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ムシトリ日記
加藤夏来
→ご意見・ご指摘等は

2005年07月28日(木)
ギリシャ悲劇もっと勉強

本題に移る前に、たいへん素晴らしいニュースに対して、お祝いのリンクを張っておきます!

よくないことが起こりがちな世の中ですが、ちょっと目を転ずれば明るい面も見えることがあります。いや、この話も多分違う人が見れば暗いニュースに見える場合もあると思うんですが、とりあえず自分にとってはぱっと気持ちが明るくなるような、とてもよい話でした。おめでとう、おめでとう、トム・クルーズ!





え、さて、前回の勉強の続きです。

ごちゃごちゃ矛盾点をつつきましたが、オイディプス王の研究においては前述のようなことは割りと今更だったようで、図書館で借りてきた初心者向けの入門書にも別項を作って説明してありました。

『観衆は(中略)「すべてが明らかになった」ような気がするのであって(中略)作者の提示したものを受け入れてしまうということであろう。(中略)もっとも、作者がどの程度初めから意識してそれをやったかは(中略)疑問である。書いているうちに、自分自身も引っかかってしまっていた、というのが実情かもしれない』(『ギリシア悲劇入門』中村善也/岩波書店)

意外と粗忽な方です。それにしても、舞台稽古とか色々スタッフとの打ち合わせがあっただろうに、当時も誰も指摘しなかったんでしょうか。それはともかく、この後の話も総合すると、要は事実関係の矛盾とかはどうでもいいらしいです。確かに、こないだ某推理小説を読んで心の底から思ったことですが、矛盾が無くたって「ただそれだけ」じゃ、ストーリーというのはどうしようもありません。もっと大枠の流れを見るべきなんでしょう。

お話の初めに戻りますと、このエピソードの内容は当時もすっかり周知のものでした。オイディプスが登場した時点で、この人の事情も最後どうなるかも見ている人は分かっているわけです。流れとしては推理小説で言うところの「倒叙もの」にあたります。いや、今ちょうど後ろでかけてるから言うのですが、ハリウッドの歴史物超大作とかが近いのかもしれない。(ちなみに『トロイ』です。かっこいいです)

なんとか実感できる例が出てきたところで歴史もの超大作(っつうかトロイ)の話に移りますが、初演当時にこの映画を見ていて一番胸が躍ったポイントというのは、「木馬登場」と、「ブラッド・ピット踵射抜かれました!」だったりします。あの映画が元々素晴らしく完成度が高い、というのはさて置き、踵で大興奮するのは自分ながら納得がいかなかったらしくて、前のサイトの日記を読み返すと「いったい何がそんなに嬉しかったんだ、当時の私よ」と既に自己ツッコミが入っています。

(ところでトロイの殺陣最高だ……衣装もセットも素晴らしく美しいんだよな……つうかヘレネよりパリスの方が姫っぽい……オーランドのへたれっぷりをこう使った配役のセンスが絶妙だと思う……以下永遠に続く)

上記の二つは当然ながらトロイア戦争のエピソード中一二を争うほど有名なもので、自分も見る前から「アキレス腱」と「トロイの木馬」の二つの単語が頭の中にちらついていました。「来るぞ来るぞ」と思いながら映画を見ていたので、パリス役のオーランド・ブルームが弓の練習を始めたときには思わず笑ってしまったくらいです。(もちろん、オーランドに弓という組み合わせに笑った部分もありますが)

この「来るぞ来るぞ」感が見ている側に存在しているからこそ、目の前で展開されているストーリーに別の意味が付加され、実際に起こっていることとあわせて楽しむことができる、というのがそもそもこういう作品のミソではないかと思われます。

オイディプス王に戻ると、この話では最初の場面で「犯人出て来い! しまいにゃ呪うぞ!(意訳)」と叫んでいる王様自身が実は犯人である―――というのが一番面白いところなので、むしろネタが割れていてくれないと困るわけです。倒叙もので「犯人がいつばれるかとどきどきしている」状態が眼目になるのと同じこと。

そういう、意味を重ねることでストーリーに深みを増す手法の、物凄いご先祖様がこの作品で。




で、締めようとしたんですがまだ何かあるらしいです。




勧められた通りギリシャ古代史もひもといてみたのですが、ギリシア演劇についての解説が何か……物凄い言い回しがいっぱい使ってあってよく分からんのですが……宗教行事? なのかな? えーと、しかし残念ながらこれ以上解釈を始めるともう、作品がどうとかいう問題ではなくなってくるので一旦この辺で中断します。あと、もうちょっと阿呆な話題を心がけます。