晴れのち曇り。朝の寒さもつかの間のことで日中は暖かくなる。
職場の栴檀の木の実がすっかり色づき青空に映える。
つい先日まではオリーブ色だったのが黄金色に変わり
まるで空に宝石を散りばめたように見えるのだった。
木の実って好きだなとおもう。なんだか木の命のように感じる。
あやちゃんマラソン大会の日。応援に行きたかったけれど行けず。
娘も仕事が休めないそうでじいちゃんも川仕事だった。
「だいじょうぶ、がんばろうね」と送り出した朝のこと。
夕食時にあやちゃんがぽつりと寂しそうに呟く。
「おうえんに来ていないのあやだけだった」と。
でもいっしょうけんめいに最後までがんばって走ったのだそうだ。
そんな健気な言葉にほっと胸を撫で下ろしながら
可哀想な事をしたなととても悔やまれたのだった。
仕事の途中で抜け出すことも可能だったのに
「まあいいか」とあえてそれをしなかったのだから。
来年にはきっと応援に行こう。ゆびきりげんまんしようね。
ふとマラソンが大の苦手だった子供の頃を思い出す。
沿道に母の姿を見た記憶がなかった。
それが当たり前の時代だったのかもしれない。
ただ走り終えた後の「あめ湯」がとても美味しかったことを憶えている。
高校時代には仮病を使ってずる休みをした。
それがバレたのかどうだか後日数人でコースを走らされた。
「おまえらみんな赤点だぞ」と確か教師は竹刀を持っていたような。
あの時の辛かったこと。ほんとうにぶっ倒れそうに苦しかった。
持久力は今もない。ただ生き永らえることだけが私の持久走だ。
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