いってらっしゃい
見送りのホーム。
駅員さんが後ろに下がるように指示した。
遠くの車両で、女性が指示に従わない。
何度警笛を鳴らしても、彼女は下がろうとしない。
別れを惜しんで、発車させたくない気持ちが伝わってくる。
私は何度も行ってらっしゃいと彼に告げる。
だけど、どんな顔で見送ればいいかわからなくなる。
私も彼も、発車するまでの時間を持て余してしまう。
だから新幹線の発車は、すばやくていい。

部屋に入ると彼の残り香がある。
体臭がほとんどないのに、彼の存在を感じる。
私も彼も、ずっと離れなかった。
私が台所に立つと、彼が横に立つ。
彼が仕事をしていると、私は横に座る。

後ろから抱きしめられる。
寄り添って眠る。
彼を感じながら熟睡する。
いつものこと、前から同じ。
彼の傍で熟睡できる自分を、再確認する。


2005年03月16日(水)

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