乱気流・無事着陸
ただ聞いてみたかったんだよね。
私も平気だった、最初は。
地図を開いて、住んでいた地域を見て
この道、この建物、この店。
そして蘇ってきた。
あのとき、どんなふうに暮らしていたか。
あのとき、どれだけ無気力なまま生きていたか。
駅の近くじゃ暮らせないって聞いたよ。
前も同じことを言ったよ。
言ったときの嘲るような口調まで思い出したよ。
どこに行くにも、何をしたくても一人ではできなかった。
話しているうちに、あのとき以前の場所の終わりまで
蘇ってきたよ。
一人で夕食を取りたくなかった。
人がいても、たくさんの場所があっても
私の傍に一人いてくれる人を欲した。
どんどん蘇ってきた。
久しぶりに声をあげて泣いた。
嗚咽がおさまらない。
そして、吐いた。
まだ私はダメなんだよ。
蘇って来る。
去年一昨年のことが記憶の底に沈んで
生きることを楽しむようになったのに。
ほんの少しのきっかけで、ダメになる。
電話越しの私の変化に戸惑うでしょう。
どうにも止まらなかった。
ここに来てよかったね。
もう大丈夫。
これからは。
沈むと這い上がるのに時間がかかる。
性急にそんなことを言われても、ついていけない。
だから言葉を失い嗚咽を漏らす。
太陽を久しぶりに見たときの喜びを忘れない。
太陽があんなにまぶしいことを忘れていた。
そんな沈んだ曇天の下で暮らしてたよ。
電話を切って、呼吸を整え時計を見たら零時を過ぎていた。
今日はもう何もしないで休んだほうがいい。
そう彼は言ったけど、思い出した。
20年ぶりに聴こうと、ラジオを出して準備していた。
城達也さんの声はもう聴けないけれど好きだった番組。
『JET STREAM』
伊武雅刀さんの声を聞くと
「俺は人間が嫌いだ」のフレーズを思い出す。
FM大阪で知った番組を、今FM東京で聴いている。
家族が寝静まった頃、音量を絞ったステレオの
スピーカーに耳を当てて、城さんの深い声に聞き惚れていた
10代の私が浮かんでくる。
穏やかな気持ちで眠れそう。
ありがとう、fnikkiさん。
2005年04月04日(月)
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