ひとりごと
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薄情な私を許して… 2004年03月15日(月)

午後からはパン教室だった。
デジカメがない分、いつもより軽くて薄いバッグを持って
駅までぶらぶらと歩いて行った。

この春、初めてのチョウチョに出会った。
胸が弾んだ。
淡い黄色だった。
素敵な夏になりそうだ。
ひらひらと舞う蝶を目で追いながら、早くカメラを、とバッグを探ろうとして
なくしたことを思い出し、手をおろしてぼーっとした。
チョウチョは高いところを飛んで、畑の向こうに行ってしまった。

うららかな陽射しの中、足元にナツカシ色のカラスノエンドウの花を見つけた。
雪柳がぽろぽろと垣根に咲き始めていた。
見上げると桜のつぼみもはじけそうになっているのだった。
いつもだったら、愛用のデジカメに収めるところだ。
私はまぶたの奥と、心の中に春の景色を焼き付けた。
焼きたてパンの画像は携帯電話で撮った。

あのデジカメがない。
さびしい。
いつも私と一緒に世界を見てきたのに。
今頃どこでどんなふうに過ごしているのか。
壊れてはいないだろうか。
無事なまま、誰かの手元にあるのならいいけれど。

ぼんやりした頭のまま、懐かしいデジカメの姿を見たくて
インターネットで検索した。
4年前に発売されたデジカメを扱っているお店はなかったけれど、
当時の記事の中に、その名前と性能について書かれているものを探しては
ほめられているのを見て、うなずいたりした。
そう、あれはとても使いやすいデジカメだった。

ふと思いついて、オークションのコーナーで検索してみた。
1件だけヒットした。
見慣れたデジカメが、もっとずっと新しいきれいな姿で現れた。
いいな。
また使うならこれがいいな。
そう思い、熱に浮かされたようにふらふらと金額を打ち込んだ。

すると次の瞬間、
「おめでとうございます!あなたが落札しました!」の画面が。
あぁ!
落札してしまった。
買っちゃった。
あっという間だ(しかも安い)。
すぐに出品者からメールが来て、手続きとなり、
2、3日中に新しい同じデジカメが手元に届くことになった。

嬉しいような、悲しいような。
デジカメがまたやってくるのは嬉しいけれど
まだなくしてから1日しかたっていないのに。
帰ることを信じて待っているつもりだったのに。
自分がとっても薄情で不義理なことをしているように感じてしまった。
なんだか罪悪感。

デジカメをなくした一部始終を知っていて心配してくれている
両親や妹に電話で報告した。
「よかったじゃない!」と言われた。
「でも、こんなすぐになんて。長年連れ添ったデジカメに申し訳なくて…。」と言うと
「そんなことないわよ。あのデジカメもこれで安心するわよ。」と母。
「代わりのデジカメがいるなら、ゆっくりと帰ろう、って無事でのんびり帰ってくるよ。」と父。
「こんなにすぐに同じデジカメが見つかったのは縁があったのよ。」
みんなに慰められた。

そうなのかな。
そう考えるしかないな。
やっぱりデジカメがないのは不便だし寂しいし。
新しいデジカメを用意していてもいいのよね。

もちろん失ったあのデジカメのことはずっと待っているつもりだ。
不便とか便利、だけではない、長年の思い出がつまっているから。
トトのキイホルダーだってついたままだ。
いつかあのデジカメが帰ってくるまで、2代目にがんばってもらおう。

あぁ、こんな薄情な私だけれど、あのデジカメちゃんは許してくれるよね。


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