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■ 「ラスト・サムライ」を観る
2003年12月14日(日)
今日は兼ねてから見たかったトム・クルーズ主演の話題作「ラスト・サムライ」を観てきました。感動しました。泣きました。久しぶりに凄い映画を観たといった感じでした。トム・クルーズ作品は「ヴァニラ・スカイ」「マイノリティ・リポート」とこのところお気に入りが続いていたので今回も期待していたのですが、「ラスト・サムライ」はクルーズよりもむしろ渡辺謙の演技が光る作品でしたね。「独眼龍政宗」からずっと好きだった渡辺謙ですが、この映画ではトム・クルーズよりも存在感があり、あの持ち前の迫力と堂々とした演技で見るものを圧倒していました。
映画全体の雰囲気も、英語が流ちょうな真田浩之が口を挟んでいただけあって、ハリウッド映画ではありますが日本人が観てもまったく違和感がなく、渡辺、真田を初めとする多くの時代劇経験者が出ていたので殺陣も素晴らしかったです。また明治維新後の横浜を再現したセットには圧巻され、ニュージーランドで撮影された日本の農村風景の美しさに感動しました。
「ラスト・サムライ」は「ロード・オブ・ザ・リング」のように大合戦がCGではなく、大河ドラマのようにエキストラを使っての本物の人間による合戦なのでその迫力はすさまじく、人間同士の戦いはリュック・ベッソンの「ジャンヌ・ダルク」やメル・ギブソンの「ブレイブ・ハート」のような生々しさがありました。一方で静かな農村でのトム・クルーズと村人たちとの触れあいのシーンには、のどかな風景と人間の温かさが相まって、心が洗われるような清らかさがありました。
この映画の主役はトム・クルーズですが、映画の題名である「ラスト・サムライ」とは渡辺謙のことであり、日本を代表する実力派俳優である渡辺が、ハリウッド映画の中で自分たちが今まで演じてきた「日本人」を伸び伸びと演じ、その才能を遺憾なく発揮していました。またトム・クルーズも重要な役ではあるものの、最後まで渡辺の引き立て役に徹していたところにも好感が持てます。
この作品はハリウッド映画では珍しく日本の文化をある程度忠実に再現した映画だと思いますが、時代背景が「ちょんまげ・刀・ハラキリ」といった、欧米人が未だに抱いていそうな日本のイメージそのものだったこともあって、これだけしっかりと日本を描いた作品に仕上がったのでしょうかねえ。もちろん多くの役者が日本人ですから、認識の違いや矛盾点は制作の過程で修正されていったのだと思いますが、時代が明治維新後で、日本が欧米化を目指し、なおかつサムライなどの旧体制が残る曖昧な時代だったこともあって、題材にしやすかったのかも知れませんね。以前リドリー・スコット監督が作ったマイケル・ダグラスと高倉健共演にして松田優作の遺作でもある「ブラックレイン」では、現代の日本(伊丹)の空が工場の煙と夕日で真っ赤に染まり、まるで経済大国日本は工場ばかりが建ち並び、青空などまったく見えないかのような描かれ方をし、なおかつダグラスが工場地帯に逃げ込んだ犯罪者松田を追うシーンでは、工場の従業員たちが乗った自転車の大群が押し寄せ、「これじゃ中国だよ」と思わずツッコミを入れたくなってしまいましたからねえ。この作品で古き良き日本の姿が、忠実に再現されていて良かったです。
トム・クルーズは親日家としても知られ、兼ねてから日本を舞台とした映画を作りたいと言っていましたが、ハリウッドスターに限らず、F1ドライバーでも他のスポーツ選手でも、親日家って多いですよね。それは日本が様々な技術の最先端を行く国でありながら、独特の文化を持っている個性的な国であるからと言うこともあるでしょうけど、やっぱり日本人が外国のスターに熱狂する、基本的にミーハーな人種であるということが大きいでしょうね。映画のプロモーション来日にしても、昨年行われた日韓ワールドカップを見ても、外国のスターが来日するたびに熱狂するわけですから、外国のスターたちも自分に熱狂してくれる日本が好きでないはずはありませんよね。そもそも日本はビートルズの初来日にあれだけ沸いたわけですから、日本のミーハーパワーは筋金入りですね。そんな日本人が熱狂する外国人スターの代表格とも言えるトム・クルーズが日本の古き良き伝統と文化に感銘を受け、これだけの映画を作ってくれたことは、やっぱり嬉しいことですよね。
一番嬉しかったのは映画が終わった後のエンドロール、タイトルバックではギャランティの関係でトム・クルーズが「ラスト・サムライ」というタイトルの前に唯一名前が出ましたが、エンドロールでは何と渡辺謙の名前が一番先頭に堂々と載っていたことですね。皆さん、この映画は映画館で観ないと損しますよ。
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