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2004年07月29日(木) 最後のセックス

毎日、少しずつ書いていると
まるで昨日のことのように思えてくるのだけれど
実際は、もう、あれから10日以上経ってしまった。

じょじょに気持ちは落ち着いている。
でも、まだ、頭のどこかがしびれて、ぼうっとしている。
時々、水槽の中から外を見ているように
自分の声もぼんやりと聞こえることがある。
視界がぼんやりしてしまう。

ただ、眠ってしまいたい。
でも、頭痛がして眠れない。
うとうととしては、怖い夢を見る。

すべて、自分が招いたこと。

*********

夜が明けて、少し寝ようとしてもやっぱり眠れなかった。
ヒロも同じだろう。
早々に2人とも起きてしまう。

パン食べようか、とヒロが言い、
よく食欲あるね、と私が返した。

パンを焼いて食べた。
ヒロも、やっぱり全部食べられず、
私も、ほんの数口しか食べることはできなかった。

食べ残したパンを、こまかくこまかくちぎった。

そんな私の様子をみて、ヒロは、どうするの、それ、と聞く。

うん、小鳥にあげようと思って。外にまいていい?と言うと

ヒロは、ふっと、笑った。これまで私が愛してきた、変わらない、ヒロの笑顔。


後かたづけをしている間、さみしくて、さみしくて
どうしようもなかった。
数人の女性からのレス。ヒロの言葉。
話をきいているときに、あまりにも多くの名前が出るので整理しきれず、
名前を書いて並べたメモ。
そのどれもが、私をどうしようもないほど、うちのめした。
それでも、「うちは大丈夫だから」
というひと言で片づけてしまえる、ヒロの家庭・・

雨戸をしめて、まっくらになった部屋で
なかなか動かない私をみて、ヒロは私の正面に立った。

どうしたの?と問うヒロの顔を見上げて
「セックス、しよ?」と言った。

ヒロは、少しびっくりして、「いいよ」と言って布団を敷いた。
一度閉めた雨戸を開けて、風を通そうとして、ふと手をとめ
「暗いほうがいいの?」と聞いた。

うん、とうなづいた。

さっさと服を脱ぐヒロ。私も、自分で脱ぐべきなんだろうかって思って
とりあえずキャミ一枚になる。
横になったヒロのとなりに、身を寄せる。

長い長い、深いキスをした。
ヒロの長い指が、私のキャミも下ろし
指が、舌が、全身を愛撫した。

こんな状況で、勃つものなんだろうか、と思っていたのに
ヒロは、元気だった。

理解できない、と思いながらも
私はやはり濡れ、激しい動きに身をゆだねているうちに
とても簡単に、のぼりつめてしまった。
全身が硬直し、ヒロにしがみつく私を
ヒロはそのまま、強い力で抱きしめていた。

やがてヒロも、深い吐息とともに、そのまま果ててしまった。

思い出になるようなセックスだっただろうか?
いや、そんなロマンチックなものじゃ、なかった。

ただの、ルーチン、欲情の果て、だった。

荷物をまとめて、別荘の扉を閉めた。

車に乗り込んで、別荘を見上げた。

もう、ここに来ることはないかもしれない、と思った。


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