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----------2005年04月11日(月) ヤコブとシモーヌの対話
「救われるように急ぎなさい。（但し）人から願われてそうするのではなく、あなたがた自身の意志で熱心でありなさい。そして、もしできれば、私の先を越しなさい。そうすれば、父はあなたがたを愛するだろうから。」
（「ナグ・ハマディ文書�契盒機�書簡」所収「ヤコブのアポクリュフォン」／岩波書店）
もしもシモーヌ・ヴェイユがこの一文を読むことがあったら、とふと思う。ナグ・ハマディ文書が発見されたのは１９４５年のこと、シモーヌはもう既にこの世にはなかった。
自ら救われるように急ぐ、だなんて
自らの意志で熱心に救われようとする、だなんて
「きみが救われたいと願う理由を言ってくれ」、と切り返されそうな。
・・・けれど人は救いを求めていて、おそらくは人の先を越して救われようと懸命に努力をするほうが、人としての道にかなっているし、本能にもかなっている。
「その本能こそが大怪獣である」、と切り返されそうな。
自ら救いを求めることは罪のように思われる、私が救われなければならない理由なんてどこにもないようにも思われる、むしろ救われてはいけないようにさえ思われる。シモーヌとグノーシス主義は非常に近い位置にありながら根本的なところで限りなく遠い。
シモーヌ・ヴェイユは３４歳でこの世を去った。
レヴィ＝ストロースより３年遅く生まれた彼女が、ナグ・ハマディ文書や死海写本の発見を待たずに夭折したことはこの現代というおかしな時代にとって、大いなる悲惨であった、と思う。
・・・いったい彼女はヤコブとどのような対話を交わしたであろうか。
