詩のような 世界

目次


2003年11月28日(金) flavorful 

愛の味は何味ですかぁ


あたしを
君の洋服と胸の間に
飼ってくれませんか


愛の色はピンクだなんて言うんじゃないでしょうね


交差点の真ん中で
車に轢かれるのを待っている
コネコじゃあるまいし


あたしはいつだって刺激に飢えて泣く
寂しくて死んだりする動物でもないから
愛を探すことをやめたりしない



愛を許される理由にするなんて
甘っちょろいわよね
愛は権利ではないの


そこらに転がっている愛はどれも不完全
だからこそ魅力的
君はアホヤローであたしは考えなし


だけど愛の味は少しだけ知っている



2003年11月24日(月) 箱庭


きれいな色の箱を
決して開けないで
ただずっと眺めている?

美化するということは
とても恐ろしい幻想
だけど取りつかれてしまう

最低な行動
汚い言動
嫌悪すべき数々の出来事
あれほどくっきりと色づいていたのに

自殺行為かもしれないが
ふたを開けずにいられない
醜いものから目をそらす
ことができないんだ僕は

それで口が利けなくなっても
耳が聞こえなくなっても
触れずに受け流すくらいなら
僕は

感じたことを一つ一つ
花や木や土にしてみる
中では僕だけの息遣いが生まれた
嗚咽する声が内側から壁を叩く




2003年11月15日(土) 空洞


僕の周りから音が消えると
必死に耳を澄ますのだけど


君の近くにいた頃
空間
振動
感覚
すべてがいとおしかった

甘いざわめき

くすぶる心は邪魔なだけでただ
走ることで温度を確かめられた


今は
散歩をしていても
本を読んでいても
君の面影に俯くこともなくなり
静けさのみが残されたようだ

僕の前後左右に在り続けた空洞は
さすがにもう消えた(見えなくなった)
目を凝らすことはせず
時間が経つ様を僕はぼんやり眺めている



2003年11月11日(火) アデナ

真っ赤なミサイル飛んできた
僕は間一髪でよけた
左足をちょっと上げただけさ

爆風の熱気でドロドロに溶けた生じゃない生クリーム
なぜ緑を帯びているのだろう
まぁどっちにしても甘いのだから問題ない

崩壊した街を捨てなかったのは
独りぼっちになった女の子を探すためだ

でも無駄だった
あるのは垂れ流された血と
喜劇を思わせるころころした肉だけだった

僕は絶望しかけたが
細い声が確かに聞こえてきたので
立ち止まることなどできず

アデナ
アデナ
アデナ

そう
彼女はアデナという名らしい
アデナアデナアデナアデナ

君は悲しんでいるのかい
世界の終わりに呆然としているかい
自分だけが残されて不幸だと嘆いているかい

錆びた土管に
アデナの破れたスカートが
ふぁさりと掛けられていた

その数メートル先にはアデナの小指が
その数メートル先にはアデナの耳朶が
その数メートル先にはアデナの太股が
まるで分離したのが当然であるかのように落ちていた

僕は気にせず彼女を求めて歩いた
きっと「ほんものの」彼女がどこかで縮こまっている

か細い声はまだまだ止まない
それが僕の口から聞こえてくるのは
アデナと僕が一心同体だからに違いない


2003年11月07日(金) 手紙


夜になる直前

人を寄せ付けない一本道

枯草は香ばしく揺らめく

細かな光が空気から欠け落ち

それが再び舞い上がる


冷え切った喉

手紙を読みたいのに

言葉が思い浮かばない

脹ら脛にぽつぽつと鳥肌

ひゅるる、と流動物を吸い込む



幼い匂いのする歌が

ごみ捨て場の赤い自転車から

風のない住宅街へ飛んだ

ふんわりした笑みを誘い

闇さえも油断してしまったほどだ


冴え渡る月の色

雪の便りが届くまで後わずか

あなた、あ、

声が漏れた

元気でいますか、



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