詩のような 世界

目次


2007年12月29日(土) 消える旋律



透明な小さい男の子は

諦めを含んだ無邪気な笑顔を残して

赤く燃える火柱に入っていった


誰かを疑うことが嫌いだったから

愛したことなんてなかった

徐々に色を失ってから気づいた

その過ちに


街中を見渡すと

透明人間はあちこちにいた

まだ遅くはないよ

渦巻く炎に身を焼かれながら

少年は叫ぶ

こんなに熱く裂かれそうな痛みだなんて

かすれていく声は飛び交う雑音に消された


すべてが崩れ落ちた瞬間

小走りのOLが降り積もった灰の辺りを振り返った

立ち止まり

自分の透けた手のひらを

色の抜けた瞳で見つめた

ふいに身震いしたのは

本当に12月の風が通ったからだろうか

彼女は数分間、まったく動かなかった


2007年12月21日(金) 夢想



三日月に揺られながら

足元に散らばる輝きに目を奪われていたよ

無数の星を数えた

多すぎて数え切れないとわかっていても

楽しかった

キャッキャ手を伸ばした

夢だったけれど

近いところにあった


今では

失ったものを冷たいフローリングに並べて数えている

いち、に、さん……

声に出すのが面倒なので脳内で唱える呪文

指先の震えは止まらない

胸はまったく震えない

カーテンを開ければ

三日月がまた僕を照らすのに

床に伏しているから気づかない


整列した破片は光を求めて泣いている

いつかのキラキラした場所に行きたくて

あの場所を想った

涙は流れ続け

頬をつけた床は天の川になり

星の間を白く染めながら

僕はまたあそこへ導かれた

夢を見た


その世界だけは優しい輝きで満ちていた


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