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----------2005年08月21日(日) 同伴者は

「明日は日本的に雨らしい」という母の警告の言葉をはいはい、と聞き流し、自転車で会社に行った。お昼に白い箱から出たら雨が降っていた。母の言葉も時には信用しなければならないな、と反省した。

いつまでも残業地獄が終わりそうにないので適当に力を抜くことにして今日は定時上がり。日曜日がいっちばん忙しいのだから日曜日にこそ残業して欲しいのだろうけれどそこであえて帰ることでささやかな反抗心をあらわにしてみる、本当にささやかな、可愛らしいくらいささやかな、反抗心。

そんな私は多分本当に可愛らしかったのだと思う、だから仕事が終わって外に出たら雨はやんでいてけっざまみろ母よ私は神様にまで愛される、ふふん、と自転車をこぎはじめて数分、空からは大粒の雨が降り注ぎまたも、またしても、ずぶ濡れ、今月3度目のずぶ濡れねずみ。やっぱり私は可愛らしくなんかないし母の言葉は懐疑的に信用しなければならない。

そして家に帰ってぐしょぐしょのシャツを脱いだらカサッという耳慣れない音がして異様な気配が満ち満ちたその瞬間 

ヒィィィィィィィィィィィィィィィィ

という元ヴォーカリストの超絶ハイトーンが部屋中に響き渡った。その声に驚いたのかその物体は部屋中を飛び回り、娘はロブ・ハルフォードも腰を抜かす金切声で、母はサラ・ヴォーンも吹っ飛ぶダミ声でヒィィギャアヒィィギャア、そしてその物体はかつて中島みゆきがそれに対抗できるのはジャニス・ジョップリンだけではないか、と書いた猛烈な声で

ミィィィィィィィィィィィィィィィィィン

と鳴き続け、その騒音のるつぼの中でただひとり父だけが森本レオのような穏やかな声で

「セミやんけ、夏やなあ」

と呟いて、その物体をそっとつまみあげるとベランダに放った。

結論としては母の言葉は盲目的に信ずるべきだし忙しい日には残業をするべきだし何処から背負っていたのか知らないけれどセミにまでストーキングされるくらいだから私は可愛らしいのだ。