| 2021年12月04日(土) |
母は確かに私を産んだ |
陽射しには恵まれていたけれど風が強く寒い一日だった。
子供は風の子。孫たちは自転車で遊びに行く。
ひゅるひゅると風の音。転びはしないかと気がかりな午後だった。
昨夜は母の夢を見る。綺麗にお化粧をした母。
喫茶店のような処で二人でコーヒーを飲んでいた。
「お金はないよ」と母が言うので「大丈夫、私が払うから」と。
母は先に店を出て行った。すぐに後を追って行ったのだけれど
母はタクシーで帰ると言う。道路には冷たい風が吹いていて
母の背中が小刻みに震えている。ようく見ると母は裸足だった。
夢だとわかっていてもなぜか切なさが込み上げて来る。
「ここで待っていて」私は車椅子を押していた。
母を載せたけれどそこはもう道路ではなく険しい崖の坂道だった。
坂を越えられない。何度も押すけれど車椅子はびくとも動かないのだ。
そこで目が覚めた。そうして涙ぐんでいる自分に気づく。
先日美容院へ連れて行った時に母が話していたことを思い出した。
「一条さん」のお祭りに私を背負って行ったことがあるのだと言う。
一条大祭は11月だからおそらく私はまだ一歳になっていない。
銘仙の着物で作った「ねんねこ」を着て下駄を履いていたそうだ。
もちろん私が憶えているはずもない事を母は懐かしそうに話してくれた。
母は確かに私を産んだのだ。18歳の若さで母になったのだ。
その事実を私は遠ざけようとしていたのかもしれない。
憎んでみたり恨んでみたりそれがどれほど愚かなことかと気づかすに。
母の罪は一生消えないとつい昨日までそう思っていたような気がする。
13歳の少女は65歳になった。
どれほどの険しい坂道もきっと乗り越えられるのではないだろうか。
|