ひとりごと
DiaryINDEXpastwill


この味 2003年11月08日(土)

目が覚めたら体が軽くなっていた。
昨日よりだいぶいい。
熱も37.0℃まで下がっていたので
用心しつつ、今日は予定通りに動くことにした。

まずは、先日届いた紅玉で、りんごのケーキ作り。
素朴なこのケーキは、学園祭のカフェで出していたもので
このシーズンになると、毎年何個も焼いていたものだ。
りんごの焼ける匂いが部屋に漂うと秋が深まったことを感じる。
学校から帰った妹たちは、匂いを感じて「あぁ。秋が来たね〜。」と言っていた。
今日はこれを実家の家族に、そして古い友だちに持って行く。

ぼろぼろになったレシピを見ながら、粉やバターを量り、りんごをむいた。
私は学園祭のカフェのケーキ係のチーフだった。
ケーキ作りを担当している後輩たちから
夜中になってから作り方の質問の電話がかかってきたっけ。
みんな夜通し何個もケーキを焼いていたのだ。
このケーキは私たちのカフェの名物だった。
作りながら、いくつもの秋を思い出していた。

お昼前にケーキをオーブンに入れてしまってほっとした。
あとは時々焼き加減を見ながら、昼食の支度をしたり、
留守番を頼む夫の夕食の準備をしたりすればいい。
久しぶりにしては、ケーキもちゃんとできあがった。
あら熱が取れてからケーキを切り分け、
家に置いておく分、実家に持って行く分、友だちにあげる分をそれぞれ包んだ。
ケーキを入れた箱を2つ持って、暖かい立冬の街に出かけた。

学生時代の友だちは仕事の傍ら趣味の絵を続け、毎年グループ展を開いていた。
もうこのグループ展も15回目になるのだと言う。
行って絵を見るたびに感動し、刺激を受ける。
続けていくことってすばらしい。
神保町にあるいつもの画廊に行ってみると、最終日と言うこともあって
ほかの友だちも何人か来ていてちょっとした同窓会気分。
絵を見たあと画廊の小さな応接セットに詰め合わせて座り
お茶とお菓子でおしゃべりをした。
ほんの3切れしかない私のケーキもみんなで分け合って食べてもらった。

「懐かしい。」
「そう、この味!これよ〜。」
「このケーキ、人気だったよね。」
「もう20年ぶりくらいになるのね。」
昔のカフェのお客だった友だちが喜んでくれて嬉しかった。
素朴なケーキをきっかけに思い出話に花が咲いた。
そして友だちの絵の前で、みんなで何枚も写真を撮って別れた。
またみんなでここで会いましょう!

次は新宿で妹と待ち合わせ。
短い日は暮れて、デパートの前ではクリスマスイルミネーションが明るく輝き
幸せそうな人たちが写真を撮り合っていて、ウキウキした。
クリスマスムードいっぱいのデパートで妹にケーキの箱を渡した。
この妹は、私がせっせとケーキを作っているころはまだ小学生だった。
幼かった彼女の中に、この味は思い出に残っているのだろうか。

妹と暖かいイルミネーションの中を歩き、そこを抜けて
酉の市で賑わう新宿の街を歩いた。
私はこのあと、中学のころの仲間との集まりに参加する。
屋台から漂うおいしそうな匂いに何度も誘惑されながら
妹に送られて、仲間が待つお店へ歩いて行った。
宴会前の私はなんとか思いとどまったけれど、妹は目の前の屋台に引っかかっていた。
ソースとかつお節が湯気を立てる発泡スチロールのお皿とお箸を持ったまま
腕にケーキの入った紙袋を提げ、妹は「じゃあね〜」と人ごみの中に消えていった。
この混雑の中、無事に帰れたかしら。

両親と妹たちは、もう懐かしいケーキを味わってくれたかな。
帰りが遅くなったので、その後の話は聞いていない。
「懐かしい」と言ってくれていたらそれでいい。


Toto&Bebe |HomePage