西日が差したら枇杷の実を食べよう
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2002年10月14日(月) 青春っていうか、青い夏。『渚のシンドバット』

『ハッシュ!』をみて、この監督、好きだなぁと感じたので、ビデオを借りてみた。
で、やっぱり、好きだった。
表現の仕方が、一人よがりでなく、わかりやすく、でもキラリと個性的でカッコよく、こういう言い方は、全然、お洒落じゃないんだけど、いわゆる「お洒落」で洒脱。

『渚のシンドバット』はデビュー2作目なのかな。メインの3人以外の人物の描き方も繊細。観客側にすると、逆にその分、登場人物への感情移入が散漫になってしまうところがあるけれど、ものすごくていねいに、言葉にこだわって、脚本を書いていることが伝わってくる。

たとえば、「人をちゃんと好きになる」とか。こういう、簡単でシンプルな、でもとても大切な言葉の処理の仕方がきめ細かい。わたしが、すごく好きだったセリフは、岡田義徳(いい!)演じる主人公の男子高校生の
「吉田(主人公の片想いの相手)が、
  どういう風に人を好きになるか見てみたかったんだ」
という、さり気ない一言。

岡田クンの演技がいい、ということが大きく影響しているのだろうけれど、主人公のひたむきな想いと、でもそれが報われないことを知っている、ある種のあきらめと、でも、それでも「好きだ」というたくましいエネルギーが、なにかこう、プラスとマイナスの感情が一緒になって、わけのわからないパワーを出している感じでとてもよかった。

『ハッシュ!』同様、とにかく、この橋口監督、役者選びのセンスがすごくいいですね。浜崎あゆみも、魅力的だった。彼女は、歌手時代(現在)より、女優時代(過去)のキャリアの方が、わたしは、ずっと好きだなぁ。
彼女が今、その歌の詩で伝えようとしている、いわゆる「青春の影」的な「孤独感」を、
女優時代にすでに、歌よりももっと、透明感あふれるピュアな(すいません、ボキャブラリイ貧困)カタチで、演技で表現できているような気がするから。


2002年10月02日(水) カツラとメイクと愛と勇気と。『Hedwig and the angry Inch』

台風の中、クルマを走らせ、買ってきました。
『ヘドウィグアンドアングリーインチ』のDVD&サントラ。
これからビデオをみる人も、まだ大勢いるだろうから、
内容については書かないけれど、とにかく素敵です。この映画。

旧東ベルリン生まれで、女装のゲイで、ロックスタアで、
おまけに性転換手術の失敗で1インチだけ股間に残っちゃっているヒロインなんていう、
とんでもない設定の「ヘドウィグ」というキャラクター、
自分とはなんの接点もないはずなのに、
なぜか、ものすごく共鳴できる部分があるんですよ。
多分、それは、わたしだけでなく、
この映画を素敵だと思う、ほとんど全て人がそう感じるはず。

それはきっと、ヘドウィグの行動の一つ一つが、
性も、国籍も、職業も、年齢も関係なく、
人間なら誰もがもってる「魂」みたいなものに、揺さぶりをかけてくるからだと思う。

たとえば、そう。
誰かを愛したいとか、愛されたいという欲求や、孤独や、虚しさ、焦り、怒り。
わたしたちが、生きていく上で、毎日つきあっていかなくちゃならない、そんな風な幾つもの、シンプルな気持ちを素手でぎゅうっと撫で上げてくれるのだ。

世の中って、なんて汚いの。バカバカしいの。でも、なんて愛しいの。
カツラや、ドレスや、派手なメイクの向こう側に、
見落としちゃいけない、もっと「きれいなもの」が隠れている、そんな映画。

※DVDについているドキュメンタリーも見応えあり。
 音楽を担当したスティーヴン・トラスク(映画にも出ている)と、
 主演、脚本、監督のジョン・キャメロン・ミッチェルが、一時期、恋人関係にあった、
 なんていうエピソードにも「なるほどなぁ」と即、納得。
 わたしなんて、
 何度きいても、ラストの『Wicked Little Town』のトミーヴァージョンで
 不覚にも、涙ぐんでしまうもの。


otozie |MAIL