ゼロノオト

2004年12月30日(木) ぼくはデッサンができない

一時期はコンプレックスだった

だって、絵が描けない美大生、なんて、

飛べない鳥のような

注射ができないナースのような

タバコが吸えない喫茶店のような

ダメな存在だと思っていたから。


美大に行こうと決めたのがひとよりちょっと、遅かった。

何かにうすうす気付いていたから

最初は数学で受けようと思って、

あと、美術予備校っていうものが遠い異次元の世界のように感じられて、

普通の予備校で勉強しようと決めた。

無謀だった。

なにかにうすうす気付けても、数学がこれほどまでにできないことには気付かなかった。

いつまでたっても55段階のレベルが上がらなくてやっと、気付いた。これはまずいぞ。と。

高3の夏からあわてて実技に切り替えた。


そんなこんなで、現役で滑りこめちゃったから、当然デッサン力は底辺だ。

入学してみると、周りにはデッサンも平面構成もバリバリにできる浪人生とか、うようよいて

最初の授業の共通絵画では、果てしなく途方にくれた。

このとき、高3のはじめにうすうす気付けていたことは、忘れていた。

うすうす気付いていたことを思い出して、さらに「うすうす」じゃなくなったのはしばらくしてからだ。

それまでは課題に飲まれる毎日だった。


飛べない鳥はデジカメを手に入れた。

楽しみかたを覚えると、忘れかけていたあることにも気付きだした。

たとえ絵が描けなくても、写真があるじゃないか。

開き直りにも取れるけど、これは完全な開き直りだ。

目的はなんなのか。

はっきり言って、そんなのはっきりしてないけど、

はっきりしてるのは、絵をかくことだけが目的じゃないということ。

方法だっていくらでもある。写真もそのひとつになりうる。

タバコが吸えない喫茶店は、ほかのなにかを大事にしている。

注射がへたくそなナースは、対抗しうるなにかを持っているのかも、しれない。

まぁ注射はいずれうまくなってもらわないと困るけど、注射しかとりえがないってのもアレだし。


というわけで、あんまり気にしなくなった。

そりゃあ絵が描けるに越したことはないし、デッサンだってうまいほうがいい。

けども、ほかにもすべはあったんだ、って。

だから絵画の授業に耳の写真を撮りまくったって正解だし、DVまわしてたって正解。

やっぱり正解がたくさんある教科のほうが好きだったし、ね。


目的がはっきりしたときに、デッサンが必要になれば、もちろんそれはやる。

飛べないペンギンも、水が干上がって、空をとばないと行けない所にしかエサがなくなったら

いやでも飛ぶ練習をするとおもうんだ。

まぁ、ペンギンの場合は何万年ってかかるだろうけど。進化に。

わたしはペンギンじゃないから、何万年とはかからないから大丈夫。なんとかなる。


さてと、目的を探しにいきますか。




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