ側は心地よく思っていないこと、そのために、レッドブルのジュニアチームである現行のミナルディと、将来の技術提携を約束する代わりに琢磨にシートを用意させるようと動き始めたというもの。
さらには、琢磨のマネージャーがウィリアムズへのアプローチを開始したとも報じられています。ウィリアムズはすでにバトンの獲得を断念していますが、同時に現ウィリアムズのニック・ハイドフェルドが来季はBMWに買収されたザウバーに移籍することが決まっているため、現状ではレギュラーシートが1つ空いていることになります。 しかし、ウィリアムズには現在怪我で欠場中のハイドフェルドに代わってレースを走る3rdドライバー、アントニオ・ピッツォニアと、現在下位カテゴリーで活躍中の新鋭ニコ・ロズベルク(元F1王者ケケ・ロズベルクの息子)など有能な候補が控えており、さらにコンビを組むことになるエースドライバー、マーク・ウェバーと琢磨はレース中にしばしばいざこざがあり、関係はあまりよくないと言われているため、琢磨がウィリアムズに移籍する可能性は低いでしょう。
いずれにせよ、今回琢磨がBARのレギュラーシートを失ったというニュースは、特に日本国内において相当物議を醸しだしているようです。次の日本グランプリでは、ジェンソン・バトンを批判するメッセージが書かれた横断幕がファンによって用意されるだろうと報じられ、またBAR・ホンダに対しても、好意的な歓迎だけではないだろうと各国のメディアで報じられています。 また、これらの報道と同時に、日本グランプリスポンサーであるフジテレビ側も、現行契約の更新手続きの際に、佐藤琢磨の存在が不可欠であるといったことをバーニー・エクレストン側に訴えており、琢磨の去就次第で契約金額が変わってくるような報道もなされているようです。
というわけで、佐藤琢磨の来季F1残留への選択肢は、可能性が低いものも含めればジョーダン(ミッドランド)、ミナルディ(レッドブル・ジュニア)、ウィリアムズと増えてきました。琢磨自身が語る「近いうちに良いニュースをみんなにお知らせしたい」という言葉を待つことにしましょう。
ただ、現時点でもっとも可能性が高いのは、ミッドランドでしょうね。
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