某所にて、『アンパンマン』の作者であるやなせたかし氏のインタビューを目にしました。
さすがにこのアニメだか絵本だかを見たことのない日本人は、ほとんど存在しないんではないかと思われます。幼児の必修科目なので、小学校くらいの悪ガキになると「アンパンマンはその名の通り、常にキメている」だの、「アンコが脳なので、その日の頭部の出来具合によってはヨイヨイ」だの、「実は胴内部に本体がある」だの、好き放題なおちょくられ方をした後忘れられてしまうのがほとんどです。……私だけか?
それはさて置き、やなせ氏は戦中派です。目の前で国の浮沈ひとつで正義が転がっていく光景を目にしてきた氏は、「正義とは、信じ難い」という信念とともに、ひとつの確信を抱かれました。
やなせ:それと、もうひとつ。人生で一番、何がつらいか。「食べられない」ってことなんだよね。「正義の味方」だったら、まず、食べさせること。飢えを助ける。でも戦後ずっと、スーパーマンとかウルトラマンとか、いっぱいヒーローは出てきたけど、みんな飢えている人を助けない。それをやんなきゃ、と
かくしてアンパンマンは、何よりも先に飢餓から子供を救うヒーローとして生を享けました。それから、恐らくは病苦(バイキン)からも。キリストが自分の肉の代わりとしてパンを与えた有名なくだりが聖書にありますが、アンパンマンは頭まるごとのパン、自分の身をお腹をすかせた子供に差し出します。いつものまん丸の笑顔で。
次から次へと消費されていく、ただの日常のパンであることが、この日本屈指のヒーローのアイデンティティでした。いずれ子供が成長したとき、捨てられていってしまう運命を背負って、ほかのヒーローに負けず劣らずアンパンマンも孤独です。
まったくの別件で、例のアニメのオープニングになっている曲の歌詞を通しで目にしました。
アンパンマンマーチ
【作詞】やなせたかし 【作曲】三木たかし
そうだ うれしいんだ 生きる よろこび たとえ 胸の傷がいたんでも
なんのために 生まれて なにをして 生きるのか こたえられない なんて そんなのは いやだ!
今を生きる ことで 熱い こころ 燃える だから 君は いくんだ ほほえんで
そうだ うれしいんだ 生きる よろこび たとえ 胸の傷がいたんでも ああ アンパンマン やさしい 君は いけ! みんなの夢 まもるため
なにが君の しあわせ なにをして よろこぶ わからないまま おわる そんなのは いやだ!
忘れないで 夢を こぼさないで 涙 だから 君は とぶんだ どこまでも
そうだ おそれないで みんなのために 愛と 勇気だけが ともだちさ ああ アンパンマン やさしい 君は いけ! みんなの夢 まもるため
時は はやく すぎる 光る 星は 消える だから 君は いくんだ ほほえんで
そうだ うれしいんだ 生きる よろこび たとえ どんな敵が あいてでも ああ アンパンマン やさしい 君は いけ! みんなの夢 まもるため
もしかしたら、今までで最大の恥をさらします。 アンパンマンマーチを聞いて本気で泣く日が来るとは、夢にも思いませんでした。
|