西日が差したら枇杷の実を食べよう
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2002年04月29日(月) 毒と砂糖菓子とせつなさと。『キャメロットガーデンの少女』

先日、
『ゴーストワールド』と『フェリスはある朝突然に』が双子だと、
書いてあった記事について、ふれたけれど、
わたし自身は、
『キャメロットガーデンの少女』に共通点を感じた。
ふくれっつらのヒロイン(キャメロットの方が過激だけど)が、
町で浮いている男の子に異常なくらい、
シンパシーを抱いてしまうところ等が。

『キャメロットガーデンの少女』。
これはもう、かなり、すきな映画だ。
サム・ロックウェルの繊細な演技がすばらしいし、
ラストの「ファンタジー」も、
なぜか、ポロポロと涙がでるほど、リアルだった。
あの、毒と砂糖菓子とせつなさが、まじりあった不思議なテイストは、
ちょっと、他の映画じゃ味わえない、と思う。


2002年04月26日(金) 『ゴーストワールド』の双子

映画雑誌は、ほとんど買わないが、
『この映画がすごい』だけは、バカバカしいところと、
スノッブじゃないところが好きで、年に数回程度買う。
んで、先日は、「2002年版 ワイドショー総決算」という
下世話なスキャンダル特集にひかれ、買ったものの、
読まずほおっておいたままの、同誌4月号を、
暇にまかせて、ペラペラと手にとってみた。

そこで、以前、わたしもこのサイトで触れた
ジョン・ヒューズ監督についての記事をみつけ、
「うん。そうだよなぁ」と共感したので、失礼を承知で、引用させていただく。
すいません。ライターの久保田明さん。※「」内引用

それは、
「ポップで明るいけれど、主人公たちがひとりぼっちで、
 案外背筋を伸ばしているのがヒューズ映画の魅力」
って部分。
このライター氏は、ソーラ・バーチの『ゴーストワールド』をみたときに、
「画面の隅っこのほうで、ジョン・ヒューズ映画が鳴っている気がした」そうだ。

うん。なんだか、すごくよくわかる。
さらにこの記事の締めとして、
「見かけは似てないけれど、『フェリスはある朝突然に』と、
 『ゴーストワールド』なんて双子だよね。じつは」

とまで、書いてあった。
ははは。
そうかなぁ?と思いつつ、そうかもなぁ、と妙に納得させられるわたし。
ジョン・ヒューズのDVDボックスでないかな。
出たら欲しいな。


2002年04月19日(金) うーん。濃密だ。『シャンドライの恋』。

録画してあった『シャンドライの恋』をみる。
同じイタリア人監督というだけで、先日みたばかりの
『ニューシネマパラダイス』と比較するのも乱暴だけれど、
いたれりつくせりのサービス精神が、
ちょっと重すぎるわたしには、こっちの方が断然、好みだ。

なんたって、映画の中に流れている「時間」の「濃密」なことったら。
思い出してもためいきが出てしまうほど。
はぁ。
キスシーン一つないのに、これがまた、えらく官能的なんだな。
かといって、不潔さは、一切なし。凛としたエロさ。
純粋な、不純。なんじゃ、それ。でも、わかってください。そんなニュアンス。

この作品を、これからみてみようかと思っている人へ。
テレビドラマみたいな、説明過剰なセリフは一切なく、
映像+音で物語のほとんどすべてを語っているので、
ちょっと「かったるいな」と思う箇所もあっても、
じーっと画面に目と耳を傾けていてください。
もしかして、そのシーンが、あとあと、心にずーっと残る場面かもしれないから。

ピアノ曲も、アフリカ音楽も、イタリア語も、イタリア訛りの英語も、
ヒロインの褐色の肌色も、ローマの古びた屋敷のインテリアも。
そのすべてがカオスのように一体となって、
自然の樹木の匂いような、あるいは上等な香水のような、
ひそやかで、しめやかな濃密な空気を育んでいる、
そんな映画でした。 
 
あ、でも、きちんとそれなりの恋をして、
心が大人になっていないと、そんな「時間」もただ「退屈なだけ」かもしれないけどね。


2002年04月14日(日) 女子映画の王道としての、ビリー・ワイルダーとジョン・ヒューズ

ビリー・ワイルダーが亡くなりましたね。
ビリー・ワイルダーといえば、ロマンティック・コメディー。
不倫やら、浮気やら、片想いやら、
日本のテレビドラマにだって転がっていそうな、
ごくごく日常的なアイテムを詰め込みながら、
日本のドラマとは全然、違う世界をつくりあげてしまう、
ビリー・ワイルダーマジック。
何年たっても色あせない、胸の奥をキュンとくすぐるような、
それでいてちょっとシニカルな世界をつくりあげてくれる手腕は、
さすがの職人技。

別な場所にも書いたけれど、
女優を「女の子」として、最高に可愛く演出してくれるし。
やっぱり、女の子映画のキングスロードをつくってくれた一人だと思う。

で、これはもう、わたしの勝手な見解だけれど、
そんなビリー・ワイルダー的女子映画の世界を、
ある意味、引き継いでいると感じるのが、
80年代の、一連のジョン・ヒューズ監督作品だ。
『すてきな片想い』、
『プリティインピンク』、
『恋しくて』
以上、三本は、わたしにとって女子映画の必修・基礎課程。
かわいい。せつない。でも甘すぎない。
この三拍子がバランスよく揃っていて、しかも、
よくできた映画って、ありそうで、
実はあまり多くないんじゃないだろうか。

その昔、自由になる時間がたっぷりあった頃、
80年代の青春映画に凝っていて、
メジャー系から、インディーズっぽいものまで、
ありとあらゆる十代の女子・男子が主人公の作品を
手あたり次第、みまくっていた時期があったけれど、
やっぱり「王道」という意味で記憶に残っているのは、
一連のジョン・ヒューズもの。
女子がメインという意味では、上記三本が代表作ではあるけれど、
『ブレックファストクラブ』、『フェリスはある朝突然に』も好きな作品だ。

ジョン・ヒューズ監督は、
アメリカ映画でありながら、サントラではUKミュージックを数多くセレクト。
そのあたりも、バブリーでラヴリーでどこか虚無的なあの80年代を、
100%アメリカン!な明るさとは違う切り口で、
スクリーンの中に閉じこめることができた、一つの理由かもしれない。

ああ、こんなコト、書いていたら、
『恋しくて』のサントラ、聴きたくなっちゃったよ。


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