詩のような 世界

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2005年03月23日(水) 青の住人


そこは、ほの暗い

青く
海を思わせようとして失敗し
安っぽさと生々しさで満たされた
世界みたいなありふれた部屋 だ

壁にターコイズブルーで
穏やかな波の絵が描かれている

溺れたい
と願うためにはやや効果が薄い
僕の溜息は誰にも拾われない
それでこその 世界だ

君の髪は
人魚のように長く艶々している
実はこの海の主なのだろうか
人魚は 水浴びをしたいらしい

肌と肌が
足りないものを求めて
あるいは
埋め合わせようとするかのように
吸い付いては離れ吸い付いては

目の前には巨大な赤い唇
小刻みに震えている
ときどき 分厚い舌が僕の身体を舐め上げる
べろり じゅるるり

ああ
僕は主に食われるのだろう
爪の先まで彼女のものになり
永遠にこの海から出られなくなるのだ

そう悟ったら
恐ろしいほどの快感が襲ってきた

海の波の

空の
鳥の
白の
羽の
水の
音の
糸の
人の
指の
感の

道道道

彼女の髪の薄い色が透けて
1本の太い線が見えた

あの先へ
きっと僕はゆくのだ


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