詩のような 世界

目次


2003年02月11日(火) 紅に染まれ



深紅の城は
ある少年の住処で
この縮れた世界を統治するのは
ちっぽけな彼なのだった


地下室に閉じ込められた野獣の唸り声に合わせて
彼は詩を吐く


言葉というより
悲鳴
彼は
彼自身が悲鳴


緑色の星 鈍い光
見るからに意地の悪そうな魔女が空を旋回する
かつて彼の母だった女
毎晩、城を警戒している


彼は犬笛を手放せない
吹いても飛んでくる犬などいない
だけど望みは捨てられない
という


紅の詩で街を満たしたい
などとは企んでいない
自分が歌っていることすら
彼は信じられないくらいなのだから


そう
ぎりぎり
彼は
彼という名の宇宙を統治していた


そう
ぎりぎりの詩で


2003年02月10日(月) The cat knows

色のないフェンスが

無機的に視界を遮っている


僕はただ笑う

笑っていれば攻撃されることもなく

笑っていれば受け流されることを

いつからか知っていた


誰もいない空間で

見えないフェンスを両手で掴み

涙を流しながら笑いつづける僕


薄い唇が乾いていくのを

フェンスの上を歩く猫が見ている

にゃっは、と鳴いた

馬鹿にしているともとれるその様は

僕を苛立たせた


猫は手を叩いて僕をからかう

僕も真似して手を叩いてやった

猫の目の前でぱあん、と思い切り叩いた

案の定猫は驚いてフェンスから落ちた


気がつくと僕の手の中に猫がいた

柔らかな白い毛が震えている

ごめんね

ごめんね


僕はこれからおまえと一緒にいるよ

唯一僕を知ってくれた

かけがえのない友だち


2003年02月05日(水) CHILDISH


あはは

あははは

どうせなら

あなたに殺してほしかった

つくられた「格好いいあたし」を


クールって言われ続けて

あたしはそれが自分のラベルなんだと思って

信じて突っ走ってきたのよ

あはは

あははは

あなたは心の中で嘲笑っていたの?

それともこいつは子供なんだと自分に言い聞かせた?

どっちにしてもいいことじゃない

考えるだけで恥ずかしくて叫び出したくなる


でもあなただってとてもオトナとは言えなかった

そうでしょ?

あたしよりは、少し余裕があっただけで


学ランがサングラスなんかかけちゃって

あたしはいつも「外して」と頼んだのに

あなたは笑ってはぐらかすばかりだった

どこ見てるかわからなくて不安だったこと

伝えられなかったあたしが悪いの?


あたしはもっとあなたに「子供」になってほしいと

唇の端で表したかったのだけど


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