チフネの日記
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昼寝をする為、俺はいつものように屋上に来ていた。 ぽかぽかした陽射しの中での昼寝は、至福の時間といっていい。 ここのところ、ほぼ毎日俺は屋上に足を運んでいた。 テニスバッグを枕代わりにして、体を横たえる。 時間にしてコンマ二秒で眠りにつけるが、今日は違っていた。
ばさっばさっと羽音がどこからか聞える。 音はどうやらここから死角になってみえないところから、聞えているようだ。 無視を決めて眠ろうかと思ったが、ずっとあんな音がしていたら気になってしかたない。 立ちあがって、それに近付く。
「鳩か」
懸命に羽を動かす鳩が、そこにいた。 「どうしたんだ?」 動かすだけで飛び立とうとしない鳩の体を捕まえてみる。 逃れようと暴れるが、慎重に押さえ込む。 よく注意すると羽のところに枝のようなものがささっていた。
これ、抜いちゃってもいいかな。 鳥を飼った経験がないから、どうしたら良いのかわからない。 だけど刺さったままにしておくのも、可哀想だ。 しかし抜いた後、消毒とかしなくていいのかな。 これは困ったぞ。 力を緩めた途端、鳩はまた羽を動かし始める。 「あ、こら」 飛べるはずもなく、俺の手から落ちて地面に激突しそうになる。 なんとか受け止めて、激突は回避した。 このままって訳にはいかない。 とりあえず箱か何かにいてといて、 授業が終わったらペットショップかどこかに持ち込むか。 それから怪我を見てもらおう。 「痛いだろうけど、我慢するんだぞ」 適当な箱あったかなと考える。 飛べないんだから大丈夫だよな。 鳩をとりあえず床において、教室で探して来ようと走り出した。
「あれ・・?」 ティッシュの空箱をもらい、屋上にまた駆け上がるとそこには人がいた。 「不二先輩」 青学テニス部NO2。 いつも笑みを絶やさない(俺に言わせれば得体の知れない笑顔)不二先輩が立っていた。 腕にはあの鳩を抱いている。 この人何やってんの? 傷付いた鳩を俺と同じように見付け、保護しようとしてるのかな。 疑問を口にする前に、不二先輩が話しかけてきた。 「やぁ、越前」 「どうも」 「お昼休みはここで休憩しているの?」 「最近は、いつも」 「そう。天気が良いし屋上は気持ち良いかもね」 ふぅっと空を仰ぎ、不二先輩は両手を広げた。 「あ、先輩」 その鳩は怪我しているのにと思った瞬間、羽ばたいて空へ飛んでった。 ぐんぐん遠くへ飛んで行く姿にあっけに取られ、小さくなるまで黙って見ていた。 風が柔らかく吹いて、俺の髪と先輩の髪を揺らす。 そしてハッと我に返る。 「先輩!あの鳩、怪我してましたよね?見ました!?」 たしかに枝が刺さっていた。抜いたとしても、すぐに飛べそうなものじゃない。 幻じゃないことを確認する為、先輩に詰め寄る。 「怪我?ああ、大したものじゃなかったけどね」 「そんな・・飛べるような感じじゃなかった」 「だったらもう治ったんじゃない?」 「え?」 真面目な顔をしている不二先輩に、俺の思考が一瞬飛ぶ。 本気でそれ言っているわけ? 「それじゃ僕は教室に戻るから。ごゆっくり」 呆然としている俺を置き去りにして、先輩は屋上を後にした。 そんな、そんなハズない。 ティッシュの空箱を握り締め、俺は自分の見たことが夢じゃないと頷いた。 だったら不二先輩が嘘をついてる? 嘘を付く理由なんて・・・ないけど。
部活の時間が始まっても、昼休みのことばかり考えてて不二先輩をずっと目で追っていた。 俺の視線に気付いているはずなのに、先輩は知らん顔してこちらを振り返りもしない。 あくまで無視を決め込むつもりか。にゃろう。 「おチビー、今日はなんだか不二に熱い視線送っているねん」 がしっと後ろから菊丸先輩が抱き付いて来た。重い・・・。 「先輩、邪魔」 「ひどいー。おチビと仲良くやりたいだけなのに」 「だったらどいて下さい」 ちぇっとか言いながらようやく、背中が軽くなる。おんぶおばけめ。 「でー、不二を見てる理由は?まだ聞いてないけど」 面白そうな顔をしている菊丸先輩に、やっかいな奴に感付かれたと帽子を被り直す。 待てよ。菊丸先輩と不二先輩は同じクラスだったよな。 仲も良いし。ちょっとだけ聞いてみるか。 「ねぇ、先輩」 「ほいほーい」 「不二先輩って理由もなく嘘を付く人っすか?」 「はい?」 意味がわからないと菊丸先輩は目をぱちくりさせている。 「こっちが事実を言っても、違うって言えちゃう人?」 「んー、おチビが言ってるのがどういう状況かわからないけど。 人を担いだりはするね。俺なんてさー、もう同じクラスになってから大変なんだから!」 そこから苦労話が始まって、部長が注意するまで延々聞かされた。 ふぅん、やっぱりさっきのは嘘か。 あれ?だけどそうしたら鳩が怪我してたのは事実だってことだよな? それなのに飛んでいったのは、どうして? ちらっと不二先輩の方を見たら、ちょうど向こうもこちらを向いてて慌てて横を向いた。 なんだよ、こっちがこそこそしてるみたいで気分悪っ。
まさかあそこで越前が来るとは思わなかった。 肝心なところは見られていないけど、彼はどうやら疑問を抱いているようだ。 まずいな・・・。 露骨な視線を感じて、僕はこの先どうごまかし続けようか考えた。
王子はこのまま不二に興味を持ってはまっていくという展開で。 アニメの不二・天使を見て思いついた小ネタでした。 不二の正体天使・・・吹き出しそうになるのは何故。
チフネ
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