Rocking, Reading, Screaming Bunny
Rocking, Reading, Screaming Bunny
Far more shocking than anything I ever knew. How about you?


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*名前のイニシャル2文字=♂、1文字=♀。
*(vo)=ボーカル、(g)=ギター、(b)=ベース、(drs)=ドラム、(key)=キーボード。
*この日記は嘘は書きませんが、書けないことは山ほどあります。
*文中の英文和訳=全てScreaming Bunny訳。(日記タイトルは日記内容に合わせて訳しています)

*皆さま、ワタクシはScreaming Bunnyを廃業します。
 9年続いたサイトの母体は消しました。この日記はサーバーと永久契約しているので残しますが、読むに足らない内容はいくらか削除しました。


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2005年07月05日(火)  Blackbird

朝まで仕事して、寝ないで12時からRonny(g)とスタジオ入り。の、筈が。
30分遅刻。家から5分のスタジオだってのに。このスタジオに近いからって今のマンションに引越したってのに。ああ私の馬鹿っ。
3時間かけて(私は2時間半だけど)、何となく持ち曲をおさらい。次回のライヴまであと18日だが、未だにセットリストすら決めていない。というか、前回のライヴ以来17日間、全く何もしていない。
実は意識が今月18日のXeroXのリハの方に向いちゃっているのだ。といっても、それに向けて何をするわけでもないのだが。

リハ後うちでRonnyと昼間から飲み、さらにジンをフラスクに入れて出かける。
今日はジェフ・ベックのライヴなのよ。私が一昨日、ヤフオクで最後の1分までバトルして入手した、一階ブロック最前中央寄り。6/30のお礼の意味を込めて、Ronnyへのサプライズ・プレゼント。

CB(g)のチケット(私たちより更にいい席)も取った。彼は大のジェフ・ベック好きで、今年2月には、赴任先のロンドンで偶然ベックに会って話をしている。
そんなCBと18:45に現地集合。の、筈が。
家を出たのが18:20って。Ronnyとゆっくりべったりし過ぎた。慌てて東京国際フォーラムに駆けつけ、入口でスタンバってたCBにチケットを渡す。一人すっ飛んでいく彼を見送り、この期に及んでトイレに駆け込むRonnyを待つ。19時をわずかに過ぎている。まさか定刻に始める気じゃないでしょうね。そんなのロッカーの風上にもおけない。レッチリはちゃんと軽く20分以上は遅れたわよ?
なんてメチャクチャ言いつつ飛び込んでみたら。何だ、まだ始まってないじゃん。余裕でもう一度外に出て、自販機で飲物買って戻ったら。
――始まってた。うわっ。二重扉の内側を開けるまで気づかなかった。何て防音のしっかりしたホールだ。

とにかく席へ。ブロック最前なので手すりを越えればすぐだが、席が高くなっていて手すりは肩より高い。Ronnyが先に手すりを飛び越え、すぐに私を引っ張り上げた。手を貸してもらうくらいのつもりでいたら、見事に一瞬で持ち上げられて驚く。
意外と頼もしいんだなあ、と思わず惚れぼれ。

会場はすでに総立ち。前に目をやれば。
アンプが積み上げてあるだけのシンプルなステージ。そこにきれいなブルーのライトが落ちて、深海のような紗をかける。ありふれた金色のライトがあたり、非日常でない「セッション」をうつし出す。
黒いシャツ、黒いジーンズ、スニーカーの、「ギター・ヒーロー」が、無粋なシールドを引きずって弾いている。

以下は、ジェフ・ベックをただの1曲も知らず、「どうせベックなんて、テク頼みで深みのない非人間的なつまんない音楽なんだわ」と長年偏見を持って食わず嫌いをしてきた者の書いたレポです。

腕が太い。手が――掌がでかい。親指が太い。でかい手がギターを掴んで軽く振り回すと、びくともぶれない太い、それでいて何ともきれいな音が出てくる。
ギターという楽器は本来嫌いだった。特に、きれいな音が嫌いだ。'Cause We've Ended as Loversのギターなんて、嫌いな音の代表格の筈だ。こういう曲が大衆受けするのを知っているので、更に反感があった。だが今実際に見るベックは、生のベックの音は、ただただ素直で、アグレッシブでもデリケートでもない、クリスタルでもメタルでもない。
チョコレート・バーみたいだ。外が硬く中が室温で軟らかい。ソリッドでかたちのはっきりした愉悦。

以前に哲(b)にジェフ・ベックを聴かされた時、その曲に全く感動出来なかった為、それまでのベックに対する偏見を確認するだけの結果となったのだが。今にして思えば、作品重視の私はベックの曲にジミー・ペイジ(当時の私のベスト1ギタリスト)のそれのような構成力や深い表現力を求めていたらしい。今、それが大間違いな態度だったことがよくわかる。
これは、ギターを「鳴らす」人だ。
楽器とは、人間の動作によって音が出る物をいう。ベックはギターという楽器を最大限に鳴らす。
instrument(楽器)という単語は、ラテン語の「築く際の手段」という意味から来ている。つまり大抵の人間には、ギターは「表現手段」なのだ。だがベックはギターを表現する。ギター職人クラプトンは、ギターを弾いて世界に貢献する。芸術家ジミー・ペイジはギターで世界をつくりだす。ジェフ・ベックにとっては、ギターが「世界」だ。
よく、何で「三大ギタリスト」があの三人なんだ、と言われるが。今回ベックを観てわかった。あの三人は見事に三者三様で、ギタリストのありようの三大サンプルとなっているのだ。

ベックはまるで、アナウサギが無心に地中に巣を掘るように、ひたすら自分のギターに没頭する。子供のような探究心が、飽くことなく自らの楽器に注がれる。
ステージ上にいてすら彼は、その探求の途上にあるらしい。その証拠に、音色が気に入らないとみるや、いきなり足元のエフェクターを踏んで音を一瞬でクリアにしてしまい、満足そうに弾き続ける。・・・あまりのことに呆気に取られてしまった。

ベックへのかつての反感の主な理由は、彼がオーディエンスを無視しているように感じたからだった。私はそれを、彼が大衆には己の音楽を理解する能力がないと思っているからだととらえていた。だが実際には彼は、他人にかまっちゃいられないくらい、自らのギターに魅せられていただけだった。これじゃ逆に好感が持てるくらいだ。

そしてベックはどんどん弾きつづける――ギターも変えず、チューニングすらせずに。どうやらこのツアーでは、そっくり同じオフホワイトのストラトを2本用意したらしいのだが、途中交換したわけでもない。
聞けばベックは、チューニングの狂ったギターでも、指やアームで音程をなおしながら弾けるという。・・・んな馬鹿な。いくら私がギターにど素人でも、そんなことはにわかには信じ難い。でも、じゃあどうしてたんだろう?

一部の最後にやった"Scatterbrain"が素晴らしかった。後日初めてCDで聴いてみたが、明らかにこの日の演奏のほうが速かった。なのに、あの目まぐるしい高速のリフを、とてつもない技量とリズム感で、一音たりともおろそかにせずにぴたっと決めてみせた。しかも印象的にはたいしたことはしていないかのようにさらりと。
――――Scatterbrain(注意散漫)どころの話ではない。おそろしい集中力だ。思わず「すごい・・・」と声が出た。

観る前は、よほど退屈するかと覚悟していたが。退屈する暇すらない、あっという間の2時間だった。セットリストはこちら

ところで。あのボーカルはいらない。"People Get Ready"だっていっそ歌抜きでやればいい。あの曲は最初はインストの予定だったというから、この機会にそのバージョンを聴かせてくれればよかったのに。

帰りはRonnyとCBと3人で、新宿ロックバーCTへ。今日もマスターは、ローラ・ニーロの後にホールをかけるといった荒技までして、私の好きなのをかけ続けてくれた。心から感謝。てか、楽しいーーーw

もっと遊んでいたかったけど。「二人きりになりたい」と言われて終電で帰る。

今日のライヴは本当に楽しかった。横にいるRonnyが私と同じように楽しんでいて(彼も私と同じくベックに苦手意識があったのに、同じく今日のライヴでそれが消えたのだ)、二人で同じ興奮をわかちあえたのが幸せだった。
おまけに。初めて見たベックの動きが、Ronnyに似ていたので笑った。右の腰でギターのボディを持ち上げるところなんかそっくり。どうやら本人もそう思ったようだ。(後日知り合いにも言われたらしい)
おかげでベックにはすっかり好感を持っちゃったよw

Blackbird (黒ツグミ)  *Jeff Beck の曲。(2001)


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