つぶやきDiary
何気ない日常のつぶやき
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2009年09月30日(水) 弁慶草




夏が終わり、ずっとほったらかしになっていた夏の花の鉢植えを、先日ようやく秋の花に植え替えました。
と言っても、春から夏は花の種類も多く、選ぶのに迷うくらいなのですが、秋から冬に向かう時期に咲く花と言ったら、かなり心細い(^^;
何がいいだろうと店先を見ていて、目にとまったのが弁慶草と名前のついた鉢植えでした。

弁慶と言ったら、あの弁慶ですよね(笑)
その名前がついた花、見たところ、葉はわりと厚め、小さなつぶつぶしたつぼみが集まっていて、かすかに色づいている。
どうやらもうすぐ咲きそうでした。
初めての花なので、うまく育つか自信はなかったものの、名前に似合わず(すみません)、かわいい花が咲いてくれそうなので、買ってみました。

大き目の鉢に移し植えて数日、花が咲いてきました。
強そう、と言うよりは、やはりかわいい感じの花です。
名前の由来は、切り取って数日おいても枯れないほど強いところから、だそうですが。
それって、弁慶の立ち往生にちなんで?(^^;
まあ、とりあえず切り取ることはないと思うので(笑)
頑張って咲いてほしいものです。



2009年09月08日(火) 伊坂幸太郎 「終末のフール」

久々に、私には珍しく早いペースで読み終えた本でした。
この「終末」は、まさに終末、世界の終わりを意味しているわけで・・・
お話は「8年後に小惑星が衝突し、地球が消滅すると予告されてから、5年経った頃」と言う設定なのです。

文庫本の帯に書かれた言葉も「世界が終る その前に今日あなたは 何をしますか?」
うっわぁ〜〜、何をしますかって言われても、だめだわ(^^;
こういうテーマ、臆病な私はとっても怖いんです。
フィクションと思っていても、想像しただけで怖くなってしまう。
何やら異常気象などと言われる昨今、起こりえなくもないような・・・
などと思いながら、怖いものみたさで読んでしまった(笑)

8編の短編から成っています。
「終末のフール」「太陽のシール」「籠城のビール」等々、すべて「○ール」と言うタイトルになっているところがまた、伊坂さんのこだわりと言うか、遊び心と言うか。
短編なのだけど、どこか繋がっている。ひとつの話の中でメインだった人物が、他の話に脇役でちらっと出たり、とか。
こういう伊坂さんの群像もの、けっこう好きです。

数年後に世界が滅亡すると知り、大パニックが起こり、とんでもない世の中となり、それが少しずつ落ち着いてきた頃。
社会の機能も、細々とではあっても継続し、人々はそんな中でも生活している。
あと3年、限られた時間の中で、何をすべきか考える人たち。
決別していた娘と何年かぶりで再会することになった父親。
新しい命が授かり、生むかどうか迷う夫婦。
過去の恨みから復讐に乗り込む兄弟。
一人取り残され、生きる目標を決め、実行しようとする少女、などなど・・・

私が一番好きだったのは「籠城のビール」と言うタイトルの一編。
これは、兄弟の復讐のお話です。
過去の恨みを晴らすべく、兄弟が押し入ったのは、今まさに家族水入らずの晩餐が始まろうとしていた、マンションの一室。
元アナウンサーの夫とその妻、若い娘の3人家族の前には、美味しそうなステーキとグラスに注がれたビール。
拳銃を突きつけ、地球が滅ぶ前に殺しにきたのだと、元アナウンサーに迫る兄弟。
なんて殺伐とした、と最初思っていたこのお話は、やりきれなさを感じさせつつ進み、やがて思いもかけない結末に・・・

どのお話も、絶望とかすかな希望の合間で、たよりなく揺れる人間を描きながら、どこかでほっと心が温まるのです。
なぜ8年後?と言う疑問はあるのですが(笑)
8年のうちの5年が経過した時、残り3年と言うのは、なんとも中途半端な時間です。
もっと前なら、人は荒れまくっていたのだろうし、もっと後になったら、絶望しか見えなくなってしまうかもしれない。
不思議にあいまいな頃合いのお話、とも言えるでしょう。
この後のお話は、伊坂さんは書くつもりはないのかな。
いや、ないのだろうな。

巻末の解説に、伊坂さんは「どんな悲惨な状況であっても人はそれでも生きていく」と言うことを書きたかったと語った、とありました。
そうですね、何があっても、今日と言う日がめぐる限り、人は今日の生活をする。
そんな中でのささやかな一喜一憂が、時に鮮やかな色彩として残ることもあるのでしょう。
どんな暗闇の中にも、救いはあるのかもしれません。

時折、ふと自分の行く末を考えると、かなり暗〜い気分になってしまう私なのですが、この本を読んで、ほんの少しだけ勇気をもらえたような気がしました。
ほんの少し、なのですけどね(笑)


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