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2005年10月28日(金)
月末になると食事会があります。 この食事会の有り難味を本来は理解しなくてはならない。解かっています。 売り上げが目標に届いたと言う事なのですから。 社員になった時から、異常な売り上げ予算の増加でしたが、その異常をやってのけている鬼さんの手腕はすごいものがあります。
しかし、心からそれを祝える雰囲気がこの食事会に無い。 少なくとも、つばさには緊張しかない。 鬼さんはつばさにはかまいません。だからもう少し安心していいのかもしれませんが、油断は大敵なのです。
今日は六本木の「くろひつじ」でジンギスカンです。 前回のジンギスカンで味をしめて、鬼さんは先輩と渡り歩いたようですが、つばさはこの店は自分の舌に合わないと思いました。 肉も神威の方が美味しいし、たれに到っては、このたれが本当に美味しいのかも解かりません。逆にどこが美味しいんだろう、不味いじゃないかとさえ思います。 自分の舌がバカなのか、緊張し過ぎて味覚がなくなっているのかもちろん区別は付きません。
しかし、恐れていた事は起きました。 別の人の身にです。 つばさの向かいで、同じ七輪をつついていたオタク営業君は、みんなが食べ終わる頃にも肉を追加して食べていました。 つばさも、まだ満足していなかったので頼みたいくらいでしたが、鬼さんが食べるのを止める気配が見えたので用心していました。
業務上の食事なので上司がスピーチでシメを行なう事は当然の事で、それ自体に驚くはずもありませんでしたが、残したら払わせると言う檄が飛んだので、彼だけが食べ続けている状態になりました。 野菜も残さず食べろと指示が出て、つばさはもやしを手伝っていました。 きれいに散らかさず食べろと言う指示が出た時にはさすがに目の前を見て冷や汗が出ました。 つばさは散らかさない食事も散らかすところがあるので(品の無い40代だな)、当然ジンギスカンなので、若干散らかりが目立ちました。 こそこそとテーブルを片付けながらもやしを食べ続けました。
鬼さんは終いに近づくタイミングで追加肉を頼んだ事、それゆえに終わるべきタイミングで終われなかった事を「油断」と位置づけ、食事ひとつも気を抜くんじゃないよと言い渡した後に、ついに彼に全員分払うように命じました。 オタク君の顔面の筋肉が引き攣るのが解かりました。 微笑みの貴公子が巻き添えを食ってと言うか、サポートさせられ、2人で割り勘と言う状態です。
つばさには解かります。あれは金を惜しんでの引き攣りではありません。怒ったのです。 つばさには若干鬼さんの制裁の意味が解かります。 恐らく、それは恐らくですが、彼の業務のやり方に、何か問題があったのです。 業務がその人の心から派生すると言う事はつばさにも理解できています。 気を引き締めるように、どんな時も気を緩めるなと言うのがこの制裁の意味です。 しかし、つばさはこの制裁のやり方が大嫌いです。 特に愛人だらけ(謎)で給料日から2日も過ぎると給料が全部無くなっている様な状態のつばさは、この制裁を「はい」とは言えません。
命の次に大事な金だから罰金にするのか、罰金では堪えないから全部負担させるのか、お金の苦労を知らない連中が揃っているのか、理解ができません。 しかも、他の女性二人が清算の間、当然の事のように振舞っている事もいやでした。 オタク君は、「青二才の負担に比べれば」と笑っていました。 かつてこの方法で青二才は10万負担させられたと小耳に挟んだ事があります。 しかし、その場は笑って凌ぐしかないからオタク君はそうコメントしただけでしょう。
恐らくこの制裁で彼も退職を決意したに違いありません。
先輩の話では、この制裁は企業の中では割と普通に行なわれると言う事でした。 いや、入社してこの会社で経験したと言ったでしょうか。もうよく覚えていません。
お金に苦労しているつばさには、この制裁が肝に入るとは到底思えないのですが……。 刑罰で物事を止める習慣は、よくない刷り込みだと思います。 感謝の気持ちで行ないを改めると言う事には結びつかないと思います。
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