Mako Hakkinenn's Voice
by Mako Hakkinenn



 映画「キャシャーン」を観る
2004年05月01日(土)

 今日はかねてから興味のあった、宇多田ヒカルの旦那さんで数々のビデオクリップを手がける紀里谷和明の初監督映画「CASSHERN/キャシャーン」を観に行ってきました。この映画はタツノコプロで1973〜1974年に放映されたアニメ「人造人間キャシャーン」の実写版ですが、アニメ版のストーリーや設定にはかなり無理があり、今回の作品ではそのキャシャーン誕生の過程や相対する勢力の設定は、原作と大きく異なっていました。この映画は伊勢谷友介主演で、麻生久美子、唐沢寿明、寺尾聡、樋口可奈子、及川光博、小日向文世、宮迫博之、佐田真由美、要潤、大滝秀治、三橋達也、西島秀俊などの豪華キャスト、そして監督の奥さんである宇多田ヒカルの主題歌でも話題になった映画です。

 舞台は、僕たちが歩んできた歴史とはまったく異なる歴史を歩んできた世界で、50年にも及んだ大戦の末に、世界は大亜細亜連邦共和国とヨーロッパ連合という2つの陣営に分かれており、物語は主に、戦争に勝利して東アジアのユーラシア大陸一帯を支配した大亜細亜連邦側で進みます。その背景は、長い戦争によって化学兵器、細菌兵器、核がもたらした薬害やウイルス、放射能などの後遺症によって人心は荒廃し、荒れた大地に人工的で無機質な建造物が立ち並ぶという設定です。

 ストーリーは全編シリアスな展開で、戦争がもたらすものの空しさ、そして真実の愛、人間が生きる意味を訴えかける内容でそれなりに楽しめる内容ではありましたが、ストーリー上の重要な設定が、原作と著しく変わってしまったというのが残念でした。キャシャーン誕生の設定も原作とは正反対で、キャシャーンの父親がマッド・サイエンティスト的な人物像になってしまったのがショックでした。また監督がCGを駆使したビデオクリップ出身の監督だけに、あまりにもCGが多すぎて全体的にチープな映像になってしまったというのが率直な感想です。外の風景や戦闘シーン、それに移動する機械や小道具の多くがCGで制作されており、実写とのバランスがやや欠けてしまっていると感じました。特に議会のシーンでは、議題の内容をビジュアルに映し出すスクリーンが折り畳まれて天井に収納されるシーンなどで不用意にCGで作られていたりと、「何もここまで作り込まなくてもいいような気がするが」と思ってしまいました。また、CGの世界がきめ細やかで果てしない奥行きをつけて表現されているので、逆にセットを使って撮影されたシーンとのギャップが激しく、何だかセットのシーンが演劇の舞台セットのような平面的な印象を受けてしまいました。

 しかしながら、監督自身が「例えこの映画がヒットしなくても、少なくとも映像表現において新たな革命を起こすことはできたと思う。この作品がこれからの映像作品の踏み台になってくれれば。」と語っていたように、その映像はとても斬新で今まで見たことのない映画であったことは事実です。映像全体の明るさも落としてあり、極彩色の世界とモノクロームの世界とのメリハリがあり、戦闘シーンの一部ではあえて平面的なアニメーションを挿入したりと、各所に実験的な要素が組み込まれています。監督自らが関わったと思われる背景CGなどの美術は、色彩感覚、発想共に日本人離れしたセンスが感じられると思います。

 この映画は、実際の上演時間もかなり長かったのですが、体感上の上演時間がとても長く感じられました。また音楽や効果音も全編を通してかなり多かったような気がします。中学1年の時に観たアニメ映画「機動戦士ガンダム〜逆襲のシャア〜」以来、実に17年ぶりに劇場で観た邦画でしたが、800円ならお金を出して観てもいいかなと思える映画でした。まあ今日はたまたま映画が1000円で観られる日だったので、200円余分に払ったといったところでしょうか。


≪過去 未来≫ 初日 最新 目次 MAIL HOME


My追加