小説という作業には、それを作り上げるにあたって他の部分よりも明らかに楽しい、マグロで言えばトロの部分が三箇所あります。
一つは、そのストーリーを何を中心に構成するかという、キモの部分を思いつく瞬間。プロット立てと言われますが、特に詰まっているときに「これで行こうじゃないか」というアイデアがひらめいたときの快感は、アマチュアのひよっこから大作家に至るまで変わりません(と、思う)。スティーブン・キングの「ミザリー」を読んだ方にはお分かりでしょうが、時々そういう状態の人間は幼児的万能感にとらわれています。目つきがおかしくてもそっとしておいてあげてください。
二つ目は、「終」または「了」、何でもいいですが、ひとつの区切りにエンドマークを書き込む瞬間です。ある人は私に向かって、「これを食べて生きている」と断言しました。その通り、エンドマークを充分に食べていない書き手は、見た目は普通に見えてもだんだん弱っていきます。
三つ目は、その小説にどんな人物を出すか、キャラクターを作り設定を付け加える作業です。昔から私はこれが無類に好きな人間で、キャラクターの周辺状況として設定を作るにもやりすぎ、本体の小説を書くまで行かなかったり、友達と遊びの小説を書くにも「お前ばっかりそんなたくさんキャラ設定して!」と、それが原因であわや絶交しかかったこともあります。
食べ物でもそうですが、美味しいものはすぐに食べ終わってしまうのがもったいなくてわざわざ長い時間をかけたり、もうちょっとどこかに残っていないかと皿をつつき回して変なものまで食べてしまったりもします。 ただ、上記の三つはどれも読み手と共有するには適さないものです。プロットがいくら上手く行ったからって先に明かすのはルール違反だし、キャラ設定表が本文の前に長々つくのはみっともない。なので密やかな楽しみとして味わい、さっさとルーチンワーク(本文作成)に戻ります。そうじゃないと冷めかけのお風呂と一緒で、どんどん出づらくなりますね。
高々60枚そこいらでこんな振り返り方をしているのも未熟ものの証しですが、ご不快と面倒でなければ以後もお付き合いください。「デビュタント」本日で終了、通しタイトル『団長閣下の淑女』としまして、このシリーズの二つ目のエピソード「招かれざる客」を以後始めさせていただきます。
拍手レス
ミラコさん> こんばんわ、リンクありがとうございました〜♪ SCCはいかがでしたか?(笑) もう本当に、あっちこっちにイっておりますので、ついてきていただけるのが本当に嬉しいです。堂々と通ってきてくださいませ! 「ミラコさん歓迎」って看板立てときますんでv
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