| 2021年05月04日(火) |
しがみつくような郷愁 |
早いもので5月も4日。明日はもう「立夏」であった。
風は春を忘れようとしているかのように吹き抜けていく。
思い出してはいけないのだろうかと風に問うてみる。
「過ぎ去る」という言葉はなんとなくせつないものだ。
川仕事の目処が立たず今日はぶらりと出掛けてみることに。
「みどりの日」だから新緑が見たいねと意気投合する。
コロナ禍の事、一切どこにも立ち寄らないと決めて
あらかじめ近所のお店でお弁当を買い求め出掛けた。
私の生まれ故郷でもある西土佐へと車を走らす。
途中から林道の峠を越え「藤の川」という地区に行ってみることに。
子供の頃に一度だけ父と言った事があり懐かしい地名だった。
それがすごい山道。獣道と言っても良いほどの酷道が続く。
まるで「ぽつんと一軒家」みたいでどきどきはらはらしていた。
ガードレールのない細い道は枯草に埋もれていて
落石もあったりでスリルは満点と言ったところだろう。
じいちゃんは若い頃この道をタンクローリーで走ったそうで
それは得意気に話すものだから面白く楽しくもあった。
その後転職してからはコンクリートミキサー車でも走ったそう。
「すごいね、すごいね」と言うと悦に入った顔をする。
やっと峠を越えると「藤の川」の集落が見え始める。
ポツンと一軒家どころではなくたくさんの民家におどろくばかり。
藤の川から西土佐へ抜ける道は快適なドライブコースだった。
四万十川の支流だと思われる小さな川に新緑が映える。
藤の花もあちらこちらに見られ、だから「藤の川」なのかと思った。
西土佐ではじいちゃんが私の願いを聞き入れてくれて
生まれ育った家があった場所まで連れて行ってくれた。
営林署の官舎があった場所で今はすっかり更地になっているけれど
坂道や石段は昔のままに残っていて懐かしさが込み上げて来る。
その坂道を上ってみる。そうして我が家があった場所まで歩いた。
記憶の底に見覚えのある裏山。確かにここだったとはっきりとわかる。
ブロック塀に絡みつく蔦までも大切な思い出に思えたのだった。
ふともう最後かもしれないとしがみつくような郷愁。
振り払う事はするまい。きっと死ぬまで忘れることはないだろう。
「ありがとうね」とじいちゃんに言ったら「おう!」と微笑む。
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