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----------2005年04月10日(日) 妥協点は
「そして、あなたの言葉は豊かです。しかし、あなたが私たちに向かって話す言葉は、この世に対して皮肉で軽蔑的です。かれらは（それを）理解できないのです。とすれば、どうやって私たちは（彼らのもとに）行って、彼らに宣べ伝えることができるのでしょうか、−私たちはこの世（で）認められて（いない）のです。」
（「ナグ・ハマディ文書�契盒機�書簡」所収「闘技者トマスの書」／岩波書店）
全四冊で出版されているナグ・ハマディ文書の中で私が一番よく読んだのがこの第三分冊、そうして一番「グノーシス主義らしい」のがこの第三分冊に収められている「魂の解明」であり、「闘技者トマスの書」であり、「雷・全きヌース」、「真正な教え」である、と思う。
そんな彼らの教えはまさに、「この世に対して皮肉で軽蔑的」であり、傲慢で、利己的で、そうして青臭い。自分たちこそは選ばれた者、知識を、認識を有する者、特別な、特殊な存在であると自負し、常に高みから衆生を見下ろしてあざ笑っては、悦に入っている。この選民思想こそがグノーシス主義の衰退の原因であった、という一般論は確かに正しい。
そこには愛がなく、赦しもなく、癒しもなく、花も、鳥も、歌もなく、風もなく、水もない。荒れ果てた砂漠の、切り立った岩の上で、「真理」を知ったとしてそれがいったい何の役に立つだろう？
キリスト教がまだ若かった頃に隆盛をみたグノーシス主義はやはりそれじたい「若い」思想だと思う。いつか丹生谷先生が「現代思想」に書いていた「老いのグノーシス」、性急でない、緩慢な世界否定というものの意味が、最近少しずつだけど分かってきたような気がする。
尻尾なんか振りたくない。
けれど「孤高の真理」なんかクソ喰らえだと思う。
where is the room for compromise？
