Rocking, Reading, Screaming Bunny
Rocking, Reading, Screaming Bunny
Far more shocking than anything I ever knew. How about you?


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*名前のイニシャル2文字=♂、1文字=♀。
*(vo)=ボーカル、(g)=ギター、(b)=ベース、(drs)=ドラム、(key)=キーボード。
*この日記は嘘は書きませんが、書けないことは山ほどあります。
*文中の英文和訳=全てScreaming Bunny訳。(日記タイトルは日記内容に合わせて訳しています)

*皆さま、ワタクシはScreaming Bunnyを廃業します。
 9年続いたサイトの母体は消しました。この日記はサーバーと永久契約しているので残しますが、読むに足らない内容はいくらか削除しました。


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2006年12月04日(月)  But you're the only one who can make me feel like this

武道館。先行予約の抽選で取ったチケットは、アリーナ真ん中のBブロック。とはいえ整理番号176番では、そう簡単には最前に行けないと思っていたら。
気づいたらど真ん中の前から2〜3番目にいた。右手を伸ばして、前の手すりをつかみ、死んでも放すもんかと思った。私の前にはやたら背の高い男が二人並んでいるが、その二人の肩の間の広く開いた空間に視界が開けていて、そこにドラムセットと、その前のスタンドマイクがしっかり見える。
そこにデイヴ・グロールが、普通に現れて、私の予想、いや確信していた通りの一曲めを歌った。───何で確信していたのかって? これじゃなきゃ嫌だったのよ。
待ちに待ったフー・ファイターズ。一曲めは"All My Life"。
私とフーファイが出会った、記念すべき、"One By One"の一曲め。

すぐそこにデイヴがいる。黒ずくめの格好の、一番デイヴらしいデイヴだ。
音響があまり良くない。音が小さい。けれどあまり気にならない。フーファイだ。すぐそこにデイヴがいる。その後ろにテイラーがいる。脇の二人は首を曲げないと見えないけど。正直そっちはどうでもいい。
わくわくする。嬉しい。家を出た時から、いや、チケットを取った時から、ずっと嬉しくて嬉しくて。
フーファイは不思議だ。私がロックに対してずっと持っていた美学を見事にぶち壊した。そして今までどのバンドも与えなかった感覚を与えてくれた。───喜び。生きる喜び。
カート・コバーンが死んでニルヴァーナというバンドがなくなったことで、フー・ファイターズは生まれた。カートという偉大な「負」があり、それに抑えられていたデイヴ本来の個性が、カートの死によって爆発したのがフーファイだと思う。カートが死んだ時、誰がこんな展開を予想しただろう。粗野で力強い「正」そして「生」のエナジー。

3曲目の"Best Of You"で感極まり涙ぐむ。この曲にこんなに感動するのは、やはり"Skin And Bones"のアコースティック・バージョンを聴いたから
続いて"Times Like These"だったので、思ったよりタイミングが早かったこともあり、さぞや号泣するかと思ったこの曲にわりとすいっとはまりこんだ。でも───ああ、この何ともいえないポジティヴな決意、切ない決意、生きていく決意。2002年以前に死んだ全てのロック・アーティストに、これを聴かせてやりたい。───カート・コバーンが降りてきてこれを聴けばいいのに。

デイヴが喋る。日本人にもわかるように、ゆっくり一語ずつはっきりと。
8年前の赤坂ブリッツ公演で、俺は5、6曲やった後に腹痛をおこしてトイレに行ったんだ。そのまま二度と戻って来れなかった。そんなことをマイクを引き下げて中腰になってみせて喋る。客は大爆笑で、私もげらげら笑った。ロックのライヴでこんなに笑ったのは初めてだ。

"Learn To Fly"の出だしの"Run and tell all of the angels"という音の快感にうっとり。次いで"Stacked Actor"は間にギターのかけあいやドラムソロも挟んでかなり長くやる。

「俺はテイラーを愛してるんだ」と喋りだすデイヴ。「本当に愛してるんだ」「愛してるよテイラー」とかなりしつこい。「愛してるってなかなか言えなかったりするけど、今夜は告白するのにうってつけの夜だ」
・・・他のメンバーとこんなに差をつけてもいいのか?とこちらが気になる。そりゃ私としても、フーファイは正直デイヴとテイラーがいればいいのであって、他のメンバーは名前さえ知らないが。
実は後の方でメンバー紹介もあったのだが、何とデイヴがテイラーに、「こいつらを紹介したら?」とひとこと言って任せたのだ。・・・うわ〜。

テイラーに捧げた"Big Me"を甘い前戯にして、'DOA'───ああ、私としちゃここが今日のクライマックス。愛の囁きのような、しかししっかりと元気な"Generator"へと続く。
この時の私の状況は、とにかくぎっしりと人に埋まり、前の手すりをつかんだ右腕は前にいる男の肘打ちにさらされ、髪の毛は始終何かにからまって引っ張られもみくちゃにされ、姿勢が不安定なため体重は常に片足にかかり、暑いし、横の男は汗臭いしで。
いつも思う。閉所恐怖症で、動きが制限されることが何よりのストレスになる私が、よくこんな状況で1時間半とか2時間平気でいられるなって。今日はそれほどでもなかったようだが、レッチリハノイのオールスタンディングの時(どちらも最前ど真ん中かそれに近い位置にいた)なんて、気が遠くなって係員に運ばれる客が後をたたなかったのだ。
そして普段なら、パニックのことを考え始めるのが一番パニックを誘発する筈だが。ライヴの時に限っては全く平気だ。がんとして、パニックを寄せつけない何かがある。

時々、頭上にひとが降ってくる。ダイヴするアホ連中の一番信じられないのは、そこで退場させられるということだ。いつもならそういうアホが私にぶつかってきやがった時は、遠慮なく一発入れるのだが。残念ながら今日は右手が手すりをつかんでいて使えない。係員が目つき鋭くしてこちらに歩み寄るたびに、「来る!」と思って首をすくめて乗り切る。

ラストは"Monkey Wrench"。この曲が一番好きな三好くん(b)が、後ろから声をかけてきて「これが聴けて感激した」と言った。・・・そう、実は今日は連れが二人いるのよ。・・・ジンナイくん、どこ行ったんだろ。オールスタンディングのライヴで最前にいるとたいがいこうだな。はは。

もったいぶった間をあけずに、ほどなくアンコール。朝から何故かずーっと頭の中で連続再生になっていた曲───"Break Out"だ。今回も途中を客に歌わせた。私もしっかり歌う。
レッチリのライヴの時などは、横で大声で歌う客を「アンソニーの声が聞こえない!」と威嚇したりしたものだが。これがフーファイだと、全員大合唱ありありという感じになる。
フー・ファイターズは、私が他の多くのアーティストに抱く神聖な畏敬の念といったものを全く感じさせない。ただひたすら、嬉しくて満足して、────感謝する。そう、感謝する。
ありがとう。今日ここに来てくれて。

締めはお馴染みの"Everlong"。やっぱりこのイントロはじわっとくるな。
今日やった16曲中、2ndからの曲は"Everlong"を含めて5曲と結構な割合だ。引き換え、私の一番好きな4thからはよく考えたらたったの2曲。しかししっかりとツボをおさえてくれたせいか不満には感じなかった。

最後にスタッフがピックを数枚会場に投げ込んだ。途端に最前部が大騒ぎになる。今までで一番の大揺れ。・・・勘弁してよ。私はモノなんかいらない。ハノイの時にキャッチしたマイケルのマラボーも、後でみーこちゃんにあげちゃったくらいだ。そう思っていたら。
前の男の肩に当たったピックが、私の手の上にころんと転がり落ちた。
誰も気づいていず、床をはいつくばって探している。
はは。すごいオマケだ。何だか嬉しい。

三好くんと九段下駅で別れ、ジンナイくんと新宿へ飲みに行く。ハートフォード・カフェともう一軒。ジンナイくんにタクシーで送ってもらい3時帰宅。

setlist

But you're the only one who can make me feel like this (他の誰もこんな感じを与えてはくれない)  *The One / Foo Fighters (2002) の歌詞。



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