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ムシトリ日記
加藤夏来
→ご意見・ご指摘等は

2006年11月08日(水)
アニメ『ゲド戦記』感想(ネタバレ)

だいぶタイミングがずれていますが、見に行ったので一応感想。



田舎の百姓屋で大人と子供が四人で畑仕事やってるところへ、近所の金持ちが襲ってきて飛んだり跳ねたりする話。
以上。







で終わらせるといくらなんでもアレなので、もうちょっと考証します。話がすーごい狭いなあ、これ。いや、普通のアニメ映画としては普通だと思うけど、天下のジブリスタジオと天下のアーシュラ・ル・グウィンを引っ張り出したらまずかったんじゃないの?

宮崎吾郎という時点で誰でも考えるだろうけど、この映画はとにかくとにかくネームがビッグ。それに反して実体部分が不安、というか宮崎吾郎が不安。

映画と同時にものすごく有名になった、主題歌の手蔦葵もド新人だが、困ったことにこちらはものの見事にビッグネームを受け止めてしまっている。吾郎氏も自分にできる範囲で受け止めておけばよかったものを、よせばいいのに全編真面目に仕切ろうとするから、より一層傷は深い。

これについて某友人に意見を求めたところ、「見えぬものこそ!」と主張された。「天才の父に絶対敵わず、圧倒的な差にうちひしがれる凡人のドラマを読み取るんだよ!」 この友人、映画館の椅子に体操座りして歯を食いしばりながら見たそうだ。残念ながら私はそこまで変態ではない。

なまじ看板が大きいのでアイパッシングも大きく、無駄に悪評が高い。悪評を聞いてインパクトを求めていく駄目映画マニアにとっては、「そこまで言うのはなあ」とちょっと小首を傾げる程度だ。一応、起承転結つけてまとめてあるし、普通のアニメ映画だったし……ま、原作ファンが腹立ててるのはよく見ることだし、結局分からないからいいや……。あたりに落ち着くような気がする。



と、いうか。
実を言うとよく覚えてないんですよ、中身を。



見てから少し経ったというのもあるけど、改めて思い出そうとしたら細部がかなりおぼろげになっていた。ある意味、作品としては悪評よりもまずいんじゃないのかと思う。無かったことにされかかっている。

スタジオジブリは一企業として存続をはかっていかなければならない。そのために何としても宮崎駿の遺伝子を存続させようとしたと思う。しかし、仮にもエンタテイメントとして興行を打つ会社が、存在をスルーされたら最後なんじゃないですか?

というあたりで、友人の評に戻る。確かに見えぬものこそなんである。作品そのものよりも、それ以外のものの方がインパクトがずっと大きい。だから、真に楽しみたいと思って情報を集めている人がいたら、本編はおまけだよと言っておく。「宮崎吾郎は建築家」だの、「原作者の出した非難声明」だの、探して見つかるものが一番面白いから。