ある年の正月、大量のスクラッチカードが手に入る機会がありました。我が家には盆暮れの親戚同士の集まりのとき、必ずアイスクリームを買っていく決まりがありまして、ちょうどその年の正月はお店のキャンペーンに当たっていたのです。大人数のぶんですから額もそれなりで、購入価格に応じてくれるスクラッチカードも十数枚くらいになります。
ちなみに、横長長方形のカードでスクラッチ窓は七つくらい。ひとつだけ削って当たりが出たら云々、という、よくあるやつを想像してください。 車の助手席でこれをやっていた父が、全部削り終わったところで怒りだしました。1枚も当たらなかったのです。まあ、当たったからってノベルティグッズがもらえるくらいのもので、怒る父が大人気ないんですが、この枚数でひとつも当たらないというのは確かに癪だし、お店もケチです。それで失敗カードを黙ってチェックしていたところ、ふと思いついたことがありました。
翌日、別の親戚の家に行くので、同じようなアイスのパックを買い、同じ枚数のスクラッチカードを貰いました。まだ昨日の文句を言っている父からカードの束を受け取り、思いついた仮説を実行してみたところ、きちんと当たりは出ました。二つか三つだったと思います。
『絶対おかしい、何でA.だけ当たるんだ』と、父は別の方向で怒りだしました。別におかしくありません。私はちょっとした工夫で、当たりの出る確率を操作したのです。さて、ヒマだったらちょっと考えてみてください。スクラッチカードの当たり確率を上げる方法とは。
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それほど奇抜な解答ではありません。私はただ、七つの窓のうち、半分より左の窓だけを選んでこすったのです。カードは横長ですから、右利きの人がこするとなると必ず左手で押え、右手でこすることになります。自然、作業のやりやすい、半分より右側の位置を無意識に選んでしまう可能性が高くなります。 ところで、スクラッチを制作する側で、賞品をケチろうと思ったら? 簡単ですね。選ばれやすい部分を避けるようにしながら当たり窓を散らせばよろしい。少なくとも、私なら当たりの6〜7割を左側に持っていきます。 この仮説を聞いた父は、ムキになって全部のカードのスクラッチをはがしていました。
……本当にそういう配置になっていたそうです。
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