TENSEI塵語

2008年12月30日(火) 平和が遠い、、

年末の挨拶「よいお年をお迎えください」も、
年始の挨拶「よい年でありますように」もしらじらしくなった。
自分のまわりはとりあえずいつもと変わらず平穏無事にしても、
どう見ても悪いことだらけの世情ではないか。

弱肉強食の経済政策を推し進めてきた結果として、
大量の失業者、宿無し人が出て、とてもよい年は迎えられそうにない。
「負け組だろ。自己責任だよ。勝ちゃよかったんだ」
という、K元首相の声が聞こえるような気がする。
非正規社員の解雇問題について、与党があまり熱心でなかったのは、
こういう意識が蔓延しているからではないのか、と思ってしまう。
低賃金で企業の儲けを上げるために雇われた人たちだから、
おそらく蓄えなんてほとんどないのだろう。
構造改革は国内を(というかアメリカまで含んで)戦争状態にする、
などとあのころ直感的に思って、ぼろくそに批判したものだが、
大企業の経営陣は大儲けでほくほくの状態が続いたかもしれない、
その裏での犠牲者は、この年末の失業者たちだけでなかった。


中東には、新年への思いというのはないのだろうか?
イスラエルの空爆による死者は350人ほどになり、
イスラエルはハマスを攻撃しているようだけれど、
民間人の死者も数十人に及んでいるそうだ(負傷者はその何倍か?)。
さらに地上戦の準備も着々と進めているという。

ハマスもイスラエルに攻撃しているが、
そのロケット弾での死者は今のところ1名。
B29に対して竹槍訓練していた戦時中の日本ほどではないにしても、
こんなに戦力が違うのになぜ何日も前から攻撃を仕掛けていたのだろう?
(疑問だらけのパレスチナ問題についてはまたこの次だ)

空爆に踏み切った理由として、新聞に書かれてあった第一のものが、
来年2月の総選挙で、劣勢の与党が巻き返しを計るため。。
選挙で勝つために人を殺すのか、と我々は思ってしまうが、
和平推進派の現与党よりも強硬派に支持が集まっているのだそうだ。
アメリカの和平工作をはねつける意味もあるとかないとか。。
つまりはこれも、よい年を迎えたい、の現れなんだろうか?
(ガザ地区の庶民にとってはとんでもないことだけど、、)
また、昨夜読んだネットニュースの中には、
市場はこの事態を歓迎している、なんてのもあって、、、

宮内勝典氏の海亀通信に、現地からの声が転載されていた。
http://pws.prserv.net/umigame/diary9.htm

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       ガザ空爆 現地からの声(第2報)

         【転送・転載 歓迎】

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空爆のガザから(12・27夜)  I.S.

日本の皆さんが私たちの状況に関心を持ってくれていることに感謝します。

今日起こったことは、ハマスがイスラエルの反応を見誤ったことのツケを、関係のない市民が払わされたことに他ならないのです。包囲され、物資の不足に悩まされながらも、私たちは停戦のおかげでイスラエル軍の攻撃だけは心配しないで済んできましたが、ハマスなどのグループは、半年の停戦の結果に満足していなかったのです。そして、停戦の失効を宣言してロケット攻撃を再開し、イスラエルがこうした過剰な攻撃を始めたのです。

呆然とした一日でした。11時30分イスラエル軍はガザの警察本部を攻撃しました。そこでは、ちょうど警察士官の卒業式が開かれていました。一瞬にして大勢の警官と警察トップのタウフィーク・ジャビール将軍が殺されました。 いま、治安部隊と警察は、ハマスのメンバーで占められていますから、ガザ中で行われた攻撃の格好の標的とされたのです。10分間に100発のミサイルが使われたそうです。

私自身も他の多くの人と同じように、やり場のない感情を抱えています。ハマスは市民を守ることもできないし、イスラエルとの闘争に対する知恵ももちあわせていないのです。一方、アッバス大統領も市民をハマスやイスラエルから守ることはできないし、エジプトもアラブ諸国も同じです。だから、ガザの一 般人が犠牲になっているのです。私たちは、自分たちが孤立し、イスラエルによる犠牲者の列に加わっていると感じています。イスラエルは今日の爆撃をまだ端緒にすぎないといっているのですから。

医療機関の発表によれば、死者は200人を超え、50人以上が重体。350人以上の負傷者といっています。いま夜の8時ですが、今後も爆撃があるかもしれません。

ガザでは数時間電気が来たと思うと、その後数日は停電が続き、燃料代わりのケロシン油を探すのにみな血眼です。何時間もパン屋の前に並び、銀行から預金を引き出すこともできない状態が続いています。暗闇でどう過ごすか? 必要な薬をどうやったら入手できるのか? 私たちは生き延びるためにだけ頭を使っています。日々の生活そのものが悪夢のようです。

私は、今晩、家でじっとしていることができませんでした。暗闇のなか、赤ん坊は泣き続け、母が停電のなかで、明日のパンをどうしようと叫んでいます。それに耐えられず街のインターネットカフェに来てしまいました。ニュースを見続け、何か希望の糧になるものはないか?と探しています。



2008年12月29日(月) 首相暗殺事件の容疑者の物語

第21回山本周五郎賞受賞
第5回本屋大賞受賞
'09 年度「ミステリが読みたい」第1位
'09 年度「このミステリがすごい」第1位、、4冠

・・・という宣伝文句に負けて、
伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」を読んだ。
首相が暗殺され、その容疑者に仕立てられた青柳雅治の逃走劇。
何が何だかさっぱりわからないままに、
国家の反逆者として追われる身となる恐ろしさ。。

前置きが長くて、100ページほど読まないと逃走劇は始まらないし、
回想シーンが何度も現れて、物語の進行がストップすることが多いし、
途中まではちょっと読みにくいな、、と思いつつ、、だったが、
だんだんと回想シーンの意味があちこちに結びついて、
最初は邪魔くさく思われた回想シーンもちょっと楽しみになってきた。

先日の「グレイヴディッガー」もそうだったけど、
国家権力の介入する捜査の恐ろしさを感じさせられた。
雅治をいったん捕らえた警察庁の佐々木はこう冷ややかに説得する。
「君に今できる唯一最善のことは、自首をし、すべてを認めることだ。
 私たちは、君がやったことをわかっている。
 だから、君はそれを認めればいい。
 そうすれば、おそらく、君も、君の家族も(友人、知人も)
 被害は最小限で済む。
 怖がることはない。私たちに任せれば、大丈夫だ」

何もやってないのに、こんな風に言われたら混乱するだろうなぁ。。
こんなことが実際あるのかどうかは、体験してないから知らないけど、
こんな風にしてでっちあげられたような話はいくつか聞いたことがある。
この場合は、早々と解決して手柄をあげたいからか、
最初からでっちあげとわかってるから、自首させるしかないからか。。


雅治の父親がTVカメラに囲まれて話す場面に泣かされた。
(痴漢を見つけると駅のホームに引き出して馬乗りになって殴る
 ような〈正義の人〉である)
「お前ら、雅治のことをどれだけ知ってるんだ?
 俺は生まれたときから知ってるぞ」から始まる。
「いいか、俺は信じたいんじゃない、知ってんだよ。
 俺は知ってんだ。あいつは犯人じゃねえよ」
取り巻くレポーターたちは大騒ぎ。。。
マスコミは、犯人は雅治でなきゃいかん的に報道しまくっているのだ。

「正義の味方のお前たち、本当に雅治が犯人だと信じてるなら、
 賭けてみろ。金じゃねえぞ。
 何か自分の人生にとって大事なものを賭けろ。
 お前たちは今、それだけのことをやっているんだ。
 俺たちの人生を、勢いだけで潰す気だ。
 自分の仕事が他人の人生を台無しにするのかもしれねえんだったら、
 覚悟がいるんだよ」
レポーターたちはますます大騒ぎ。。
そして、カメラに向かって雅治に呼びかける。
「こっちはどうにかするから。お前もどうにか頑張れや。
 まあ、、、ちゃっちゃと逃げろ」


結局、雅治は逃げたままで終わり、真相は何もわからず、
不幸な結末の物語なのだが、逃げられただけでもまだましな方、、、
しかし、ラストシーンは、さりげない「たいへんよくできました」の
清涼な幕切れ、、、おみごと!!
元恋人晴子と雅治の、それぞれの思い出の中での交流劇の、仕上げだ。


読み終えてから、第2・3部を読み返したらおもしろかった。
特に、第3部の「事件から20年後」のレポートは、
今の日本の政局や、アメリカ大統領暗殺の懸念などを重ね合わせると、
いろいろな想像ができておもしろかった。
せっかく民主党がやっとこさ政権をとっても、
若手の対抗馬が突然出て、首相の座を爺さんから奪うかも、、とか、
与党が支持母体の権益(道路財源とか?)をおろそかにすると、
どんな目に合わされるかわからないものだなぁ、、とか、、いろいろ。

事件がでかく深刻なわりに、軽い調子で読むことができ、
軽いわりには随所になかなか鋭い社会批評が盛り込まれていた。



2008年12月27日(土) 「I Believe in Father Christmas」

サラ・ブライトマンのアルバム「冬のシンフォニー」を聞いているうちに、
もっとも気に入ったのが、この歌。

間奏に耳慣れたクラシックの曲が使われていて、
これ何だったかなぁ、、となかなか思い出せないながらも、
歌とその間奏が3度繰り返されるたびに、ずんずん盛り上がる。

これはこの盤だけの編曲だろうか、と思って検索してみたら、
YouTube でグレッグ・レイクのとU2の演奏が聞けた。
(他にもあるようだが、とりあえずこの2つだけを聞いた)
グレッグ・レイクの時から、このクラシックの曲を使っていたようだ。
(なお、彼の映像には、戦争シーンが重ね合わされていた)

CDの解説によると、このアルバムの選曲の中で、
この曲と「きよしこの夜」を最初に決めたそうだ。


それにしても、この間奏の原曲、何だろう、、?
検索しても書いている人は見つからないし、
メロディーから検索することなんてできないし、、、
コダーイみたいな、、、「ハーリヤーノシュ」? と思って、
半信半疑聞いてみたけれど、ぜんぜん違っていた。

他にこんなメロディーを書くとしたら、、、プロコフィエフ?
ひょっとして「キージェ中尉」かも、、と思って聞いてみたら、
おーー、当たった! 4曲目の「トロイカ」だった。
10年ほど前に、小編成の吹奏楽曲に編曲しようと思った曲だ。

約1ヶ月間ほのかに続いていた疑問が、今やっと解消された。



2008年12月26日(金) 初雪?

今朝、はら、はら、、とかすかに雪が舞い降りて来ていた。
これがこの地の初雪と言うべきなのだろうか、、?
・・・今季はこれっきりだったりして。。

金華山のてっぺんの方だけうっすらと白くなっていたけれど、
雪だったのか霜だったのか定かでない。。

その、はら、はら、、はすぐに終わってやがて晴れたが、
1日中冷たい空気の中をわりと強い風が吹き続けて、
今季2度目の本格的な冬がやって来た、という感じだった。


こ、、こんな日に、これから名古屋まで忘年会に行かねばならんとは!
帰りは特に寒いだろうなぁ、、んー、、憂鬱。。
幹事によれば、どこもかしこも予約がいっぱいで、
やっとのことで確保したそうで、(そりゃそうだろうなぁ)
その苦労を思うとさぼるわけにもいかないし。。

・・・・・・・・・・

その忘年会の会場に2分遅れ(道間違えた)で着いたら、
メンバーみんな店に入らず、店の前に佇んでいる。
幹事がやっとの思いで見つけて予約を入れておいたのに、
店の手違いで予約がダブってしまったらしい。
店の方は一応席を用意してくれたそうだけど、
余りにも狭く、席の場所も悪い、ということで、
名古屋駅前にわりと通じた2人が別の店を探しているところだった。

まー、こんなことはもちろん初めてである。

1人は足で探しに行き、1人はケータイで次々問い合わせていた。
結局、足で探しに行った者がすぐ近くの居酒屋の
8人定員の穴倉のような個室を見つけて来たので、
そこに10人が入り込んで宴会をやった。
もう1人多かったら絶対無理! というぎりぎりの窮屈さ。。
しかし、両端もわりと近いので、一体感のある宴会になった。


名古屋まで出るのは実に億劫だけれど、このおかげで、
帰りに駅前のイルミネーションをゆっくり見物することができた。



2008年12月24日(水) X'mas ケーキにまつわる思い出

子どもたちがまだ小さかったころから始まって、
なーんとなく、クリスマスケーキの習慣は続いている。

毎年、通勤帰りにもっとも寄りやすい、
しかも地域で評判のよいケーキ屋に予約するのだが、
たいていはぎりぎりになっての予約なので、多くは売り切れ、
もっともオーソドックスなタイプのケーキを頼むことになる。
白い生クリームと苺のやつである。

で、今夜は、ますます甘みの抑えられたケーキに驚いたのだった。
年々甘みは抑えられ、ふわふわ感は増している。

・・で、子どものころの思い出に向かったわけだ。


私の子ども時代、ケーキは買うものではなかった。
父が外でどんな善人面をしていたのか知らないが、
クリスマスのころになると、2、3個から数個のケーキが届けられた。
今のような生クリームではなくてバタークリームのだったから、
多少日持ちがしたらしく、年末まで毎日あったりもした。

私は、歳をとった今となってはちょっとつらいかもしれない
あのタイプのケーキがあの頃は好きで、
大人になったら、冷淡な直線で切り分けられたケーキでなく、
丸ごとのままスプーンでさくさくすくって食べてみたい、と夢みていた。

その夢は、独り暮らしの時にも果たされなかった。
貧乏学生だったし、歳を食うにつれて甘さが苦手になっていたから。。

でも、今夜のケーキほどのほの甘さだったら、
丸ごと食べることも不可能ではないかもしれない、と思ったのだった。



2008年12月23日(火) 「英語で授業」が基本?

そりゃあ、いいことだとは思いますが、、現実は?

文科省が発表した指導要領改訂案のひとつで、
「英語の授業は英語で行うのが基本」と明記したそうだが、
いつもどおり、言うは易し、言うだけなら誰でもできる、の感想である。
現場知らずが、現場の改善はまったくしないで、
言うだけのことは言って大仕事を成し遂げたつもりでいるわけだ。
(今まで最大に顕著だったのが、「総合的学習の時間」というやつ。
 言うだけは言ってみたものの、何させたらいいのかはわからないので
 現場に丸投げしてしまった)

もちろん、優秀な生徒を集めた学校では、
それが可能とわかれば、英語での授業を行っているはずである。
しかし、「基本」と銘打つということは、、、?

中学校までの英語の成績が真ん中くらいかそのちょっと上のあたりの
生徒でも、中学の基本単語も覚えきれずに高校に入っている。
その実態をもうちょっと調べてみると、単語の発音もおぼつかない。

つまり、ろくに読まず、ろくに発音せずに来てしまったらしい。
一斉音読の時間が仮に作られても、全員が読むとは限らない。
授業中、教師がひとりずつセンテンスを言う機会を与えても、
40人もいたら、1時限の授業内に何度機会があるか、、、
せいぜい2回前後だろう。
単語や構文を何度も書かせられたりしても、
発音しながらでなくて、音と関わりなく文字だけを写し続ける。。。

ましてや、授業崩壊している中学校が少なくないのだ。
音読だの発音指導だの、それどころの騒ぎでなかったりする。。

しかも、我々の小学校時代に割と盛んだったローマ字学習は、
最近はあまり行われなくなっているから、
ますますアルファベットの世界を遠のかせている。。


文科省は、使える(会話ができる)英語教育を、という意図で、
「授業は英語で」と唱えたようだが、その前にすることがある。
それは、私が20年ほど前から切に願っていることで、
(私は外国語教師ではないけれど)
英語の授業を生徒8人くらいの単位でできるようにすることだ。
英語の時間には頻繁に英語のやりとりができる環境を整えることだ。

それには、英語の教師を今までの5倍ほど増員しなきゃいけないから、
お金がかかるのだけれど、一挙にやれとは言わない。
今までに徐々に行われていなければならなかった。
去年から、文科省が教員増の予算請求をしているけれど、
例えば、今回は1万5千人が半分に減らされたそうだけれど、
仮に全国で1万5千人増員しても、小学校1校あたりたった1人。
これも、何十年も前から地道に積み上げなきゃいけないことだった。

文科省の示す方策なんて、いつも後手後手に回った
付け焼き刃的な、無責任な方策に過ぎない。
言うことだけは立派かもしれないが、言うだけは誰でも言える、
そんな程度で、いっぱしに働いたつもりで、
高額の税金ふんだくられてはたまったもんじゃない。



2008年12月21日(日) IL DIVO のニューアルバム

2、3日前の朝日新聞にIL DIVO の記事が出てて、
それで、待っていたニューアルバムがすでに出ていることを知った。
さっそくネットで注文しておいたのが、きょう届いた。

ひととおり聞いてみたけれど、んーー、、、
今までの3枚のアルバムに比べると、ちょっともの足りない気がする。
それは全く個人的な趣味の問題で、
1作目の「Regressa Mi」「Ti Amero」とか、
2作目の「Si Tu Me Amas」「Isabel」とか、
3作目の「Night in White Satin」「Come Primavera」みたいな
情緒の曲がほとんどなくて、どちらかというと少々夢幻的傾向。

それから、今まで彼らの歌が、手抜きなく盛り上がる作りだったのが、
どの歌もついつい聞きたくなってしまう魅力だったのだけれど、
作風を少し変えてしまったようだ。

しかし、インタビュー映像で話を聞くと、
彼らにとっては最高の、革命的な出来上がりらしい。
確かに、ハーモニーのバランスは以前より精緻になってる感じだけど。。

最初、この4人組の存在を知ったとき、
何だぃ? ダークダックスやボニージャックスみたいな奴らか?
男組にはあんまり興味ないしなぁ、、、と、
やめてちょ! みたいな気分だったのだけれど、
アマゾンのレビューを読むうちに試しに聴いてみたくなって、
ちょっと取り寄せて聴いてみて、びっくりしてしまった。
異質の声を集めたアンサンブルの表現力に。。。

サラ・ブライトマンもそうだけど、彼らに感じた魅力は、
どんな曲でも(たぶん私の興味を惹かないはずの曲でも)、
いい曲に聴かせてしまう、という妙味のためである。
・・というわけで、しばらくこのCDとつき合ってみるのは確かだ。

しかし、まだ、Within Temptation の呪縛から逃れていない。。
こちらは、歌唱力よりも、もう、曲自体がすばらしい。



2008年12月20日(土) 「ハムナプトラ」を見た

ずっと気になっていながら、億劫でなかなか見られなかった
「ハムナプトラ」の1作目を、今夜やっと見た。

もっと深刻な雰囲気と、息の詰まるようなアクションを想像していたが
何とコメディーだし、軽いノリで楽しんで見ることができた。
「インディージョーンズ」や「ダイハード」みたいに、
何でこれで死なないわけ?? なんてうんざりさせられるほど
ハラハラするシーンにつき合わされて疲れることもなかったし。。
仕事に疲れた週末の夜に気楽に見るのにちょうどよかった感じだ。
古代研究に熱心なあまり向こう見ずなヒロインのエヴリンがかわいいし。

もうひとつ、億劫だった理由は、ミイラ。。
ミイラがいくつも出てくるんだったらご免だよ、と思っていたけれど、
それほど不快感は感じさせられなかった。
確かに醜怪な姿をしてはいるんだけれど、、不思議な。。


さらにメイキング映像を見ていたら、
ミイラや虫のCGメイキングの苦労話に終始していて、
とても細かい配慮や研究をしているのに驚かされた。
10年前のCGなんだなぁ、、と思いつつも。。
ミイラのデザインを確定するまでの長い道のり、
動きを作る前の、筋肉の動きの精密な研究、
俳優の演技をもとにミイラに動きをつけていく過程。。。
・・そうなんだなぁ、、アニメーションとしてじゃなく、
実写の中に実写であるかのように入れなきゃいけないわけだから。。

映画の内容とは関係ないけど、このメイキングの締めくくりに、
CG制作の中心にいた人が言っていた言葉が印象に残った。

CGが発達すると俳優はいらなくなるかと言うとそれはありえない。
CGを極めるほど、俳優の演技の必要性を感じる。
思わぬ演技が生まれる、というのが人間の俳優の力だ。
無限の計算が可能なPCができない限り、
CGは人間の俳優の代わりなど永久にできない。
・・だいたいこんな内容の話だったが、実に納得できた。



2008年12月19日(金) 今年の四字熟語

去年初めて知ったスミセイの創作四字熟語を見るのを忘れてた。



窮々病院(救急病院)
  こりゃわかりやすい。

株式逃資(株式投資)
  株安で、投じた資金が逃げて行く。。

兄弟減価(兄弟喧嘩)
  リーマンブラザーズ・ショック。

暗増景気(クラサマスケーキ=クリスマスケーキ)
  四字熟語としては苦しいけど、うーむ、と納得。
  子どものころ母が、クリスマスはクルシミマスと言ってたのを
  ついでに思い出してしまった。


ちゃんと明るいのもあるぞ。

好投夢繋(荒唐無稽)
  夢を繋いだソフトボール。

四面魚歌(四面楚歌)
  魚歌、とはポニョの歌だそうだ(笑)
  微笑ましい。。


またよからぬ世相の反映に戻るけれど、、、

猪突猛親(猪突猛進)
  モンスター・ペアレント。まさにこんなイメージかも。。

酒込乗車(駆込乗車)
  居酒屋タクシー。

舌退多数(絶対多数)
  多くの閣僚が失言で辞めて行く。。

粉群憤騰(孤軍奮闘)
  小麦粉の暴騰。

回惜料理(懐石料理)
  もったいないから、と料理の使い回し。
  もったいない、は確かにそうだと思うんだけどね。。

聖火乱難(聖火ランナー)
  ほんとに、よくオリンピック無事に終わったものだ。
  その裏にさまざまな悲劇があったに違いないけれど。。

騒祭選挙(総裁選挙)
  投稿者(作者)はアメリカの大統領選を思って作ったそうだが、
  今年の自民党総裁選挙こそ、まさに「騒祭選」だったような。。


スミセイ創作四字熟語



2008年12月18日(木) またも警察小説に泣かされた

親から生きてても無駄なやつと罵られ、日常的に暴力をふるわれ、
ワルに徹していた八神が、唯一思いついた善行、、骨髄移植。
その移植手術に向かおうという時に、謎の人物たちに追いかけられ、
殺人容疑で警察にも手配され、四苦八苦の逃走劇を繰り広げる。。

ようやく移植手術の直前を迎えたラストのところで泣けてしまった。
「鏡に映る悪党面を眺めながら、
 自分が救うのはどんな女の子だろう? と考えた。
 幼稚園児だろうか? それとも小学生だろうか?
 よく笑う女の子だろうか? それとも泣き虫の女の子だろうか?
 たくさんの友だちに恵まれた優しい子だろうか?

 しばらく思いをめぐらせているうち、
 そんなことはどうでもいいと、八神は気づいた。
 その子が、親からちゃんと愛されているのであれば。。

 八神は洗面台に手をかけて跪き、腕の上に額を載せて祈り始めた。
 祈らずにはいられなかった。
 神さま、どうかその子を助けてください。
 移植を成功させてください。
 何も悪いことをしていない、小さな無垢の命を奪わないでください。

 何一つ報われることのなかった人生で、 
 初めて八神の心が希みだけで満たされた。
 自分だけの神、自分の善意が創り上げた神に向かって、 
 悪党は一心に祈りを捧げていた」

高野和明「グレイヴディッガー」。

この八神の逃走劇の裏には、公安出身代議士の黒い策謀あり、
その代議士に使われる公安の率いるカルト集団の恐怖あり、
彼らに恩人を殺された男の復讐劇あり、、で、
まとめておきたいのだが、もうタイムリミット。。。 (-_-)zzz



2008年12月17日(水) 失業者を守る一策

昨日は、もうひとつクローズアップされていたニュースがあった。
大分県の杵築市が、失業者を臨時職員として採用するという
臨時雇用対策に乗り出したという報道。。。
キャノンの人員削減で1200人の失業者がいるそうだ。

臨時職員としての採用は、1カ月限りで交代させ3月まで続けるそうで、
月額11万円程度の給料だそうだが、無策よりは。。。
また、寮からの退去を命じられた人には、宿泊施設等を提供。
また、農家などからの求人がある場合はその斡旋もするという。。


どこも厳しい財政の中での、ささやかな雇用対策なのだけれど、
中央の政治がぐずぐずしているさなかで、
昨夜書いた救急医療対策といい、この雇用対策といい。
何とかしよう、という思いを実現しているところに、
ついつい感動してしまったのだった。
政局操作・政争に明け暮れる2大政党にあきれ果ててるものだから。。

昨日、改めて驚いたのは、首相がまだ定額給付金を引っ込めてないこと。
あれ? まだこれでぐちゃぐちゃやってるの? って感じだった。
引っ込めたとは聞いてなかったけど、
まだ引きずっているってのは、何か不思議で。。。
何で世論に支持されない給付金にしがみついているのか、不明。
これのせいで第2次補正予算案も出せず、
雇用対策案も年明けまで持ち越されるのだという説もあるし。。

首相は、人員削減問題がバッと現れた時点で、
給付金に使おうとしていた2兆円を雇用対策に切り替えるべきだった。

それに、最近つくづく思うのは、道路財源についてなんだけど、
「健康で文化的な最低限度の生活」ができないか、脅かされてる人が、
量産されてる時代に、道路ちゃんのためのお金は渡さないぞー、と
抱え込んで譲ろうとしない道路族議員の心境がわからない。
道路建設のおかげで、失業者が解消できるならやってほしいけれど、
そんな雰囲気が微塵も伝わってこない。



2008年12月16日(火) 救急医療を守る一策

ニュースZERO が紹介していた一例である。
当の医療センターの院長が「まだ、これはここだけですから」
と言っていたから、唯一の例らしい。

鹿児島県の鹿屋市の医療センターは、
何年か前までは、救急の患者の多くを受け入れられなかった。
が、今ではすべての救急患者を受け入れているそうである。

その何年か前までは、外来のすべての患者を診ていた。
だから、救急の患者のためのスペースがなかった。

現院長が就任したとき、開業医らに訴えたそうである。
軽症患者を開業医の方で24時間診てほしい、
重症患者と救急患者は、医療センターで24時間・365日体制で
めんどうをみる。。

これが市の医師会にも受け入れられ、やがて市民にも理解され、
市民はまず開業医の所で診てもらうようになり、、
今では余裕をもって救急医療に対応できるようになっているそうだ。
かつては、外来の患者だけでも、帰宅が夜中の0時を回った医師が、
今は7時にいったん帰宅して自宅待機という形も取れるようになった。

最近よく聞こえて来る、受け入れ病院がなくて死亡する悲劇。。
鹿屋市の医療センターの院長は自分で行動したそうだが、
地域の実態はさまざまだろうから、行政が動くべきだろう。


これはこれでひとつ「希望」を感じさせられる話だと思うが、
最近問題になった、妊婦や未熟児のたらい回しの末の死、、、
あれは、産婦人科のベッド数の絶対数が足りない、という
問題ではなかっただろうか。。
つまり、少子化と言われているにもかかわらず、
産婦人科や小児科の医師や病院自体が足りない??

きょうのは、医療危機に対処する一策にすぎないのだろうけど、
ニュースZERO は明日も明後日も提言を続けるそうだ。



2008年12月15日(月) 陽射しが強い

今朝は、道路脇の気温表示はだいたい0度。
1箇所、マイナス1度のところもあった。
それから太陽が高くなるにつれて気温も上昇したのだが、
そんなに上昇したわけではない、10度を少し越える程度。。

最近、何か、例年感じなかったものを感じるのだが、、、
それは、空気はかなりひんやりしている日中でも、
陽射しがやけに強く感じられることだ。
冬の陽射しって、もうちょっとぼんやりした感じじゃなかったっけ?
陽射しだけは、10月ごろの陽射しを思わせる。

先週のいつだったか、陽のあたるところとあたらないところの
格差の大きさに驚いて、月では、、、という話を思い出したほどだ。
その時は、歩いていても、陽のあたっている背中側の熱さと、
陰になっている前側の冷んやりとの差を感じずにいられなかった。

明日もそんな天気になりそうだ。
朝の冷え込みは厳しくても、雪の兆しは皆無。。。



2008年12月14日(日) 買い渋り

スーパーに買い物に出かけて、最近つくづく思うのは、
買い物の嵩を気にするようになったこと。
レジ袋が有料になってから、
たいていエコバッグやら、有料の5円のレジ袋(再利用)を持って
買い物に行くわけだけれど、3つも4つも持って行かない。
だから、どうしても、買い控えするようになる。
嵩張るカップラーメンなどはもうほとんど買わなくなってしまったし。。
以前は2、3日分の材料を買ったりすることもあったのだが、
もう今はそんなこともできず、明日からまた、
実に渋ちんな娘のケチケチ買い物に委ねることになるわけだ。

レジ袋有料化が、エコのためなのか、店のためなのかはともかく、
消費面にいくらか影響を与えているのではないかと思うのだが。。

10年ほど前、粗大ゴミの処理がめんどうになった。

それまでは、年に2回、無料回収日があった。
いくつかたまった邪魔物を、すぐ近所の回収場所に出しておくだけで、
きれいさっぱりなくなった。

ところが、実にめんどうなシステムに変わってしまった。
まず、ウイークデーの日中に電話をしなきゃいけない。
電話をして、回収してもらう物品を説明しなきゃならない。
説明したら、それぞれの処置方法と料金を教えてくれるので、
その袋やらチケットやらを買いに行かなきゃならない。
多忙な勤務をしている者には、めんどうで億劫でしょうがない。
休日に電話できるのなら、まだかなり動きやすいんだけどね。。

そんなわけで、物が捨てにくくなった。
ゴミ減らせ、簡単に捨てるな、の道徳観からすれば、
それはいいことなのかも知れないけれど、捨てられないために
長年買い換えできないでいるものがいくつかある。

一方で消費を促す掛け声があり、
一方で消費を妨げる制度が増え、、なんてまた思ってしまった。



2008年12月12日(金) 〈誘惑〉にあって1カ月目

Within Temptation を聴き始めてほぼ1カ月経った。
「Silent Force」「Heart of Everything」の2アルバムを、
毎日1〜3回聴き続けている。
毎日聴こう、何回聴こうと決めてるわけじゃないが、
何となく聴きたくなって、再生ボタンを押してしまうのだ。
聞き飽きるどころか、ますます味わい深くなってきているところだ。
メロディーもオーケストラやコーラスやキーボードの使い方もだけれど、
このドラムスの作るリズムもとても好きになっている。

2000年のアルバム「Mother Earth」も3度ほど聞いたけれど、
これはそれほど感銘を受けなかった。
最初の3曲ほどは上の2枚のような感覚で聞き始めたが、
だんだん失速してしまう感じで、保留。。
それでファーストアルバムの「Enter」を手に入れるかどうか、
迷ってしまったままになっている。

同じジャンルらしいEpica の「Divine Conspiracy」も聞いたが、
この音楽は、私にはぜんぜん合わないようだ。
間を置いて3度聞いてみたが、心に入って来なかった。
3度目に、やっぱあまり聞きたくないな、、と思ってしまった。
なかなか凝った構成のアルバムらしいのだが。。

Leaves' Eyes の「Vinland Saga」もやはり3度ほど聞いた。
これは「Mother Earth」くらいのおもしろさは感じたかな?
女声ヴォーカルの声が単調なのが一番の難点かも。。
こちらは、しばし保留である。
保留というのは、今の本命の2枚に飽きたらまた聴いてみよう、
という意味である。



2008年12月11日(木) 人員削減しかないのか?

リストラという言葉は「解雇」を意味する言葉ではないのだけれど、
日本では「解雇」「クビ」の代わりに使われることしばしばなので、
9日の夕刊で「ビッグ3にリストラ義務」の見出しを見て読み始めた時、
議会が失業者を大量に産み出せ、と命じるわけ? と思ったのだが、
よくよく読むと、人員削減せよ、とだけ言っているわけではなさそうで、
さぁ、どういう形でリストラをやらせるのかな、と、
今後の成り行きを見守りたい気分になった。

そうしたら、翌日の朝刊のトップは、ソニーの人員削減計画である。
正社員8千人と、非正社員8千人を解雇する予定だと言う。
とりあえず、まず1社が早々に大量の人員削減を発表したわけだけど、
1社にとどまるはずがない。

最近すでにあちこちで解雇された非正規労働者たちが、
訴訟を起こしたり、労働組合を結成して抗議行動を起こしたりしている。
今クビになるというのは、たいへんなことである。
どこも賃金出費を減らしたがっているから、求人なんてしない、
解雇されてしまった後に希望が見えない。

先日、麻生首相が経済界の人たちを集めて、雇用促進を訴えていた。
しかし、売れなくなったら作るわけにもいかないだろうし、
仕事が減って遊ばせるしかなくなるとしたら、
賃金支払うわけにもいかないだろう。
雇用しろ、って言われてもねぇ、、、と企業側は思うだろう。

実際問題、企業の台所事情なんて私にはまったくわからない。
今までが儲けすぎていて、最近は普通になったんじゃないの?
という疑いさえ抱いている。
もしも、一挙に損が来たのだとしたら、
今まで余計な投資をして余計に儲けてた反動なんじゃないの?
なんていう疑いさえ抱いている。

いずれにしても、まず最初にすべきなのはクビ切りよりも、
企業幹部の節制だろう。
ビッグ3の社長たちが専用ジェット機の使用を非難されたり、
自分たちのボーナスを1ドルにするとか言ったりしていたが、
人件費を減らす第一は、社長はじめ幹部クラスの報酬を最低賃金に。
今までの貯えもあるだろうから、余裕で暮らして行けるでしょう。
それから、さまざまな無駄な経費を見直して。。。

その上で、さらに必要な分は、人員削減でなく、
ワークシェアリング的な解決ができないのかなぁ、と思う。

ソニーの人員削減計画は、全正社員16万人の10%の人数である。
(正社員だけの人数だったら5%である)
単純な言い方をすれば、40時間労働だったのを36時間労働にして、
(週5日労働を、週4日半の労働にして)給料を10%減らす。。
ついでに、サービス残業なんてものも解消してしまう。

事はそう単純じゃないだろうから、
実際どういう形になるのかわからないのだけれど、
一部の社員を放り出して地獄を見せるのでなく、
会社の危機はみんなで分け合って乗り越えよう、という発想で、
労働時間も給料もしばらくの間は分け合おう、という、、、
こういう考え方はいけないのだろうか?



2008年12月09日(火) 未知の世界を垣間見る

小説など読む楽しみのひとつは、
日ごろの自分の生活とは違った世界に入り込むこともあるのだけど、
「ストロベリー・ナイト」が見せてくれた世界は、強烈だった。
現実にあるとは思えず、しかし、
似たような仕組みのもの(モデル)が実際にあるかもしれず、
ひょっとしたら、こののんびり楽しんでいるインターネットの、
ほんの数クリック先に怖ろしい扉が待ってるかもしれず、、、
遠い世界のようで、すぐ近くの世界なのかも知れない。。


物語の事件は、傷だらけの変死体が見つかったことから始まる。
やがて、もう一体。
この2人の男の生前のつながりは見えて来ないが、
共通するのは、ある時期から並はずれて仕事に意欲的になったこと、
そして、毎月第2日曜日の夜に何か秘密がありそうだということ。。

姫川玲子の部下の大塚が、被害者とつきあいのあった田代から
被害者が口にしていたストロベリー・ナイトという言葉を聞きだした。
インターネットで検索するとそういうサイトが現れるわけでなく、
掲示板に、それについて噂が書き込まれていた。
殺人ショーの写真が公開されているサイトだという話である。
毎月第2日曜日の夜に。。

実は、そのサイトは、田代が先に見つけて被害者に教えたのだった。
田代はそのサイトを偶然見つけた。
リアルな殺人映像に興味をもち、
「これを生で見たいですか」のメッセージに
冗談半分で「はい」をクリックした。
それだけで、半月後に、黒い封筒の招待状が届いた。
切手も住所もない田代様だけの封筒だから直接郵便受けに入れたらしい。

・・怖ろしい話だ。
「はい」のボタンを押しただけで、住所・氏名をつきとめる。
さらに中には、田代の生年月日、本籍、勤め先、家族の名前、
そして、田代の顔写真まで入っている。
「間違いがないかお確かめください。間違いのない場合、
 ご本人であると判断して会員登録が完了します」
・・・ぞっとする話だ。

田代は行かなきゃ殺されると思って、ショーに出かけて行く。
入場料は10万円。
招待状を受け取った客は、それぞれの指定時刻に入って行く。
この入り口で、ひとりが生贄として捕らえられて、
その夜にステージで殺されるのだと言う。。

・・・読みながら、息が詰まるほど怖い話だった。
ちなみに、このストロベリー・ナイト・ショーの開催者は、
警視庁のキャリアの新入りだった、なんて話でもある。
その開催者(=犯人)が一緒に捜査に加わっているのだから、
玲子の部下の大塚は殺されるし、玲子自身も危険な目に遭うことになる。


さらに怖ろしかったのは、この、未知の心の世界である。
田代が語る。
「それに気づいたときは、そりゃ怖かったですよ。
 でもね、それでもまた行きたいと思いました。
 いや、むしろ強く欲するようになった。
 きょう、自分が舞台に上げられてしまうかもしれないと思っても、
 行かずにいられなくなりました。
 あの、無事会場入りできたときの安堵。
 自分がなったかも知れない、その生贄が、目の前で、
 ズタズタに引き裂かれて、血だるまになって殺される。
 それを見る、この上ない優越感。
 自分はきょうも生き残った。
 また明日から、少なくとも1ヶ月は生きられる。
 その、無上の喜び。
 自分の生が、惨たらしい死と隣り合わせなのだと実感する、
 その充実感。。。
 素晴らしいですよ。世界が拓けて見えるようになるんです」

何という異常な、、、作者も、この話を聞いている勝俣という刑事に
「完全に精神が破壊しているとしか思えない」役を与えている。
しかし、この異常な状況は確かに狂っているのだけれど、
私はつい、ここにハイデガーの「死への先駆的な覚悟」というような
懐かしい言葉を思い出して重ね合わせてしまった。



2008年12月08日(月) 警察小説に泣かされた

「半落ち」に次いで2回目かな?

誉田哲也(聞いたこともなかった)の「ストロベリー・ナイト」は、
全体的にはたいへん不快で怖ろしい話だった。
事件が実に猟奇的な連続殺人事件なのだし、
しかもそれが会員制の殺人ショーなのだし、
そのショーというのが、、、いやいや、この話はまたの機会にしよう。

しかし、この作品のちょうど真ん中あたり、
213〜228ページのあたりで、2度泣かされた。。。

ヒロインの、美人で勘の優れた警部補姫川玲子が、
作者のイメージの中で菜々子さまにキャスティングされているそうなので
ついつい私もそのつもりで読まされてしまったのだった。
この言葉遣いはちょっと、、?? というところもあったけれど、
大方は菜々子さまのイメージで読むことができた。
そうなると、ちょっと感情移入してしまうのかもしれない。。

その真ん中あたりで、捜査の物語からは少しの間離れる。
捜査本部が1日休暇となり、玲子が実家に戻って、
母親の入院のことから妹との諍いになり、玲子の過去の物語。。
結局は、玲子が警察官を志す動機の物語なのだが。。


玲子は高校時代に夜の公園でレイプに遭った。
「ただ自分がどうしようもなく汚れ、思い描いていた未来を
 失ってしまったという絶望だけが、玲子の心を占めていた。
 体の中に、あの便所裏の土が、一杯に詰まっている気がした」
しかもそれが自分だけの問題でなく、
刑事事件としての事実もつきつけられ、助けてくれた警官をさえ憎む。

病室には毎日佐田倫子という巡査が訪ねて来た。
いろいろなお土産を持参し、いろいろなことを話しかける。
事件のことはまったく触れずに、毎日通ってくる。
玲子はなかなか心を開かないのだが、通ってきて話しかける。
しばらく経ったころ、捜査への協力を頼んだりもするのだが、
玲子の拒否であっさりとそれを尊重し、また通い続ける。。。


玲子の方が徐々に佐田に協力して事件と向き合おうと思い始めた時、
佐田は、このレイプ事件の犯人逮捕に際し、殉職。。。
その母親が玲子の病室を訪れ、佐田の日記を玲子に渡す。
日記は佐田倫子の独り言である。
この日記が、かなり泣かせてくれた。
長いから引用まではしないけれど。。。


佐田の日記に勇気づけられた玲子は、戦いに挑む、、そして裁判。。
しかし、弁護士は言う。
「必死で抵抗したにしては擦過傷が少ないが、
 実は合意の上での性交渉だったのではないか」
「つまりあなたは、被告人にレイプされたのではなく、
 行為を迫られて、すぐに合意したのだと考えられる」

玲子は弁護士の意外な言葉に怯む。
(私も、こういう類の話を読んだりするたびに、
 弁護士の仕事っていったい何なんだろうと疑問になったりする)
法定内のすべての人が、自分を汚れた女に見ているように思われる。
しかし、心の中で佐田の声が聞こえて、自分を取り戻す。

「擦過傷が少なかったら、どうして受け入れたことになるんですか。
 ナイフで脅されて、口を塞がれて、力で無理矢理押さえつけられて、
 それでどうして合意の上だなんていえるんですか。
 暴れたらまた刺されるんじゃないか、殺されるんじゃないか、
 そう思って抵抗を諦めると、
 どうして行為を受け入れたことになるんですか。
 あなたの理屈でいえば、命を張ってその男を捕まえた佐田さんも、
 殺される覚悟をしていたわけだから、だから殺してもよかったんだと
 合意の上で殺されたんだと、そういうことですか!
 そんなことあるわけないじゃないの!
 あなたには奥さんはいないの? 
 恋人とかお姉さんとか妹とかはいないの?
 その人が私と同じ目に遭っても、あなたは本気で、
 合意の上だったんだろうなんて言えるの?
 あなたは佐田さんに、覚悟があったんだから死んでも文句ないだろう
 なんて、面と向かっていえるの?
 佐田さんの家族に、いえ警察の人全員に、死んでも文句ないだろう
 なんて、本気で言う覚悟があるのかって訊いてるのよ!!」

おー、玲子、よく言った、、とまた泣けてしまったのだが、
作家は、その場をさらに盛り上げた。
傍聴席にいる何十という警察官が、みな起立して玲子に敬礼している。。

玲子はその結束した敬礼の重みに圧倒され、
その「温かい波動」に打たれ、心の中の佐田の存在を支えに、
警察に入り、警部補を目標に生き始めるという回想の物語。。

殺伐とした物語の、オアシスのような2場面だった。



2008年12月05日(金) 雪への備え

なかなか冬用のタイヤに交換することができなかった。
手首を骨折した妻を送り迎えしながら通勤しているので、
別行動していた時のように、その日の仕事次第で早退して、、、
というわけには行かず、きょうは6時、きょうは6時半、、と、
帰る時間が縛られて、自由がきかない。

しかし、明日と明後日、特別に冷え込むという予報なので、
雪が降るという予報はないし、降りそうな雰囲気は微塵もないけれど、
明日も仕事に出なきゃいけないし、明後日も車で出なきゃいけない、、
万一、、、本当に万分の一くらいの危惧に保険をかけるつもりで、
きょう、タイヤ換えを決行した。
きょうあたりに交換に行けば、まだ混んでないだろうし。。

1時間休暇をとって4時に職場を出て、
自宅の近所にある貸し倉庫からタイヤを出して積んで、
車屋まで行こうと思ってたけれど、近所のGSで脱着してもらって、
タイヤを貸倉庫に戻して、妻の職場にまた迎えに行った。
6時半に迎えに行く予定だったが、その10分前に着けた。
車屋に行った方が脱着の費用は安かったのだけれど、
そうしたら6時半に着けたかわからないし、
外したノーマルタイヤを数日積みっぱなしで移動するはめになった。


ここ2年ほどはそうでもないし、今年もたぶんそうでもないだろうが、
この10年くらいの間に、周囲からまだタイヤ替えるのは早いと
言われながら、気紛れにタイヤを交換して、
数日以内に積雪にあったことが4〜5回ある。
もっとも衝撃的な思い出は、7、8年前に、
タイヤを替えて2日目に、母の合唱団のコンサートに行ってる間に降雪、
コンサートが終わって会場を出たら一面銀世界、ということもあった。
その時は、予報でも、積雪なんてまったく言われてなかった。

ま、そんな快挙などなくても、ぜんぜんかまわない。
冬用タイヤに交換しておくってのは、万一に備えての保険なんだから。



2008年12月04日(木) ラッド首相の支持率

オーストラリアのラッド首相政権が1年目を迎えたが、
支持率は6割前後を維持したまま、11月末は6割を超えているという。
オーストラリアでもこれは異例のことだという。
(麻生首相支持率はこの2カ月ちょっとの間に着実に低下し、
 盛り返そうという野心にもかかわらず、2割台に落ちこんだ)

ラッド首相といえば、核廃絶へ向けて新しい国際組織を作ると表明し、
そこに日本が参加してくれるよう、6月に来日して福田翁に要請した人で、
それに対し福田翁がどう答えたのか、よくわからないのだが、
「もちろんですとも! 喜んで」などと答えなかったのは確からしい。
その来日のとき、真っ先に訪れたのが広島だったという。
日本の歴代首相より、うんと平和への思いが強いと思われた。

1年前就任してすぐに行ったのが、前の保守政権が拒み続けていた
京都議定書の批准
イラクからの軍の撤退
先住民族への公式謝罪
約20カ国を訪れての外交(就任1年目としては最多)、、など。

彼も、今回の金融危機で、すでに「バラマキ」を発表したそうだ。
1人あたり、6〜8万円の「支援金」をクリスマス前に支給するそうだ。
4人家族だったら24〜32万円、、??
来年3月以降になりそうな麻生政権の「給付金(還付金)」は、
4人家族だったら4万8千円〜6万4千円?

また今後5年間に、教育や医療分野の公共事業に一兆円近い拠出を決めた。
経済対策に教育・医療が来るわけ? 道路や議員宿舎じゃなくて?

・・・・こんな政権だったら、
今まで反政府的立場しか取れなかった私でも、支持します。

・・もっとも、今後は財政難も予想され、苦労しそうな気配だという。
国家の借金は、日本に比べどうなんだろう?

ちなみに、ラッド首相は、良家の坊ちゃんでも世襲でもなく、
貧しい家庭に育って苦学した人だそうである。



2008年12月03日(水) 「クラシック」の意味

クラシック音楽って、何でそう言うのか疑問に思うたびに、
一応、古典的伝統に沿った音楽、くらいの意味ですませていた。

今道友信氏の「ダンテの神曲」についての講演を見られるサイトがあって
その講演を見始めてみたら、その「序」で、
「クラシック」という語のそもそもの意味を説明していて、
これがとてもおもしろかったので、ちょっとメモしておく。

もともとの語は「クラシス=艦隊」なのだと言う。
で、「ローマの危機に際して軍艦を寄付できる人」を
「クラシックス」と呼んだそうである。
ちなみに、ローマの危機に際して子ども(プロレー)しか出せない人を
「プロレタリウス」と呼んだ。
「クラシックス」は「ローマの危機に際して軍艦を寄付できる人」、
それが「人生の危機に際して精神に力を与えるような書物や芸術」を
さして使われるようになった。

そういう書物なり芸術なりは、後世になると、
古くから大事にされてきたものになるので「古典的」と呼ばれる。
ちなみに、私の名前にも使われている「典」の字は、
文机の上に巻物が2本載っている図である。
文机の上に置かれて大事に読まれる書物の意味なんだそうである。

「古典から、我々ひとりひとりの人生にとって意味あるものを
 つかみとっていく」ことが大切、というまとめであった。


続いて「ヒューマニズム」という語の解説があった。
もともとの「フマニスムス」とは「フマーヌス」であることを、
他の動物と区別して強調することなのだと言う。
例えばそれは「言語を使う」ということである。
だから「ヒューマニズム」で大切なのは「言語的」であること。
「フマニスムス」は「古典研究を通じて言語を学ぶこと」。。。

「humanism」を辞書で引いてみたら、確かに、
「(古代)ギリシア・ラテン語(文学・思想)研究」
という意味が書いてあるなぁ。。
でも、こちらの話は、ほとんど全面的に忘れていたけれど、
学生時代にちょっと聞いたような気がしないでもない。



2008年12月02日(火) 緑を破壊して参議院宿舎

あの懐かしい母校付近の紀尾井町の緑地(清水谷)を半分ほど潰して、
議員宿舎を移転しようとしている暴挙の報道は前にも接していたけれど、
都知事が断固突っぱねてくれてる間は大丈夫だろうと思ってたら、
きょう、ちょっと軟化傾向だそうで、不安が広がっているそうだ。

どう考えても、そもそもがとんでもない話だ。
なぜ、その場に建て替えではいけないのか?
庶民は、建て替えの時は窮屈なアパートで我慢するのだよ。
なぜ、都会の緑地を潰すことに無頓着なのか?
緑を大切に、が長年叫ばれ続けているこのご時世に。
そもそも、なぜ、議員用の住まいを税金で用意しなきゃいけないのか?
そんな国は、日本と韓国だけだと、以前読んだことがあるけれど。。

ニュースの映像で見たら、確かにベランダの鉄柵は、
ペンキが剥がれてサビが見えていて、老朽化はわかる。
けれども、こういうところに住んでいる国民はいくらでもいる。
国会議員の住むところじゃない、と彼らは思うかもしれないが、
それは根拠のない驕りでしかない。
安く住まわせてもらってるんだから、文句言うな、と言いたい。

建設費47億とか言ってたかなぁ。。
この不況対策にいろいろ税金の使い道が難しいときに、
こんなことを推進しようとする参院議員の神経がわからない。
弱小政党はとっくに反対を唱えていても、無視されているのだろう。
大きな政党の議員のあちこちから反対の声が出ないのが不思議だ。
ほんとに、その神経がわからない、っていうところだ。

いずれにしても、最悪、今あるところに立て直しにしてほしい。
それだけでも、充分すぎるほどの譲歩だ。
わざわざ清水谷を潰すなんて、もってのほか、無神経すぎる!
そんなことを待ち望んでいる議員なんて、国会議員の資格なし。



2008年12月01日(月) ガソリン代が元に戻った

180円台にまで上がったガソリン代が、
160円台になったのを見たときは円高のせいかと思ったのだけれど、
先々々週の土曜に120円台になっていて驚き(円高のせいじゃない)、
先々週にはさらに3円ほど安くなって、着実な低下に驚き、
先週の土曜には117円になっていて驚いた。
きょう、空っぽ寸前で飛び込んだところは116円だった。

かつて更に10円ほど安かった時期もあったけれど、
ほぼ、この高騰騒ぎ前の水準に戻ってきたようだ。
しかし何でこんな急速に、、、???

新聞記事によれば、
7月に1バレル=147ドルの最高値をつけた原油の先物価格は
その後急落し、9月には100ドルを割り込み、
10月には70ドルを割り、 11月からは50ドル台なのだそうだ。
OPECは大慌てしてきたらしい。

(あれ?
 原油が3分の1近くに安くなっても、
 ガソリンは3分の2にしかならないの? と、庶民の問い。。)

「OPECの減産にもかかわらず下落が続くのは、
 金融市場の混乱で投機的な資金が細っていることに加え、
 世界同時不況の様相が強まる中で原油の需要減が予測されているため」

投機家たち、株価急落で大損して、
もうこんなマネーゲームやってられなくなったってことでしょうか?
この辺のしくみがよくわからんのですが。。

ほんとに、一体誰がこの半年あまりの高騰に関与してたか知らないけど、
その間に、漁業、農業、運送業、、、、、、、、、等々、
汗水流して労働している人をさんざん苦しめ、廃業にまで追い込み、
自分たちに不利と思うとさーーーっと引き揚げて、そ知らぬ顔、
だったら許せん!! という気がする。

あ、そういえば、穀物の方はどうなってるんだろう?


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