| 2012年02月12日(日) |
「キレイじゃない」ヒロイン――『レインツリーの国』(新潮社・有川浩/著) |
作者である有川浩氏は自他共に認める「恋愛小説家」である。もともとライトノベル出身ということもあり、文章、特に会話文が軽妙で、主役格のキャラクター像は漫画のような、小気味の良い、誰にでも好かれるような性格を持っていることが多い。
有川浩氏の『レインツリーの国』のヒロインであるひとみは聴覚に問題を抱えた女性だ。ただ、それだけではない。 性格がひねくれているわけではないが、コンプレックスをコンプレックスとして抱えてしまっており、扱いが非常に面倒くさいのだ。特別扱いや同情はしてほしくない、だが、気を使われないと辛く傷つく。無意識に自分への扱いで、人を判断している腹黒さも見受けられる。 “「キレイな人々」としては書くまい”と後書きで著者も述べているように、読む人みんなを虜にするようなヒロインではなかったが、障害を抱える人の心の問題を浮き彫りにしたキャラクターだった。
筆者にとって、良作の条件の一つは「読者の思考を呼び覚ますこと」だと思っている。「自分だったらどうするだろう?」「こういう場合はどう考えるのだろう?」と時々ページを手繰るのをやめて考えてしまうこの作品は、筆者にとってまぎれもなく良作であった。
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