詩のような 世界

目次


2003年09月30日(火) ごめんなさい


ごめんなさい

あなたは子犬じゃない

ごめんなさい

あなたは道具じゃない

ごめんなさい


好意しか愛せなくて

ごめんなさい

ゲームしか愛せなくて

ごめんなさい

形だけしか愛せなくて

ごめんなさい


大切にできなくて

ごめんなさい

大切にされたくて

ごめんなさい



2003年09月26日(金) 泥人形の眼差し

近所の公園にあるブランコ(右から3番目)
は人を引き寄せる

噂は事実だったから僕は呼ばれた

艶やかなブランコはピンク紫の甘い匂いを放っており
僕はぼうっとしながらそれに座った

ブランコは女のようになった

教会に響いてもおかしくない声で
僕をクラクラさせた


「おいで
 だいすきよ
 おいで
 だいすきよ   」


僕は彼女にしがみついた
昨日の雨のせいで土はドロドロで
僕らのからだは泥まみれになったがかまわない
僕にはきみしかいないんだ
僕を慰めておくれ
僕の過ちを許しておくれ
僕の居場所になっておくれ


「  


          」



彼女の名前はブランコなんかじゃない
泥人形と化した僕には勿体無いほどの存在だ

「僕はきみさえ居れば僕なんか要らない」


腐敗臭に気づき振り向くと
僕に似た無数の人形たちがカピカピに乾いて倒れていた

黒目をぐるりと動かして僕は自分の行く末を理解した

それでも僕はこの瞬間
間違いなく幸せなのだ




2003年09月23日(火) UTA1


あなたがどこで何をしようとも
あたしには関係ない
そばにいてもいなくても
あなたのことばかり考えてるわけじゃない
それくらいわかってるでしょ
ねぇうぬぼれないで

あなたはかわいいのね
まるで猫のように
あたしの腕に頭を擦りつける
ふわふわで薄い色の髪の毛
あなたは甘えたいのね
意地悪に拒否なんかしないけど
あたしはあなたのママとは違う

いつも話を聞いてくれてありがとう
お礼を言われてもあたしは複雑
なぜあなたはあたしの話を聞いてはくれないの?
聞いて頷いて慰めて微笑んで
あなたは満足だろうけどあたしはどうだと思う?
あたしはあなたのママとは違う
あなたはあたしの坊やじゃない

ときどきすごく寂しくなるの
あなたといても心の穴は満たされない
あたしはあなたに聞いてほしいだけ
ほんのささいな話も小さな悩みも
でもあなたにとってはどうでもいいことなのね

あなたは何もわかってない
わかってないならうぬぼれないで



2003年09月12日(金) ゴールドマニキュア


難しいことを悶々と悩むゴールドマニキュアは道の真ん中を闊歩する

太陽がカラカラと音を立てて回っていることにも気がついていない



その髪の毛にこびりついた大量の埃を振り落とせ

綺麗なオレンジ頭が台無しだから

泣いても怒っても笑ってもかまわないから

僕とキスでもしてみよう

ぐちゃぐちゃの考え事を僕が吸い出してあげる



答えなんてない問題にお手上げ状態のゴールドマニキュア

お気に入りのカフェが見えてきたのに顔すら上げようとしない


長い睫毛を伏せることはやめて

涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔のままこっちにおいで

キスした後で解決すればいいさ

僕はゴールドマニキュアを愛していて

それがすべてだと思ってくれたら素敵




2003年09月09日(火) 侵食


今にも吐きそうで仕方がないのです

とにかくもう

赤や黒や白の顔たちが胃を満たし

さらに悪いことに

それらは皆わたしを眼中に入れているのですから


わたしは視線から逃げようともがく

じたばたすればするほど締めつけてくる

それらの臭い欲や企みが

わたしの腸へどくどくと流れ落ちる


気がつけばわたしは謝っていました

口に出すことはありませんが

どうかその手を離してくださいな

何も求めないでくださいな

おなかがいたいおなかがいたいおなかが


それでもわたしは微笑み続けるのです

どこも痛くない振りなど簡単ですから

内部に侵入する者たちは

確実にわたしの一部となりつつあります


がぶりがぶりと内膜に食らいつく

わたしはそれらの重みに身震いする

抉られて抉られて抉られて抉られて

居なくなるのはわたしの方なのだろう?



2003年09月08日(月) I am left behind.


砂浜を軽く蹴ったら

世界が180度回転した

散歩中の白い犬は黒猫になり

飼い主の女の子は海に帰っていった


僕は首から下げていたカメラをなくしてしまった

遠くへ飛ばされたか

彼女がさらったのか

どっちにしても僕にはもう関係ない


何が消えようと

何が現れようと

僕にはどうでもいいことなのだ

大切な宝物など僕は持っていないのだから



知らないと言い捨ててしまえばいい

ここに在ったものなど知らなかった

大切さの価値なんて知らなかった

そしてまた僕は残されることを選ぶ



再び砂浜を蹴った

今度は思いっきり


世界は元に戻った

僕だけが何ひとつ変わらなかった



2003年09月02日(火) 感受性


温い雨に打たれて、少年は心で泣くのだった。

彼は馬鹿な子だと笑われているが、
何も考えていないから、始終ぼうっとしているわけではない。
彼にとって全ての事象は複雑すぎて、
あらゆる人間は生々しすぎて、
処理しきれず口が利けなくなるだけなのだ。

彼は胸のズキズキを、左の拳でとんとんと叩いて抑えようとする。
皆が楽しそうに騒ぐ中、瞼の痙攣を止める方法を必死で探す。
ボーダーライン上で呼吸をし、彼は空より地を見て歩く。

雨の匂いを感じる時のみ景色が優しく変わるのだった。

濡れながら彼が目にしたものは、
外れた天気予報に文句を言う口、口、口。

今日1日、雨はきっと止まないだろう。
彼は嬉しくなって唇を少し歪めた。

傘なんて差すものか。
傘なんて差すものか。


2003年09月01日(月) OVERFLOW


頭の中

ぐうわあん ぐうわああん

うねっていて

許容量を越えていますガーピガーピー

警告音を軽く無視する感じで


とりあえず画面を真っ白にリセットしようと試みるも

あっけなく失敗

苦悩 葛藤 好意 愛情 嫌悪 矛盾

色となり気配となり声となり

驚異的なブラックホールをつくった



片足を突っ込んでしまった

もう落ちる寸前だ

僕はいずれバラバラになるだろう

2度と元には戻れない

見るも無惨な感情の焼け焦げと化すのだ



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