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----------2005年12月02日(金) 胸を張る

「よく、ここまで落ち着かれました。」

眠り薬をもらいに行った新しい医者が、血圧を測定するために腕を晒した私に向かってそう言った。

面と向かってそんなことを言ってもらったのははじめてのことで、誰も彼も、親も、そして私自身でさえ、「あれらのこと」はなかったことにしてしまおうとして、目をそむけ、口を噤んでいるけれど、いつだって、どんなときだって、そう言ってほしかった。その、たった一言が欲しかった。

「よく、ここまで」。

すべてを赦された気がした。

身体に残る数え切れない傷痕は消えないけれど。

それでも私は頑張ったのだ。すごく、すごく、頑張った。

少しだけ胸を張ろう、と思った。